間が空いてしまいましたが、9月と10月の新聞連載の内容(毎回、まだ解き明かされていない自然の謎について紹介)を書いておきます。
●9月
今年の夏も暑かったですが異常気象の謎について。
なかなか秋が来なくて一体どうなってしまったのだろうと感じた方も多かったのでは。米国中西部やロシアの穀倉地帯では、大規模な旱魃に見舞われ、穀物価格が上昇したということが報じられました。
異常気象がいつ、どこに、どのように発生するのかを事前に知ることができれば、政策的に被害を少なくするための対策が打てるのではないかという期待があり、長期予報の研究が行われています。
海水温が上昇している影響で、気象が極端(旱魃や多雨など)になりやすい傾向は、今後も続くでしょうから(仮に、たった今から温室効果ガスをまったく排出しないようにしたとしても、気候システムには急ブレーキがかからないので温度上昇がしばらく続きます)、これを迎え撃つ人間側の知恵が必要というわけです。もちろん、地球温暖化を止めるための努力が根本的に重要であることは言うまでもありません。
●10月
珍しい、赤トンボの「渡り」の謎について。
赤トンボが舞うこの時期(といっても、最近めっきり見かけなくなりましたが)、北西季節風に乗って、なんとロシアから海を越えて渡ってくる赤トンボがいるのです。産業総合研究所でトンボを研究している二橋亮さんから、話を伺いました。
その赤トンボとは「タイリクアキアカネ」という種類。日本に定着しているアキアカネと見た目はそっくりで、少しだけサイズが小さいトンボです。アキアカネと同じように、成熟したオスが赤く体色変化します。
で、これが謎だらけでして、そもそもどうやって海を越えてくるのかが不思議なんです。
というのも、トンボは日の出のあと、気温が上昇しないと飛ぶことができないのですが、日本海側の海岸に到着したタイリクアキアカネが目撃されるのが昼過ぎぐらい(群れで見つかることもある)。ということは、ロシアから飛び立ってから3,4時間程度で日本に到着しているとすると、旅客機並みの高速移動をしていることになってしまうのです。それはいくらなんでもないだろうということで、何日間かかけてやってくるのだとすると、夜はどこにいるの?という疑問がわいてきます。波間で羽を休めているのでしょうか?
それとも、ロシアから中国、朝鮮半島と陸づたいに数日かけて飛んできて、海を渡るのは最後だけなのでしょうか。大型の渡り鳥のように、発信機をつけられれば面白い結果がわかりそうです。
ただ、今の技術では、トンボに発信機をつけるなんてとんでもない、すずめの大きさの鳥にも難しいのが現状です。
ところで、日本の古い雅称は「秋津島」。秋津とはトンボの意味ですから、日本は古来、「トンボの島」だったのです。
それだけ私たち日本人にとっては身近な存在であったと思われるトンボですが、最近めっきり減っていることにお気づきでしょうか。たしか15年ほど前までは、東京でも今ごろになると、赤トンボが大群になって飛んでいたのを記憶していますが、今年、私が東京で見たのは、まだたった一匹です。
トンボが減った原因は単一には断定できないものの、疑わしいのは稲作のための新しい種類の農薬です。害虫駆除のための農薬は従来、水田に投薬するものでしたが、苗床に投薬するタイプの新しい農薬が普及し(作業がずっと楽になります)、卵から孵化する時期のトンボを直撃しているのではないかという説です。農業の担い手が高齢化し、農作業の軽減化が避けられなくなっているなかで、意外なところに影響が出ているのかもしれません。
皆さんはどう思われますか?コメントをお待ちしています。
●9月
今年の夏も暑かったですが異常気象の謎について。
なかなか秋が来なくて一体どうなってしまったのだろうと感じた方も多かったのでは。米国中西部やロシアの穀倉地帯では、大規模な旱魃に見舞われ、穀物価格が上昇したということが報じられました。
異常気象がいつ、どこに、どのように発生するのかを事前に知ることができれば、政策的に被害を少なくするための対策が打てるのではないかという期待があり、長期予報の研究が行われています。
