走るナースプラクティショナー ~診断も治療もできる資格を持ち診療所の他に診療移動車に乗って街を走り診療しています~

カナダ、BC州でメンタルヘルス、薬物依存、ホームレス、貧困層の方々を診療しています。登場人物は全て仮名です。

訴訟に耐える

2020年09月09日 | 仕事
昨日のブログの終わりに、
「訴訟に備えては常に頭をかすめる。自分の計画は訴訟されても強く弁護できるものかどうか」と書いた。

今の仕事をしていて訴訟と言う意識はいつもある。例えば昨日の彼に対して不安症状の問診をしっかりしているかどうか?これには不安だけではなく他の鑑別診断も含まれているか、が重要になる。特に抗不安剤を増量したがあまり効果がない。こう言う時には鑑別診断の練り直しが必要。必要な追加の問診や身体所見をとったかどうか?

そして彼のような高齢者は尿路感染などが尿路感染症状より不安症状が強く出て誤診してしまう可能性が高くなる。薬剤の変更、腎機能や肝機能の変化などで今まで出なかった副作用が出てきて不安症状があるかもしれない。これも念頭に入れなければならない。

純粋な不安症の悪化として、クライシスラインを含む患者教育も大事。彼の場合24時間看護体制の施設に居住しているので、そこの看護師とのミニカンファレンスをして計画を立てたかどうか?

そして自分が持っているカードを全部出し切っても患者の状態が変わらなければ、専門医へコンサルトをする。

このような治療のプロセスが明確な記録でなければならない。そうでないと訴えられた時に、ガイドラインに沿って行っていない、とか治療結果が良くないのに再度診断名を吟味しなかったなどでは訴訟で負けるのは目に見えている。自分の責任で治療をしている者は訴えられるのも誰でもなく自分。これを忘れてプラクティスはできないのだ。

勉強、自己研鑽をしっかりして患者に安全なケアを提供する。こんな事を言う人は本当の意味の安全なプラクティスがわかっていない人だと私は思います。

完璧な医療システムも医療者も存在しない。それを大前提で診察時に可能な限りの情報と知識で最もベストな計画を立てて対応している事を記録に残しておくのが大事なのだ(記録に残すと言うことは、そう言うプラクティスをしている証拠)。

落とし穴はいつでもどこにでも突然現れる。忙しさに流されてベストなケアが抜ける時だってある。体調が悪くて頭がいつも通りに回転しない時だってある。だから難しいケアをしている時立ち止まって、記録や計画を振り返る。見落としはないか?訴訟に耐えられる内容か?と。

日本の診療看護師のみなさん、訴訟を意識して働いていますか?

冒頭写真:一列に並んだイソギンチャク〜


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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
記録は「事実の影」 (舶匝(@online_checker))
2020-09-09 09:45:37
訴訟追行は、「事実の影」から事実を組み立てる作業。
明瞭な記録は有難いです。
返信する
遅ればせながら (⑦パパ)
2020-09-09 12:42:05
俳句の記事を読んでいて「グッと地球便」を発見
いま見終わり感動しています。女性なのでこの表
現は変なのでしょうが「カナダの赤ひげ」ですね。
尊敬しました。

うちの長男は動機も志も低い医者なので恥ずかしい
限りです。ただ温厚が取り柄のようで「難しい」と
言われてる(ルールが守れないとか、クレーマー)
の患者さんを「お願い」されるようで、少しは役に
たっているのでしょう。
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Unknown (missy0806)
2020-09-10 13:24:47
舶そう さんありがとうございます。
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Unknown (missy0806)
2020-09-10 13:27:36
7パパさん ありがとうございます。カナダの赤ひげですか?!髭はないけれどカナダの国旗は赤が多いしね。変わり者、チャレンジ好きが功して、やっています。大変だからやりがいがある。成功した時の嬉しさは人一倍!ってところです。
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