サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(20)&CG
「しかし、そんな事はでたらめです。そんな事を聞いたような覚えはありますがでたらめに決まっています。
検事、ではどうして影山綾乃はアパートにいたと言い張ったんです。不自然じゃないですか」。
「そんな事はどうでも良い。映画館に居たと言うんだ。調べるのが先です」。
津浪刑事は一語も無く頭を下げた。
そして翌日。綾乃は検察官に呼ばれた。そして検事の前にいた。
「それで、映画館にいたと言うのはどう言う事です。そんな事はここでも話してくれませんでしたね」。
「はい、どうせ話しても刑事さんと一緒ですから。私が犯人だって決めているんですから。だから話しても無駄だと思ったんです」。
後藤検事はムッとした様に顔を顰た。
「では改めてお聞きします。二月二十日の午後八時からの事を話して下さい」。「はい、あの晩、近藤さんから電話があって。相変わらず卑猥な内容の電話でした。頭に来て映画でも観てスッキリさせようと、新宿オリオンに007のワールド、イズ、ノット、イナフって言う映画を観に行ったんです。
家を出たのが九時近かったと思います。歩いて氷川台駅から電車に乗って映画館に着いたのは調度夜の部の二回目の上映が始まる少し前でした。九時三十五分だったと思います」。
綾乃はすらすら話した。検事は、まさか、と言った風な顔をして事務官を見た。「貴方は夜アパートを留守にする時はいつも明かりを点けたまま出るそうですが、それは何故なんです。当日もそうでしたね」。
「はい、女が一人で居ると言う事を知られたくないからです。それはストーカーや痴漢、それに空き巣なんかに狙われない為です。たまにテレビなんかも点けたまま出る事もあります。自衛の為です」。
そう言われて後藤検事は返す言葉がなかった。
「では、逮捕当日はベージュのスーツを着ていましたが、映画館にもあのスーツを着て行ったんですか」。
「いいえ、ベージュのスーツは仕事に行く時だけです。映画にはグリーン系のパンツスーツで行きました。ミニだと変な人達に覗かれますから。
そうだ、私の隣の席に男の子を連れた若い夫婦がいました。確か、シンちゃんって呼ばれていました。私ポップコーンあげました」。
そしてその知らせは事務官の手に因って所轄の刑事に告げられた。そしてその日の取り調べは僅か二時間で終わり、拘置所に帰された。
その知らせを受けた所轄の刑事は映画館を調べ始めていた。
津浪警部は一人一人の従業員に聞いていた。しかし、一月も前の客の事など覚えている者は殆どいなかった。
「二月二十日、当日の九時四十五分ですがね、小さな男の子を連れた若い夫婦が来ていたと言うんです。男の子はシンちゃんとか呼ばれていたそうです」。
「ああ、それだったら向かいの喫茶店のマスターの息子さん夫婦じゃないかな。確かオールナイトを観に来ていた様な気がする。でも、静岡へ帰っちまったよ」
刑事の表情が一転して強張った。
まさか、でたらめじゃなかったのか。それとも偶然なのか、津浪は耳を疑った。
「それで、その夫婦の子供はシンちゃんに間違いないんですか」。
「ええ、信と治めると書いてしんじ、シンちゃん。間違いないですよ」。
「外に何か変わった事がなかったですか、例えば喧嘩とか事故とか」。
津浪は映画の内容や居た人間の事は聞けば分かるだろうと、映画以外の出来事なら、映画館にいなければ分からない事を聞き出そうとしていた。
すると、売店にいた女の子が出て来た。「何か」と津浪警部は聞いた。
「はい、こんな事でいいのなら。二月二十日は私が当番で映写室の助手をしていたんです。そして九時四十五分の放映前に、舞台の垂れ幕が落ちたんです。
それで少し館内がざわめいたんです。それと、映画が終わった十二時頃ですけど。お客さんが出て来た頃に、店の前で女の子同士の喧嘩があって、新宿のお巡りさんが五~六人来て連れて行きました」。
津浪警部は子供の事は電話で確認すれば良いと思い、検事に会いに戻った。
その顔は、確かな証拠を掴んだときの様に勝ち誇った様だった。
そして検事室に行くと、放映前に垂れ幕が落下した事、十二時過ぎの喧嘩の事を検事に告げた。
「それで、肝心な子供の事はどうしたんです。居たんですか居なかったんですか」検事は津浪の顔を見て納得した様に頷いた。
「それで、静岡県警に要請して確認したんですかっ!・・・」
津浪警部は首を振った。検察官の眉が釣り上がり、顔が赤くなった。
「だから今度の様な事になるんです。早く確認して下さい。今後そのような捜査ミスをしたら捜査から外れてもらいますよ、津浪君」。
津浪は黙って頭を下げた。そして自ら静岡へ飛んだ。
その若い親子は静岡市内から南に向かった登呂遺跡で有名な地域に住んでいた。
