エンターテイメント、誰でも一度は憧れる。

PCグラフィック、写真合成、小説の下書き。

刻塚-(NO-21)

2009-10-23 17:26:36 | 小説・一刻塚
刻塚-(NO-21)

「それでさ、急いで谷に下りたんだが、既に亡くなっておりました。すぐに警察に届けようとしました。でも事故が起こったのは山の中、見ている者は私等だけでした。そのころ、村お越しで赤田村にもようやく他所の町や都会から観光で客も来る様になってた頃でしてね。
そこで、遊歩道から谷に転落事故と言うのはイメージダウンだと言う事になって。貞男の母親の遺体は人知れず埋葬してしまったんです。
それから半年です、貞男があんなになってしまったのは。話しても聞こえているのかさえ分からなかった。
森谷先生にも診て貰いました。歩くのに両手を着いて犬の様に歩くんです、ご飯は茶碗や皿に口を突っ込んで食べるんです。
汚い話しですが、オシッコや糞は所構わずする始末でしてね、しまいには下着を着せる事すら出来なくなりました。
これはきっと祟りだ、私達は後悔してもしきれないほど悔やみました。それで、人目に着かない山奥の炭焼き小屋に隔離したんです」。
すると、目を真っ赤にさせた主が顔を上げた。

「あんな事をしなればよかった。ちゃんと病院に入れてさえいれば貞男は逃げ出す事もなかったんです。村の衆に頼んで一週間も十日も山を探し歩きました 。
しかし幾ら探しても見付かりませんでした。貞男は他の子供より小柄でしたからね、倒れて枯れ葉なんかの下になっていれは見えません。谷も川も、狸や狐の穴なんかも探しましたが駄目でした。
それでも時間を見付けては山に入って探しました。半年が過ぎ一年と経って諦めました。もう死んで土に返っていると」。
麻代は泣いていた、その啜り泣く声だけが座敷に流れていた。そして、時折溜め息を着く声が交じった。

「山田さん、とんでもない事を言います。あの一時塚を発掘させて下さい」
エッ!・・・それは声を合わせた様に一斉に叫びにも似た驚きの声に変わった。
「自分の考えを言います、今回の殺人事件は祟りなんかじゃありません。麻代、デシカメとパソコンを持って来てくれないか」。
「うん、いま持って来ます」と、涙を拭くと出て行った。
そして、間もなく戻って来た。そして、テーブルの上にセットすると親戚一同は猿渡と麻代の後ろに集まった。画像を見せた。

「これは昨日、麻代が蝉や小鳥の鳴き声が無い事に不思議に思って自分に話してくれて気が着いて取った写真です。
一時塚に通じる雑木林の中で見付けて撮影した物です。間違いなく人間の足跡です。どう言う事かと言うと、大谷刑事を殺した犯人が警察や自分達の動向を探る為に潜んでいた物だと思われます。
あの社には午後六時以降は入ってはならないと言う言い伝えなのに、電線が引かれているのは何故なんです。四方の扉は明けられる様になって開ければ明かりは要りません。それなのに電線とは不思議ですね」。
すると、親戚一同は驚いた様に互いの顔を見合わせるのだった。

「猿渡さん、私達は電線なんか引いた覚えはありませんよ。皆はどうだ」主は一人一人の顔を見ると、様子を伺っていた。
「わし等は知らんぞ、第一わし等があの社へ行くのは年にそう何回もない。そうだろ本家よ」。と誰も驚いていた。猿渡は全員の顔を見て確信した。
この人たちに嘘はないと。分かりました、その電線をお見せますから」猿渡は社の階段の下、床下から土台を這う様に地面の中へ入る電線を画面に出した。それは麻代も知らない映像だった。

「こんなのいつ撮ったの?・・・麻代知らなかった」。
「うん、麻代がお手洗いに行った時に床下に入ったら見付けて撮ったんだ。どうです皆さん、これであの塚の下には何かある事を分かって頂けましたか。
もっときつい事を言います、あの下は墓ではなく、部屋があると思われます。隠れ家になっている可能性があります。いそうでなければ電気は要りませんからね」。

「分かりました、猿渡さんに何も可もお任せします。好きな様に調べて下さい」
「本家よ、そんな事して祟られたらわしは知らんぞ」と、立腹した様に声を荒げた「私が山田家の家長だ、私が責任を取る。みんなは発掘する時は来なくていい。
お爺さんそれでいいね」。
NO-21-39


最新の画像もっと見る

コメントを投稿