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MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯1528 なぜ日本は韓国人旅行者に人気があったのか

2020年01月13日 | 国際・政治


 昨年12月18日のNHKのWeb newsによると、11月に日本を訪れた韓国人旅行者は約20万5000人で、前年同月と比べ65.1%減少したということです。

 日本を訪れる韓国人旅行者は年々増加し、2018年の1年間はおよそ753万人と、10年前の3倍までに増えていました(政府観光局調べ)。実際、韓国人訪日客は日本を訪れる外国人旅行者のおよそ4分の1を占め、昨年は中国人に次いで2番目に多かったということです。

 しかし、昨年の夏以降、大阪北部地震や西日本豪雨などの災害の影響などにより韓国からの旅行者は前年を下回る傾向を見せはじめ、さらに日本政府が韓国向けの輸出管理を厳しくしたことで8月以降はほぼ半減しています。

 距離が近くフェリーで1日、飛行機であれば2時間足らずで行ける手軽な旅行先として韓国人旅行者の人気を博していた日本ですが、日本製品の不買運動の激化などとも相まって、韓国国内では「日本への観光旅行」などとはなかなか言い出せない状況なのでしょう。

 日本政府は2020年に外国人旅行者の数を4000万人に増やす目標を掲げていますが、一時は国と地域別で2番目に多かった韓国からの旅行者の大幅な減少が続いていることで、今後の影響が懸念されているところです。

 韓国人の旅行先として日本が名指しで避けられているこうした状況に関し、12月20日のNewsweek日本版に、韓国人ライターの崔碩栄氏が「日本不買運動で韓国人が改めて思い知らされること」と題する興味深い論考を掲載しています。

 崔氏はこの論考において、韓国人は不買運動で日本にダメージを与えることばかりに気を向けているが、輸出規制による日韓衝突の前にはなぜ日本を訪れる韓国人が多かったかについては忘れていると指摘しています。

 なぜ韓国人は、年間700万人も日本に殺到していたのか?その答えは韓国語で「カソンビ(価性比)」の良さにあるというのが崔氏の見解です。

 価性比とは「価格対比性能」の意味で、つまり日本語でいうなら「コスパ」のこと。同じ金額を支払った場合、日本への旅行には他国では得られない満足度があったということです。

 片道2時間ほどの短い距離、LCC路線の増加で割安な航空券、そして韓国内の物価上昇で、近年は日本に来ても「思ったより安い」と感じる韓国人が多かった。加えて、韓国では楽しめない「味」「見物」「サービス」に韓国人は魅了され、他国に比べ日本を訪れる「リピーター」が多かったことからもそれはわかると氏は説明しています。

 そんな中、日本製品の不買運動が盛り上がりを見せると、日本を訪問する人たちは社会的なバッシングを受け「親日派」だと批判されるようになった。そこで、彼らが代替品として選んだのはアジアや韓国内の観光地だったということです。

 しかし、少なくとも韓国内の観光は完全な代替品になれなかった。それは、日本旅行に比べて満足度が低かったからだと氏は説明しています。

 今は反日感情という「アンリーズナブル」な理由で、日本という選択肢が自己規制されている。しかし、自分たちが日本を選択していたのは単なる日本マニアだからではなく、「価性比」という冷静でリーズナブルな判断だったことを韓国内の旅行を通して気付かされたに違いないと氏は言います。

 そして、いずれ自分たちの合理的な判断による選択が、社会的な雰囲気によって封印されているという理不尽さに気付くだろうというのが、現在の韓国人の置かれた状況に対する崔氏の認識です。

 日本製品の不買運動が続いている現在の韓国ですが、同様に「日本製」だからといって拒むことにどういう意味があるのか。日本のビールや日本車、日本旅行の代わりに今韓国人が選択しているのは、(旅行先と同じように)満足度や価性比が低いものだと氏は言います。

 今は「愛国心」という名分で不便を甘んじて受け入れているが、韓国の消費者が最終的に感じるのは愛国心とか反日感情ではなく、リーズナブルな選択肢を自ら選べないという不自由さではないか。

 確かに、狭い国土に気性の激しい人々がひしめく韓国における人間関係は、(崔氏も指摘するように)人の考え方や行動を決して放っておいてはくれません。

 そして、政治的志向の強い人々の声が大きな韓国社会は、(実のところ)高い同調圧力で人々をがんじがらめにする、極めて不自由で窮屈な存在と言うこともできるでしょう。

 そんな韓国の人々は、たった2時間のフライトを終えて日本に降り立った時、(少しだけ成熟が早かった)日本の(比較的差異に寛容な)社会や穏やかな人間関係、そしてのんびりした空気に一体何を感じたのか。

 韓国の多くの旅行者がその訪問先に日本を選んできた理由は、もしかしたらそういう日本の「ホッとする感」にあったのではないかと、私も改めて考えたところです。



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