NO-20-20
「しかし、そんな事はでたらめです。そんな事を聞いたような覚えはありますがでたらめに決まっています。
検事、ではどうして影山綾乃はアパートにいたと言い張ったんです。不自然じゃないですか」。
「そんな事はどうでも良い。映画館に居たと言うんだ。調べるのが先です」。
津浪刑事は一語も無く頭を下げた。
そして翌日。綾乃は検察官に呼ばれた。そして検事の前にいた。
「それで、映画館にいたと言うのはどう言う事です。そんな事はここでも話してくれませんでしたね」。
「はい、どうせ話しても刑事さんと一緒ですから。私が犯人だって決めているんですから。だから話しても無駄だと思ったんです」。
後藤検事はムッとした様に顔を顰た。
「では改めてお聞きします。二月二十日の午後八時からの事を話して下さい」。「はい、あの晩、近藤さんから電話があって。相変わらず卑猥な内容の電話でした。頭に来て映画でも観てスッキリさせようと、新宿オリオンに007のワールド、イズ、ノット、イナフって言う映画を観に行ったんです。
家を出たのが九時近かったと思います。歩いて氷川台駅から電車に乗って映画館に着いたのは調度夜の部の二回目の上映が始まる少し前でした。九時三十五分だったと思います」。
綾乃はすらすら話した。検事は、まさか、と言った風な顔をして事務官を見た。「貴方は夜アパートを留守にする時はいつも明かりを点けたまま出るそうですが、それは何故なんです。当日もそうでしたね」。
「はい、女が一人で居ると言う事を知られたくないからです。それはストーカーや痴漢、それに空き巣なんかに狙われない為です。たまにテレビなんかも点けたまま出る事もあります。自衛の為です」。
そう言われて後藤検事は返す言葉がなかった。
「では、逮捕当日はベージュのスーツを着ていましたが、映画館にもあのスーツを着て行ったんですか」。
「いいえ、ベージュのスーツは仕事に行く時だけです。映画にはグリーン系のパンツスーツで行きました。ミニだと変な人達に覗かれますから。
そうだ、私の隣の席に男の子を連れた若い夫婦がいました。確か、シンちゃんって呼ばれていました。私ポップコーンあげました」。
そしてその知らせは事務官の手に因って所轄の刑事に告げられた。そしてその日の取り調べは僅か二時間で終わり、拘置所に帰された。
その知らせを受けた所轄の刑事は映画館を調べ始めていた。
津浪警部は一人一人の従業員に聞いていた。しかし、一月も前の客の事など覚えている者は殆どいなかった。
「二月二十日、当日の九時四十五分ですがね、小さな男の子を連れた若い夫婦が来ていたと言うんです。男の子はシンちゃんとか呼ばれていたそうです」。
「ああ、それだったら向かいの喫茶店のマスターの息子さん夫婦じゃないかな。確かオールナイトを観に来ていた様な気がする。でも、静岡へ帰っちまったよ」
刑事の表情が一転して強張った。
まさか、でたらめじゃなかったのか。それとも偶然なのか、津浪は耳を疑った。
「それで、その夫婦の子供はシンちゃんに間違いないんですか」。
「ええ、信と治めると書いてしんじ、シンちゃん。間違いないですよ」。
「外に何か変わった事がなかったですか、例えば喧嘩とか事故とか」。
津浪は映画の内容や居た人間の事は聞けば分かるだろうと、映画以外の出来事なら、映画館にいなければ分からない事を聞き出そうとしていた。
すると、売店にいた女の子が出て来た。「何か」と津浪警部は聞いた。
「はい、こんな事でいいのなら。二月二十日は私が当番で映写室の助手をしていたんです。そして九時四十五分の放映前に、舞台の垂れ幕が落ちたんです。
それで少し館内がざわめいたんです。それと、映画が終わった十二時頃ですけど。お客さんが出て来た頃に、店の前で女の子同士の喧嘩があって、新宿のお巡りさんが五~六人来て連れて行きました」。
津浪警部は子供の事は電話で確認すれば良いと思い、検事に会いに戻った。
その顔は、確かな証拠を掴んだときの様に勝ち誇った様だった。
そして検事室に行くと、放映前に垂れ幕が落下した事、十二時過ぎの喧嘩の事を検事に告げた。
「それで、肝心な子供の事はどうしたんです。居たんですか居なかったんですか」検事は津浪の顔を見て納得した様に頷いた。
「それで、静岡県警に要請して確認したんですかっ!・・・」
津浪警部は首を振った。検察官の眉が釣り上がり、顔が赤くなった。
「だから今度の様な事になるんです。早く確認して下さい。今後そのような捜査ミスをしたら捜査から外れてもらいますよ、津浪君」。
津浪は黙って頭を下げた。そして自ら静岡へ飛んだ。
その若い親子は静岡市内から南に向かった登呂遺跡で有名な地域に住んでいた。
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