幼稚園ではお遊戯会があって、みんなどんなお遊戯かどんな配役か そわそわしています。私たちの組は、森の仲間の物語でした。森には、たくさんの動物がいてお祭りを計画するのですが準備がちゃくちゃくと進んでいるとき、仲間のうさぎが、病気になってしまい、熊がお祭りに行かないでうさぎの看病をかってでると次々に友達もうさぎといっしょにいることになり、要するに友達はいいなっていう話でした。
私は、その熊の役に当てられすごくうれしかったのです。子供ながら一番先にこんないい思いつきができる熊をえらいと思っていたし、後からわたしもわたしもという動物よりずっと格好良く感じたからです。
練習は、小さな小さなレコードプレーヤーにソノシートのような薄いレコードを乗せて先生について台詞を覚えました。私は、自分の家のステレオには、小人の楽隊がすんでいると思っていたころでしたので、どうしてこんなちいさいプレーヤーから音が出るのか理解できませんでした。台詞を覚えさせながらも気はそぞろでプレーヤーのことばかり考えていました。小人の人数が少ないか、それとも家よりもっと小さい小人が住んでいるのか、悩みました。練習の最中でもそのことばかり先生に聞いていました。先生は、小人はいなくて、レコードのすじと針のことを説明してくれましたが、わたしは、ぜんぜん納得できません。いつか調べてみたいと思っていたのです。
私にとってとても不幸な日は、お遊戯もほぼ完成してからやってきました。
その日の休み時間、絶対さわってはいけないプレーヤーとレコードが運動場のステージの上に上がっているではありませんか。私は、いけないということすっかり忘れて、心行くままに機械を調べました。プレーヤーは赤くて、家のよりスイッチが少なくて例の針というものもあるのだかないのだかわからない。おまけに、レコードはつまらないすじすじが入っているだけです。私は、気がつくとレコードを爪でひっかいていました。なんだかわからないけど夢中になって調べていると、先生が飛んできました。
「レコードがめちゃくちゃじゃない!もうお遊戯できない。どうするの!」
私は、また、小人の話を持ち出しました。先生は、レコードのことですっかり気が動転していて私はまもなく釈放されたのです。
次の練習の日重大な発表がありました。
「みなさん、せっかく練習をかさねてだいぶ上手になりせんせいもほっとしていたところでしたが、このお遊戯はできなくなりました。panちゃんが大事なレコードをめちゃくちゃにしてしまったからです。先生は、レコード屋さんへいってみましたが、もう売っていませんでした。だから、このお遊戯はできません。panちゃん、みんなにもあやまりなさい。」
私は、あやまりました。みんな四つくらいのちびばかりだったので誰も私のことをせめませんでした。
お気に入りの熊が出来なくなったことがざんねんでしたが、あまり悪いことをしたとは思ってなかったようです。
その頃、お兄ちゃんは、元気がありませんでした。お兄ちゃんたちのキリン組は、白雪姫をすることになっていて、当然自分が王子様の役だと思っていたら、お兄ちゃんはリスで、べつの子が王子様に選ばれたそうです。それですっかり落ち込んでいたのです。母は、色々元気付けていたようですが。。。
お姫様の役の女の子は、バレーを習っているそうで素敵なポーズをとれるらしいです。お兄ちゃんは、感心してよくそのことを話していました。私のお兄ちゃんは、小学校に上がるまでずっと将来は、白鳥の湖の王子様になりたかったらしいのでショックは、凡人には計り知れないものだったと思います。
私たちの組の先生は、気を取り直してかくれんぼと言う歌を踊ることに決めました。「ヒヨコがね、お庭でぴょこぴょこかくれんぼ」というあの歌です。もうそこまで期日がせまってましたので先生はきびしく、覚えない子は、当日出さないと言って頑張りました。みんな、頑張ったかいがあってお遊戯会当日は、上手に踊れました。ただ、同じとしごろの違う組は、けっこう長い劇でびっくりしました。さるかにがっせんです。しかし、本番うすがさるを取り押さえるところで、うす1とうす2・が出番をめぐっておおげんかになり途中で幕が下ろされるというハプニングがありました。全部の出し物が終わると小さな参加賞をもらって両親と帰りました。
