MEMORANDUM 今日の視点(伊皿子坂社会経済研究所)

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♯1251 消費税増税対策への評価

2018年12月21日 | 社会・経済


 12月20日の開催された経済財政諮問会議で、政府は来年10月に予定されている消費増税による実質的な負担増が2兆円程度となるとの試算を公表しています。

 試算では、消費税率を一律に10%に引き上げた場合税負担は5.7兆円増え、同時に行われるたばこ税や所得税の増税の影響を加えると、6.3兆円の負担増となるということです。

 しかし、消費増税に当たっては食料品などの税率を8%に据え置く軽減税率の導入が予定されているため、実際には1.1兆円分の負担が軽くなる。さらに、消費税収を使った教育無償化などの施策で3.2兆円分が国民に還元されるため、実質的な負担増は約2兆円になると政府は説明しています。

 そしてこの2兆円が、消費税増税の目的であった財政赤字の補てんに向かうはずですが、ここで驚かされるのは、12月21日に閣議決定された31年度の政府当初予算案において消費税増税による消費への影響を避けるため、(ここに加えて)2兆円規模の経済対策を打つとされたことでしょう。

 中小小売店で現金を使わずにクレジットカードなどで決済した買い物客に(消費税率の引き上げ幅を超える)5%のポイントを還元しその費用を計上したり、公明党の要望に基づき(住民税の非課税世帯と0~2歳児のいる世帯に)プレミアム商品券を発行すると政府はしています。

 さらに、マイナンバーカードにためられる「自治体ポイント」の加算や公共事業の拡充、高額消費となる住宅や自動車の購入を後押しする減税や補助金の増額も進めるということです。

 一方、政府が示したこうした(ある意味「何でもあり」といった感じの)消費税増税対策に対しては、メディアをはじめ各方面から疑問も呈されています。確かに、需要先食い策は反動減の発生を単に先送りするに過ぎないわけで、基本的に新しい需要を喚起したり、需要の底上げをもたらしたりするものではありません。

 日本経済新聞が行った国内主要企業が対象の「社長100人アンケート」でも、こうした政府の対策を「評価しない」「どちらかといえば評価しない」という回答の合計(25.5%)が、「評価する」「どちらかといえば評価する」の合計(24.8%)をわずかに上回ったとされています。

 中でもキャッシュレス決済のポイント還元に関しては業界の評判が芳しくなく、日本スーパーマーケット協会などの小売業界団体は「消費者の利便性や公正競争の面から強い懸念がある」との意見を表明し、政府に再検討を求める要望書を提出しています。

 政府は、「資本金5000万円以下または従業員50人以下の中小小売店でクレジットカード等により買い物をした場合に5%分のポイントを還元する」と説明していますが、中小企業とみなされない大半のスーパーは対象となりません。

 要望書は、こうした対応では同じ地域にポイント還元を実施する店舗としない店舗が混在し、消費者が混乱するとしています。また、還元対象とならない店舗が還元店舗に対抗するため値引き策を余儀なくされ、公正で自由な競争環境をゆがめるばかりでなくデフレにつながる可能性があるという指摘もなされています。

 一方、5%のポイント還元の対象となるとされる中小小売店にも、中小なりの問題があるようです。店側が負担しなければならないクレジットカードの手数料の負担が新たに発生し経営を圧迫するという指摘があるほか、軽減税率導入に向けたレジ整備などの費用も必要となることから、業界団体なども困惑を隠しきれない様子です。

 そうした中、12月17日の日本経済新聞は、今回の政府の消費税増税対策に関して同紙が行った(一般国民への)世論調査の結果を公表しています。

 記事によれば、こうした政府の経済対策への評価は、「やり過ぎだ」が31%、「適当だ」が31%、「不十分だ」が27%と、(現状では)大きく割れているということです。

 興味深いのは世代別の評価の違いで、政府の対策を「やり過ぎだ」と回答した人の割合は18~39歳で17%、40~59歳は33%、60歳以上は37%と年齢が上がるほど多かったということです。

 一方、「適当だ」と回答した割合は18~39歳で46%、40~59歳は33%、60歳以上では23%と年齢が上がるほど明確に少なくなっており、対策が過大であることを懸念する声は高齢者ほど大きいことが判ります。

 そもそも今回の消費税の増税は、財政赤字という「負担の将来への先送り」を少しでも是正していくために行われるものです。

 しかし、積みあがった「赤字」を背負い、この先返済していかなければならないはずの若い世代の方が総じて「現在の負担の軽減」に重きを置いているのは、不思議と言えば不思議な光景です。

 それだけこうした世代が日々の生活に厳しさを感じ、まずは現在の生活への影響を少なくしたいと考えているということでしょうか。

 因みに、キャッシュレス決済での5%分のポイント還元に対しては、18~29歳の55%、30歳代の52%が「賛成」と答えているのに対し、60歳代の73%、70歳代では71%が「反対」しており、全体では「賛成」の29%を「反対」の60%が倍以上上回っている状況です。

 若い世代ほど「ポイント還元」になじみが深いのはわかりますが、(それにしても)喜ぶ人の少ないこうした政策が一体(官邸の)どこから出てきたものなのか、ぜひ聞いてみたい気がします。



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