毎月あるNP会議。今月は症例振返りがありました。うまく行かなかったケースをシェアする機会です。なかなか勇気のいることですが、プラクティス(練習)と呼ばれる私たちの仕事では重要なことです。失敗から学ぶ、と言うことです。
で、今回のケースでは「診断の遅れ」が中心でした。
しかし私は、この症例は「遅れ」とは言い難い、と感想を述べました。Illness script というものがあります。典型的な症状、進行具合、背景もマッチする、とまるで台本通りのケースのことです。
これに1発目で正しい診断をつけるのは難しいことではありません。しかしそうではないケースがほとんどです。その場合の推論の立て方、どれを優先させるかなどが腕の見せ所となります。「診断が外れた」「誤診」と言うような言葉は診断へ
のアートを知らない人が使う言葉です。回復が見られない場合は推論の見直し、計画の立て直し、これの繰り返しになります。患者の再診のタイミング、計画を遂行したかどうかでも変わってきます。IllnessScriptに当てはまらない難しいケースでは診断まで辿り着くまでに時間がかかります。そう言うものです。
プレゼンを聞いていて、推論の立て方、計画には非がないと私は思いました。よって例え4ヶ月かかったとしてもそれを遅れと結論づけることはできませんでした。
しかし同時にこの仕事をしていて、自分を責めたくなる心情はよくわかります。正しい診断と治療、そして回復は常に私たちの当たり前の目標であるから、それができなかった、患者が苦しんでいる時間が長いことに対して自分の不甲斐なさに喝を入れたくなるものです。それも自然なことです。
難しい症例を話し合うことで皆で学べる。良い環境が整っていると思います。
冒頭写真:雨の中ダウンタウンへ向かっています。