その後もしばらく、オルゴールをふくめて私の小人さがしは続きました。
文*エッセイ「ママといっしょにいたかった」より
絵*わら半紙にいたずらがき
私は、その熊の役に当てられすごくうれしかったのです。子供ながら一番先にこんないい思いつきができる熊をえらいと思っていたし、後からわたしもわたしもという動物よりずっと格好良く感じたからです。
練習は、小さな小さなレコードプレーヤーにソノシートのような薄いレコードを乗せて先生について台詞を覚えました。私は、自分の家のステレオには、小人の楽隊がすんでいると思っていたころでしたので、どうしてこんなちいさいプレーヤーから音が出るのか理解できませんでした。台詞を覚えさせながらも気はそぞろでプレーヤーのことばかり考えていました。小人の人数が少ないか、それとも家よりもっと小さい小人が住んでいるのか、悩みました。練習の最中でもそのことばかり先生に聞いていました。先生は、小人はいなくて、レコードのすじと針のことを説明してくれましたが、わたしは、ぜんぜん納得できません。いつか調べてみたいと思っていたのです。
私にとってとても不幸な日は、お遊戯もほぼ完成してからやってきました。
その日の休み時間、絶対さわってはいけないプレーヤーとレコードが運動場のステージの上に上がっているではありませんか。私は、いけないということすっかり忘れて、心行くままに機械を調べました。プレーヤーは赤くて、家のよりスイッチが少なくて例の針というものもあるのだかないのだかわからない。おまけに、レコードはつまらないすじすじが入っているだけです。私は、気がつくとレコードを爪でひっかいていました。なんだかわからないけど夢中になって調べていると、先生が飛んできました。
「レコードがめちゃくちゃじゃない!もうお遊戯できない。どうするの!」
私は、また、小人の話を持ち出しました。先生は、レコードのことですっかり気が動転していて私はまもなく釈放されたのです。
次の練習の日重大な発表がありました。
「みなさん、せっかく練習をかさねてだいぶ上手になりせんせいもほっとしていたところでしたが、このお遊戯はできなくなりました。panちゃんが大事なレコードをめちゃくちゃにしてしまったからです。先生は、レコード屋さんへいってみましたが、もう売っていませんでした。だから、このお遊戯はできません。panちゃん、みんなにもあやまりなさい。」
私は、あやまりました。みんな四つくらいのちびばかりだったので誰も私のことをせめませんでした。
お気に入りの熊が出来なくなったことがざんねんでしたが、あまり悪いことをしたとは思ってなかったようです。
その頃、お兄ちゃんは、元気がありませんでした。お兄ちゃんたちのキリン組は、白雪姫をすることになっていて、当然自分が王子様の役だと思っていたら、お兄ちゃんはリスで、べつの子が王子様に選ばれたそうです。それですっかり落ち込んでいたのです。母は、色々元気付けていたようですが。。。
お姫様の役の女の子は、バレーを習っているそうで素敵なポーズをとれるらしいです。お兄ちゃんは、感心してよくそのことを話していました。私のお兄ちゃんは、小学校に上がるまでずっと将来は、白鳥の湖の王子様になりたかったらしいのでショックは、凡人には計り知れないものだったと思います。
私たちの組の先生は、気を取り直してかくれんぼと言う歌を踊ることに決めました。「ヒヨコがね、お庭でぴょこぴょこかくれんぼ」というあの歌です。もうそこまで期日がせまってましたので先生はきびしく、覚えない子は、当日出さないと言って頑張りました。みんな、頑張ったかいがあってお遊戯会当日は、上手に踊れました。ただ、同じとしごろの違う組は、けっこう長い劇でびっくりしました。さるかにがっせんです。しかし、本番うすがさるを取り押さえるところで、うす1とうす2・が出番をめぐっておおげんかになり途中で幕が下ろされるというハプニングがありました。全部の出し物が終わると小さな参加賞をもらって両親と帰りました。
その後もしばらく、オルゴールをふくめて私の小人さがしは続きました。
文*エッセイ「ママといっしょにいたかった」より
絵*わら半紙にいたずらがき