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小説・サブリミナル第一章(美しい子悪魔)NO-(3)&CG

2008-06-01 03:41:21 | 小説・サブリミナル・美しい子悪魔
小説・サブリミナル第一章(美しい子悪魔)NO-(3)&CG


私は無意識のまま避けていました。気が付くと、荷造りに使う紐を切る裁縫用のラシャ鋏で木村の胸を刺して居ました」。
「それからどうしたの?・・・」。
「気が付くと木村は倒れていました。急に怖くなって、そしたら娘の顔が頭に浮か んだんです。それからどうしたのか、自分でも良く分かりません。
気が付いたら、白山にあるお店の前にいました。時計を見ると九時三十分でした」。そう話すと綾子は、事の重大さに只々泣くばかりだった。       
早乙女はそんな綾子を見つめ、心ならずも苦笑いを浮かべていた。
犯行が行われたその時間、偶然にも私は母と東京ドームで巨人阪神戦の野球観戦をしていた。5対2で巨人が勝利した。                   
早乙女は、ゲーム開始時間から終了した九時までの事を思い返している。
ドームから春日町の駅まで歩き、九時半には自宅に戻った。
そこを、春日町駅から白山駅に向かったと訂正し、九時半には綾子の勤め先である、スナック桃子に着いた。早乙女は綾子の目をじいっと見つめた。
綾子は止めど無く流れる涙を拭い、キョトンと見つめたままだった。 
「藤井さん、もう一度訊くわよ。六日の午後六時から何をしていたの」。
「エッ・・今も話した様に午後六時から東京ドームで巨人阪神戦を観ていました。木村が殺されたのは午後六時半から七時だって言うじゃないですか。なのにどう して私が木村を殺せるんです。
でも、もし木村が来て口論になったら、私が殺していたかも知れません」。

完璧、これで良し。早乙女はにんまり頷く。
「藤井さん、今まで黙っていたのは何故なの?・・・」。
「あの佐藤とか言う刑事が、最初から私が木村を殺したんだろって言うから。野球を観ていたって言っても、どうせ信じてくれないと思って」。
「私は信じるわよ。いい事、いま私に話した事は私が良いと言うまで誰にも話しては駄目よ。話したら貴方を救えないかもしれないから」。
「・・・はい、分かりました」。小首を左に倒して不満げに頷く藤井だった。
「それから藤井さんの写真が欲しんですけど。それと着替えを持って来て上げます。 住所を教えて」。早乙女は手帳とペンを差し出した。
綾子は不思議そうにペンを取り、書出した。
「私の家からそう遠くないわね、後で着替えを届けますから。藤井さん、くどい様 だけど喋っては駄目よ。一日か一日半で出してあげますからね」。
早乙女は藤井綾子の手を握り、頷くと取り調べ室を出た。廊下の長椅子に若い刑事が座っていた。早乙女が出ると同時に腰を上げる。
「終わりましたか・・・それで、犯行を自供しまたか」村井刑事は自身ありげに含み笑いを浮かべていた。
「刑事さん、私は藤井さんの弁護士ですよ。依頼人に不利益になる様な事は話せま せん。守秘義務がありますからね。では失礼します」。
村井は悔しそうに見つめるが。早乙女は軽く頭を下げて見送った。
南は警察を後にした。

春日町、藤井綾子のアパート。
あう阿古から聞いたアパートは昔ながらの木造の二階屋のアパート。それが三棟並んだ真ん中の二階の角部屋である。
アパートの前には警察車両が一台、早乙女が近付くとドアが開き、若い巡査が降りて来た。二階へ上がる階段には黄色いテープが張られている。
「失礼ですがアパートは立ち入り禁止です」。
「分かっています、私は藤井綾子さんの弁護士の早乙女といいます。刑事課長の許可は貰って来ています」。早乙女は身分証を提示した。
巡査は驚いた様に敬礼し、無線を持つと確認の連絡を取った。
「失礼しました、どうぞ。ただ血だらけですから気を着けてどうぞ」。巡査は張ってあるテープを上に上げた。
「どうも」と礼をいいながらくぐる。
確かに巡査のいう通り、階段の下には夥しい血痕がドス黒く異臭を放っていた。
被害者、木村宏は室内で殺害された訳では無く、刺された後、意識が戻り、部屋から這って階段を降り、階下で息絶えたのである。
NO-3
藤井綾子の部屋。201号室。
室内には数々の段ボール箱が置かれていた。衣類と掛かれた箱を見つけ、荷を解いた。
下着の上下を二対、ブラウスとスカート、目に着いたトレーナーを袋に入れ、隣の部屋を覗いた。人型にロープが形作られていた。

NO-3


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