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「雲を紡ぐ」、心は盛岡へ

2020-05-26 | 2022夏まで ~本~
伊吹有喜『雲を紡ぐ』(文藝春秋)を読み終わりました。

集中して読みつづけるので、心配した夫に声をかけられ
「私(の心)は、今、盛岡にいるから・・・」と答えたほどに
没頭w



(盛岡、岩手銀行赤レンガ館)


まずは、ざっくりと、あらすじを。

友人関係から、不登校になった高校生の美緒。
両親にもうまく説明できず、逃げるようにして、美緒は岩手へ向かう。
父方の祖父が開くホームスパンの工房に強く惹かれていたからだ。

といっても、それまで、美緒と祖父との交流はなく、
HPに掲載された写真に惹かれたにすぎない。
ようやくたどりついた、工房では・・・というお話。


(クライマックスは、盛岡、開運橋でむかえます)


ホームスパンとは、「家庭で紡ぐ」から転じて、毛織物のこと。

美緒の祖父は、原毛から染め、紡ぎ、織りまでを手がける工房の職人でした。
手のかかる、この職人仕事に、美緒はのめりこんでいき・・・
同時に、自分自身とも向き合う、その日々が描かれます・・・

美緒の想いだけでなく、父と母、祖父母、それぞれの抱えているものも
次第に、明らかになっていくのも、魅力です。
私は、年齢のせいか、美緒の両親や祖父母に強く惹かれました。

ネタバレになるので、詳しくは省きますが・・・


(美緒と祖父が訪ねた不来方<コズカタ>城。啄木の「不来方のお城の草に寝転びて空に吸はれし十五の心」で知られます)


さて、後半、不登校になり、盛岡でホームスパンに熱中する美緒を
責めず、諭さず、「好きなことをするために留学したようなもの」と
言ってくれる、意外な人物がいるのですが・・・

こんな風に、周りの大人が考えてくれたら、
美緒のように遠くへ行かなくとも、
子どもは楽になるのではないかしら・・・

・・・緊急事態宣言が解除され、こちらでも、2ヶ月ぶりに学校が始まります。
おとなだって、久しぶりに出勤するのは辛いのに、
学校のことで悩んでいる子ども達は、今、どんな想いでいることか・・・

アタクシ、アラカンおばちゃんになっても、気遣いしすぎて、疲れちゃって・・・
ましてや多感な頃はね・・・

(書影は版元ドットコムよりお借りしました)

私の大好きな街の一つ、盛岡。
その盛岡を舞台にした、厳しさと優しさをあわせもつ物語です。

世代を問わず、そっと寄り添ってくれる一冊の気がします。


◆本日の画像は、2017年夏の盛岡、台風が近づいていて、
どんよりした写真ですが、街歩きは楽しかった~~~~!

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お付き合いいただき、どうもありがとうございました。
勝手ながら、ただいま、コメントをご遠慮しております。

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