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一刻塚-(NO-15)

2009-09-05 21:57:18 | 小説・一刻塚
一刻塚-(NO-15)

ラウンジの客は驚いた様に一斉に視線を向けた。麻代は赤面すると周りに頭を下げていた。「本当に驚いたんだから。本当に亡くなったんですか?・・・」
「うん、放っておけなくて私も行って来た。確かに死亡していたよ、何か余程怖い目に遭ったのか、まあ、その先は聞かない方がいい」。麻代は不服相に口を尖らせ、ほっぺたを膨らませた。

「麻代、あんな顔は見ない方がいいし聞かない方がいい。夢に出るぞ」。
「いや~もうっ、それより今日はどうするの?・・・」
「うん、一応社へ行くよ。白骨は誰か知りたいし、鑑識さんが何を見付けるか見たいしね。いいですよね先輩」。
「うん、その為に来た様なもんだからな。しかし霊の聖域と言うものはおっかないもんだな。ここへ来るまでは幽霊だとか祟りなんて私も信じていなかった」
「それは自分も同じですよ、でもこの村の人達は永遠何百年もそれを受け入れて来たんですからね。外部に漏れなかったのは恥じと言うか何て言うか、頑なに口を封印して来たからでしょう」。
そして朝食はラウンジに運ばれて来た。トーストにサラダ、スクランブルエッグに紅茶と軽く取った。すると、南田刑事の車が庭先に入って来た。
車を降りると小走りにラウンジに来た。「警部補、五分程で来るそうです」

「分かった。猿渡元警視正殿、行くぞ、麻代さんも行くかね」。

「ちょっと待っていてね」と、麻代は頷くと二階へ駆け上がった。そしてミニスカートからジーンズに着替え、プラダのリュックを肩にピンクのチューリップハットを被って降りて来た。猿渡は思わず笑っていた。
「なんで笑うのよ、変?・・・」と、窓ガラスに写る自分を見る麻代だった。

「そんな帽子まで持って来たのかと思ってさ、よく似合うよ」。
そして南田の運転で駐車場まで下った。間もなくサイレンの音が上がって来た。
現場の駐車場には派出所の巡査が来て、遺体には青いビニールシートがかぶせられていた。麻代は恐る恐る車を降りると猿渡の後ろにいた。

「ここにいろ」と、猿渡と筒井と南田の三人は改めて遺体の確認に行った。シートの前で両手を合わせ、黙祷するとシートを上げた。

「これはひどいな、どうして目ぐらい閉じてやらないんです」。
「何度もやったけどすぐに目を明けてしまうんだ、こんな死体の顔は初めて見るよ。麻代さんには見せなくてよかったろ」。
大谷刑事の死体の頭髪は逆立ち、何かを叫ぶ様に大きく口を開いていた。目は恐ろしい物でも見た様に爛々と見開いていたのだった。

「キャッ」その声に振り向くと麻代が震えていた。猿渡はシートをかぶせると麻代をそっと抱いた。「馬鹿だな、だからあそこに居ろって言ったのに」。

「御免なさい、なんであんな顔してるの?・・・」
「何か死ぬほど怖い目に遭ったんだろうな。だから死んだんだ」。
「もうっ、ふざけてる場合じゃないよ。それじゃ説明になってないじゃん」。
「フフフ・・笑っちゃいかんな。麻代さんも見たろ、あの形相を見たらそう言うしかないんだよ。外に説明は着かない」。
そこへけたたましくサイレンを鳴らして警察車両が到着した。まるで尻切れトンボの様にピタッとサイレンが止まり、慌ただしく刑事だろう、私服の男たちが駆け寄った。
「失礼します、筒井警部補ですか。私は篠ノ井署の増井警部補です」。
「御苦労様です。筒井です、こっちは南田刑事。こちらは警視庁元警視正の猿渡さんご夫婦です。事件の捜査協力で来て頂いてます」。
御苦労様です、自分は。と、言い始めたところで猿渡は止めた。

「自分は今は警察の人間じゃありませんから、どうぞ、捜査の邪魔はしませんので」。猿渡はそう言うと麻代を連れて社へつづく雑木林へ向かった。
すると、間もなく筒井と南田が小走りに追って来た。

「後は増井警部補に任せた。後から山田刑事が鑑識を連れて来る。それから、社に父親とお爺さんと親戚が供養に入ってるとさ。
大勢の警察の人間が社に入るから霊を清めてるんだそうだ。しかし何だな、この事件は何から何まで驚かされ事ばかりだよ」。

「ええ、全くです。まさかこんな事になるとは思いもしませんでしたからね」。
すると、麻代はキョロキョロと辺りを見ていた。雑木林と周りの様子が変だと思いはじめていた。
「ねえ啓太さん変よ。蝉の泣き声がしてないんだけど、鳥の声も」
その言葉に足を止めた、そして周りを伺う様に四方を見渡した。

「うん、俺も妙に静だと思ってた。でも大勢の人間が来てるし社にも居るからじゃないのか」すると、ガサガサッと林の木々が音を立てて揺れた。
麻代は猿渡に抱き着いていた。麻代の大きな乳房が背中に感じた。
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