走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

言葉で傷つける

2017年03月05日 | 仕事
そのつもりはなくても人は人を言葉で傷つける事があります。

私は医療者だし、長年天職だと信じてボランティアと看護師としてホスピス緩和ケアをしていたので、この辺りにはかなり敏感です。注意も払います。

しかし私も人間。しまった!と思う時だってあります。私生活では仕事ではないので、何気なく口にした事で人を傷つける事だってあります。もちろん自分自身人を傷つけた事に気付いていない時だってあるでしょう。誰しも完璧ではありません。相手に完璧さを求めることも間違いです。

病気になったから、私の患者になったから、全てを話さなければならないことはないのです。私の場合、その人が私の患者になったのは長い人生の内のほんの一部なんだから、良い問診を取ったとしても、私の知らない部分が多々あるのは当然です。人の人生はそういうものだと思います。医療者で病気を知っているからとか、人生の終幕を沢山看てきたからと、患者より優先位に立つことはできないのです。

今の仕事では患者からトラウマについて聞く事が多々あります。ほとんどが信頼できるはずの家族から受けた暴力です。思い出したくないことを掘り返して答えてくれた時はとてもありがたいと思います。それを生かしてしっかりケアをしていくことを真摯に思います。話す勇気に尊敬の意を讃えたくなります。

辛い過去を話してくれた人がいてもそれが全てだとは限らないのです。本当はもっと辛い過去を引きずって、誰にも言えずに苦しんでいるのかもしれません。病気の辛さはあなたが想像しているより遥かに苦しいものなのかもしれません。人間努力はします。しかし他人を完全に理解することなんて不可能なのです。

だから、その少ししかない情報でその人の人生をわかったような言い方をするのは禁忌です。必ず人を傷つけます。言葉はとても強力です。

慎重になれと言っているのではないのです。ただ相手の反応を良く見ることだけは忘れずに。電話やメールやテキストはそれが見えないので要注意です。

言葉でも態度でも誠意は必ず伝わると思います。逆に言えばどんな話術を持っている人でも、誠意がなければ相手には伝わりません。

誰に対しても謙虚な気持ちを忘れずに。寄り添う、共感というものはそういうことではないでしょうか。




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