山梨の花を探して、楽しんで

山梨の豊かな自然に育まれている植物、特にその季節に咲く花について書いてます。

SNSによる情報拡散と希少植物について 〜2022年感じたことのまとめ〜

2022-12-30 20:59:00 | 貴重な花
個人のブログに加えてインスタやFacebookなどのSNSにたくさん希少な花が掲載された年だったと思います。
希少な花をアップされているのは花好きの方に加えて、写真好きの方が加わってきました。
個人的には写真は構図などセンスやタイミングが必要なのに比べて花は咲いていればそこそこ話題になります。そこに目をつけられたのかなぁと。なので気軽に生息場所も書かれている感じもします。

またSNSではほかの方が見られないごく稀なものや一番に掲載する先取り性がイイネをたくさんもらう要素になっていると感じます。なので私見ですが私は知ってるよとか、私はもう見たよなんて感じの投稿が続々とアップされています。
アップされる方の鼻高々感が透けて見えます。
でも現場的には大丈夫なの、希少な花は守られているのという視点からは残念と思えることが今年多かったです。
場所を推定できそうな記事や写真を載せたブログがあったり、
咲き始めをSNSでアップされた場所で踏み荒らしがあったり、
なかにはそこで推定される場所で盗掘が起こったり、踏み荒らしで株が激減したりしてました。
私がみた箇所だけでも数十箇所なので山梨全体ではもっと多いと思ってます。
咲き始めにその生息地を花を探して歩きまわれば幼猫を踏みつけることが多いのをどれくらいの方が理解されているのでしょうか?  近づかない撮影できないようなスマホで撮影されている方が多くなったのも気がかりです。

こんなことを書いてもこの希少な花をSNSにアップする流れは今後ますます大きくなると思っています。
保護団体なども自団体やご自分の実績づくりであちこちに首を突っ込まれて迷惑かけられている例も今年見ました。
来年はもっと直接的に声をあげないといけないのかもしれません。悩ましいもです。
希少な花を守るためにSNSにアップしないという方が増えるといいなぁと思います。










山梨の希少な花たちを守るために その1 守るための法律

2022-12-22 18:09:54 | 保護活動

なぜ山の花をとってはいけないのか?

道徳的な考えは一旦横に置いて、守られているかどうかを考える上でどんな法律があるのかを調べてみました。

まず山梨県のルールから。

県のHPには、

山梨県では、昭和46年に「山梨県自然環境保全条例」を制定し、自然環境の保全を重要な施策課題として位置づけ、また、昭和60年、全国に先がけ「山梨県高山植物の保護に関する条例」を制定し、特定高山植物18種(後に22種)を指定するなど、その保護に努めてきた。

とレッドデータブック2005のページに書かれていました。この条例の看板はまだ三つ峠の登山口にありますね。

その後、平成20年に「山梨県希少野生動植物の保護に関する条例」が制定され、上記の条例は廃止されました。

またこの条例に基づいて県の基本方針もまとめられています。詳しくはこちらをご覧ください。

https://www.pref.yamanashi.jp/shizen/58784767238.html

ここで守られているのは28種類の指定希少動植物種になります。

これらの植物のうち、主に亜高山帯から高山帯のものの保護のための調査を県から委託された山岳レンジャーが毎年実施しています。これで現状を把握されているようです。

ただ山梨県レッドデータブック2018では準絶滅危惧種だけど環境省ではニ類のクモイコザクラが入っていますが、同じクモイで環境省も二類だけど山梨県ではCRのクモイナズナが入ってないなど、どういう基準で28種類が選ばれたのか個人的には不思議です。日本で山梨県にしかないホザキツキヌキソウが最近になって指定されているのをみると最初の高山植物の保護条例からの流れがあるのではと思います。県や国のレッドデータブックにより、希少性がより明確になった現在の情報で守るべき種を見直してほしいものです。

国全体はもちろん平成5年に施行された「種の保存法」こと「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」です。指定植物種は県の条例に反映されています。


これらは植物種ですが、木や地域守る法律もあります。

ひとつは国や県の指定している文化財(天然記念物)です。多くは特別な木や林です。法律はもちろん文化財保護法です。

市町村が指定しているものもありますね。あちこちで見かけますがどんな保護柵がとられているのかとても疑問です。

https://www.pref.yamanashi.jp/bunka/bunkazaihogo/kinenbutsu.html


もうひとつは山梨県の自然環境保全条例で、自然記念物と自然環境保全地区を定めて守っています。

https://www.pref.yamanashi.jp/shizen/shizenkankyouhozentiku.html

自然環境保全地区で有名なのは三ツ峠自然保存地区で、自然記念物では櫛形山アヤメ平および裸山のアヤメ群落などが指定されています。

特にその地区内の希少植物に限定したものはなく県と市が協力して自然環境を守るという大きなくくりです。

これに関しては県が任命した自然監視員がパトロールすることになっていますが、荒れ果てている自然保存地区もときどき見かけます。

すべての地区や物の現状が毎年確実に把握されているか,こちらも疑問です。


これと同様に地域を守るものに国立公園、国定公園、県立自然公園があり、これらを守るルールは国の自然公園法に記されています。

概要はこちらです。山梨県にもこれを受けた自然公園条例があります。

https://www.env.go.jp/content/000062513.pdf

この中の国立公園や国定公園の特別地域は現状維持を原則とする地域とされており、植物に関する規制として「指定した植物の損傷等」が知事承認となっています。さらに特別保護地区では「植物の採取・損傷、落葉・落枝の採取」「植物の植栽等」も承認事項となりより厳しい管理となっています。

上に書いた指定された植物のリストは現在見直し中です。

https://www.env.go.jp/nature/np/plant_prot/index.html

かなり詳しいリストです。山梨県の関連は南アルプス、八ヶ岳、奥秩父、富士山まわりとなります。表の後ろに山梨県の絶滅危惧種のランクも書いてあるのでじっくりと目を通していく必要があります。

県立自然公園の特別地域は南アルプス巨摩公園と四尾連湖の2つで、県の条例で植物が指定されています。

https://www.pref.yamanashi.jp/somu/shigaku/reiki/reiki_honbun/a500RG00000843.html

鳳凰三山の登山道は途中まで県立自然公園でそれ以降は国立公園です。わかりにくいですね。


それ以外では、

国有林内の高山植物の採取には許可が必要です。

https://www.rinya.maff.go.jp/kanto/apply/nyurin/kouzansyokubutu_300605.html

県有林は植物採取を目的に立ち入る場合は許可が必要です。

https://www.pref.yamanashi.jp/kenyurin/nyuuzan.html

私有地であればもちろん窃盗ですよね、きっと。

これらは業者さんなどには効力がありそうですが個人にはあまり意識されてない気がしています。


多くの法や条例がありますが現地を見ると実際に効力を発揮してなさそうなものや仕組みがあると感じています。

そんな中、悪意ある人から希少な花を守るのは猿や鹿よりもはるかに大変なことです。

山梨県では盗掘もそうですが、花や写真好きの方による踏み荒らしも近年とても深刻になってきていると感じます。

法律や条例があることを啓蒙し、集団やカメラなどで監視していることや注意喚起の札などで警告する以外方法はありません。

またSNSが有力な情報源となっていることに留意し、場所が特定できるような情報の安易な発信や拡散はこれまで通りで守れるのか、もう一度見直すべきと感じます。