海水温が上昇している影響で、気象が極端(旱魃や多雨など)になりやすい傾向は、今後も続くでしょうから(仮に、たった今から温室効果ガスをまったく排出しないようにしたとしても、気候システムには急ブレーキがかからないので温度上昇がしばらく続きます)、これを迎え撃つ人間側の知恵が必要というわけです。もちろん、地球温暖化を止めるための努力が根本的に重要であることは言うまでもありません。
●10月
珍しい、赤トンボの「渡り」の謎について。
赤トンボが舞うこの時期(といっても、最近めっきり見かけなくなりましたが)、北西季節風に乗って、なんとロシアから海を越えて渡ってくる赤トンボがいるのです。産業総合研究所でトンボを研究している二橋亮さんから、話を伺いました。
その赤トンボとは「タイリクアキアカネ」という種類。日本に定着しているアキアカネと見た目はそっくりで、少しだけサイズが小さいトンボです。アキアカネと同じように、成熟したオスが赤く体色変化します。
で、これが謎だらけでして、そもそもどうやって海を越えてくるのかが不思議なんです。
というのも、トンボは日の出のあと、気温が上昇しないと飛ぶことができないのですが、日本海側の海岸に到着したタイリクアキアカネが目撃されるのが昼過ぎぐらい(群れで見つかることもある)。ということは、ロシアから飛び立ってから3,4時間程度で日本に到着しているとすると、旅客機並みの高速移動をしていることになってしまうのです。それはいくらなんでもないだろうということで、何日間かかけてやってくるのだとすると、夜はどこにいるの?という疑問がわいてきます。波間で羽を休めているのでしょうか?
それとも、ロシアから中国、朝鮮半島と陸づたいに数日かけて飛んできて、海を渡るのは最後だけなのでしょうか。大型の渡り鳥のように、発信機をつけられれば面白い結果がわかりそうです。
ただ、今の技術では、トンボに発信機をつけるなんてとんでもない、すずめの大きさの鳥にも難しいのが現状です。
ところで、日本の古い雅称は「秋津島」。秋津とはトンボの意味ですから、日本は古来、「トンボの島」だったのです。
それだけ私たち日本人にとっては身近な存在であったと思われるトンボですが、最近めっきり減っていることにお気づきでしょうか。たしか15年ほど前までは、東京でも今ごろになると、赤トンボが大群になって飛んでいたのを記憶していますが、今年、私が東京で見たのは、まだたった一匹です。
トンボが減った原因は単一には断定できないものの、疑わしいのは稲作のための新しい種類の農薬です。害虫駆除のための農薬は従来、水田に投薬するものでしたが、苗床に投薬するタイプの新しい農薬が普及し(作業がずっと楽になります)、卵から孵化する時期のトンボを直撃しているのではないかという説です。農業の担い手が高齢化し、農作業の軽減化が避けられなくなっているなかで、意外なところに影響が出ているのかもしれません。
皆さんはどう思われますか?コメントをお待ちしています。
私は負けず嫌いなので、このような謎解きなどの課題が出されると、人に先んじて持論を呈示したくなるのです。
この赤とんぼの謎は深いですね。私なりに奇想天外な試論を2つ出します。
1.集団で大陸を発った赤トンボは自力で飛べるうちは上空まで飛んで行き、その後みんなで固まって気流に乗るのです。すると飛べない夜間もそのまま気流が日本へ向けて運んでくれます。これを数日繰り返し、日本に近づいたらまた自力で飛んで降りてくるという論です。
2.大陸からは、成虫ではなく卵が日本にやって来るのです。桶など、何か大量のトンボの卵を収容できる大きさがあり、海岸にあり、かつ大量の水に満たされた容器にトンボが産卵します。その「容器」が日本海を漂いながら日本に漂着し、そこから孵化したトンボが日本国内で飛び立つのです。うーむ、この論には少し無理があるかなあ。
コメントをありがとうございます。
芸術の秋ですねー。トンボは芸術の題材としてはどうでしょうか。
説1のトンボは、なかなか勇敢ですね。風まかせで日本に不時着するような感じでしょうか。上空は強風が吹いているのでしょうから、ちょうどいいところで高度を降下させるテクニックを持っているのかな。何を目印にしているのかな。夜は眠い目をこすりこすり、星を見ながら風に身をまかせて移動しているのでしょうかねえ。不思議ですよね~。
説2はトンボの卵カプセルがぷかぷかと漂流して日本にやってくるのですね。蜜入国みたい。赤トンボの蜜入国は大歓迎ですね。