任侠町

人形町から発信

壺中天

2007-10-08 | 雑記
壺中天。
一壺天。

いま「壺中天」という言葉は、別世界とか、酒を飲んで俗世間を忘れる楽しみという意味ですが、元はお話なんだそうです。

費長房は、汝南(いまの河南省汝南県地方)の人である。かつて市場の役人になったことがある。市場のなかに薬売りの老人がいたが、壺をひとつ店頭に懸けていて、市が終わると、いつも壺のなかに跳んで入った。市場の人には見えなかったが、長房だけが楼の上からそれを見ては、不思議に思っていた。そこで出かけて行って再拝し、酒と乾し肉をすすめた。老人は、長房が自分を人間業を超えているとみているのを知ると言う、「そなたは、明日あらためて来るがよい」と。
 長房が明朝また老人のところに行くと、老人はかくて一緒に壺のなかに入る。そこは荘厳で美しい宮殿で、なかにはうまい酒と肴がたくさんあり、二人は一緒に飲み終えると出てくる。老人は、人にはこのことを言わないように約束させる。
 のちに老人は楼の上にやって来て長房をたずねると、「わしは神仙の者で、過ちがあってとがめを受けたが、いまやことが終わって去らねばならぬ。そなたは、わしについてくることもできまい。楼の下には少しばかり酒があるから、そなたと別れの宴をしよう」と。長房が人を取りに行かせたが、持ち上げることができない。また十人に担ぎ上げさせようとしたが、それでも持ち上がらない。老人はそれを聞くと、笑って楼を下り、指一本で持ち上げて取ってくる。その器を見ると一升(いまの一合ほど)ばかりの大きさだったが、二人が一日中飲んでも尽きることはなかった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする