走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

法の狭間で

2014年10月26日 | 仕事
プランaはジェシカが口約束どうり薬物依存と妊娠のクリニックに通ってくれる。私は彼女のケアを手渡すことに成功してご苦労さんコース。

プランbは上記のクリニックに行くことを拒否するが、私のところで定期検診に来るコース。

プランcはaもbもダメになったケース。警察を呼び彼女に意思決定能力がないと判断し、その検査目的で精神科医の診察のために病院へ連れて行くコース。

ジェシカの意思決定能力はいつも話題に上がる。妊娠が判明する以前にもこのケースはあった。しかしいつも退院となる。

私も他のプロフェッショナルたちも同じ意見で非常に厳しい状況。しかし身籠っている、そのケアをないがしろにしていると言う点で、プッシュ出来るかもとと薄い可能性に賭けると言うなんともあやふやな計画。
無理矢理連れて行き強制入院出来ない状態だと、ますます彼女の信用を失う。ようやく繋がった細い糸をこんなことで失えば元も子もない。

前にも述べたが精神疾患患者であっても意思決定権があれば自分か他を害する可能性がない限り、だれも拘束をする権限はない。


ジェシカは診察に現れず、プランaは失敗。
翌週何時もの教会の朝食に現れない。しかし街中でびしょ濡れになっている彼女を見つけた。土砂降りの中、道路脇に座っているジェシカ。パジャマに素足ハイヒールサンダルを履いている。

診療車の中で診察をした。下着までビショビショの彼女。32週になる。胎児の心拍数も子宮の大きさ、血圧も良好。寒さをしのぐためにヘロインを注射したと言う。先週話したシェルターに行かないかと話すと機嫌が悪くなる。わけのわからないことを言い出し診療車から飛び出て行った。

プランcに移ることに決めた。オンコールの精神科医も合意した。警察を呼ぶ。きっぱり協力要請を断られた。精神状態で他か自を障害する恐れがある場合セクション28と言う警察力を使って拘束することが出来る。しかし、それに当てはまらないからと。もっともだ。法によるとそうなのだ。ジェシカは殺すぞと脅しをかけるが誰を殺すのかはっきり言わない。妄想と言うより強がりで発している可能性の方がずっと高い。私はそれをねじ曲げようとしているのだ。断られて当然だ。しかし連絡する全ての専門職が彼女は専門医の診察を受けるべきだと言う。法の間にある落とし穴、、、、。冷たい雨の中自分を守ろうとすることもしない彼女を非積極的に自を害そうとしているとは言えないのか、、、、

警察の中にもメンタルヘルスのリエーゾンと言う架け橋になってくれる警察官がいる。経験慣れしていて判断も優れている。不幸にも二人とも今日は非番。
大きな街になるとCar67と言うシステムがある。セクション28に当てはまらない時に専門の警察官がアセスメントをして必要があれば病院で専門家の診察を受けるために連行することが出来るサービスだ。
私の街にはそのサービスはないのだ。隣街にはあるのに、、、、

ジェシカを納得させ自主的に病院に行くように勧める他ない。プランdは成功するのか?



土砂降りの雨

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