山梨の花を探して、楽しんで

山梨の豊かな自然に育まれている植物、特にその季節に咲く花について書いてます。

Ylistのこと

2023-02-15 19:54:00 | 基礎知識
数年前、山野草の花が好きになってあれこれネットで調べはじめたときいくつかの疑問にたどり着きました。
◯この花の科名が違うけどどっちが正しいの?
◯地域の名前がついているこの花は桜の品種みたいに勝手に地元の人が名付けてるだけじゃないの?  正式な名前?
◯この2つの花はどう調べても明確に違いが書かれてないけどほんとうに違う花なの?

特に私が名前を知るために買った図鑑などはお金の関係で旧版が多くて、どれにもあまり答えられないものでした。

そんなときに知ったのが今回の話題   Ylistでした。
米倉浩司・梶田忠 (2003-) 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList),http://ylist.info

APGIIIに基づくとされるこのインデックスは簡単検索で植物名をいれると科名や属名 参考文献などの答えをすぐに返してくれました。
最初に役立ったのは身近な植物をリストにしていたときです。
APGの新しい科名がわかり、外来種かどうかもすぐにわかりました。
またそのときに   カラスノエンドウはヤハズエンドウが正式な名前だと知りました。Ylistを見るとヤハズエンドウの別名がカラスノエンドウとなっています。Wikipediaではカラスノエンドウの項はなくヤハズエンドウのところに別名としてかかれてます。もう昔の呼び名なのですね。名前が変わってる例としてはシロバナエンレイソウと呼んでいたものは最近の山の本や図鑑ではすっかりミヤマエンレイソウになってます。よく学会のことはわかりませんがそんな変化があるんですね。それが分かるYlistはありがたいです。

それ以降 疑問を感じるたびに調べています。
山野草に興味を持ってここ数年で買い揃えた図鑑はお金の関係で旧版ばかりなのでほんとうに助かっています。
私が頼りにしている「日本の野生植物」が30年ぶりに2015〜2017年に改訂新版が出されたのですがそれもYlistの分類にしたがってました。ネットのWikipediaの記載も同様で、新しいネット上の科名や属名は統一されてきているように感じられます。
やっとなのかもしれませんし、まだまだ気づいてない方も多いのかもしれません。
新しい本や図鑑でもYlistと異なる科名や属名を使っているものもありますので、?かなと思ったら面倒でもYlistで検索して確かめるようにしています。

そうやってYlistを使っているといくつか?がでてきました。
図鑑などでよく見かける名前との差異です。

例えば、
ダイモンジソウ      別名   ミヤマダイモンジソウ
イワカガミ           別名   コイワカガミ
別名ということは同種ということかと。
違いがわからず、場所で決めてると思ってた私には理解できたのですが、、、
多くの山の図鑑に載ってますよね。これからどうなるのでしょうか?

北岳にあった赤い花   アカイシミヤマクワガタと紹介されている記事が多いです。
でもこれはYlistで検索しても該当なし。ミヤマクワガタの別名にも載ってませんでした。
種として公認されてないということでしょうか?
高山植物の地域の名前がついたものでほかにも同じような事例をいくつも見つけています。
これから種が承認されるか、そうでなければ淘汰されるか別名に載るかいずれかの道をたどるのでしょうか?
最近読んでいる昔の写真集や本や図鑑に全く聞いたこともないような植物名がいくつもありました。地域の名前がついているのも多いです。それが今はどうなっているかYlistで調べてまとめてみようと思っています。

余談ですがコボトケスミレのような交雑種のスミレも載っていました。どこまで交雑種やシロバナ◯◯スミレなど独特な名前をつけられたスミレがYlistに載っているのかもおいおい調べてみたいと思います。
















国立・国定公園における植物の保護対策について(指定植物)

2021-02-22 21:19:00 | 基礎知識
環境省のHPから抜粋。

国立・国定公園の特別地域では、自然公園法第20条第3項第11号において、高山植物その他の植物で環境大臣が指定するもの(以下、「指定植物」という)を採取し、又は損傷する事が規制されています。

山梨県の国立公園は、
南アルプス国立公園と富士箱根伊豆国立公園、そして秩父多摩甲斐国立公園の3つです。
昭和56年に指定植物が決められていますが今回見直しを行うことになり、この2月に秩父多摩甲斐国立公園の指定植物が
見直されました。
詳しくはリストをご覧ください。
残りの2地域もこれから見直されていくと思います。

特別地域は、以下の図で確認できます。


最後に気になる  自然公園法第20条第3項第11号  の規制ですが、

十一 高山植物その他の植物で環境大臣が指定するものを採取し、又は損傷すること。

    罰則規定はコンメンタール自然公園法の83条にちゃんとありました。
    6月以下の懲役、または50万以下の罰金です。

     こんなのがあったのですね。

    お詫び
     山梨県の国立公園は3つですが、それ以外に国定公園がありました。
     八ヶ岳中信高原国定公園です。
     山梨県の範囲は以下の通りで八ヶ岳の山裾まで入ってます。

    知りませんでした。すみません。















山梨県のレッドデータブックに関する誤認識。

2020-12-02 21:08:00 | 基礎知識
山梨県のレッドデータブックは最初は2005年版と今回の2018年版の二つがあります。
いつもみているのは県のHPに掲載されている2018年版でした。
そこには県内を65の二次メッシュで刻み、その存在場所をしめされていました。
それによってだいたい八ヶ岳周辺かなとか、富士山の近くだなぁと思っていたわけです。
メッシュは10km✖️10km  株数は100が基準です。ただCRなどはそこまでなくても
メッシュに記載されているのではないかと思われる表記があります。
このメッシュ数は絶滅危惧種の判定の重要な要素になっています。

2018年版の図の凡例はこの3種類でした。
◯2005年出現
◯2015〜2017出現
◯両方の調査で出現

これをみて、前回の調査結果が反映されていてわかりやすいなと思っていました。

ところが先日図書館で2005年版を見ていたら、その凡例はこうなっていました。
◯標本
◯写真、文献、野帳
この2つです。
比べたら、この2つはそれぞれ同等の扱いで2018年版に反映されていました。
この凡例だけ読むと過去の標本や記録の集大成を載せたように感じられます。
作成方法の部分を読むと、文献や標本(個人のものも含む)を調査してリストを
つくり、それを元に現地調査をされたとあります。
ただこの中で開発行為や乱獲による急速な消失が想定されるもの種について
重点的に調査したと書かれており、すべて現地調査して確認したわけではなさそうだ。
マンパワーを考えると仕方ないことだと思います。

2018年版では、引用するが
2005 年度版山梨県レッドデータブックに記載された 455 種と環境省第4次レッドリストの
追加種の現況把握調査を行うとともに、2005 年以降県内で生育が確認されている未記載種
及びニホンジカの食害による植 生の変化や開発行為等による生育適地の減少のため急速な
消失が想定される種についての補完的調査を重点的に行った。

と書かれており、すべて現地調査を行なっていると思われます。
したがって今回のレッドデータブックを見る際には、2005年出現凡例のものは当時から
もなかったのかもと考えてもいいかもしれません。特に希少性の低いものについては。

最後に2005年版に気になる表記があったので紹介しておきます。
ラン科の植物は近年乱獲が激しく、存在を公表すること危険性が指摘されたということです。

メッシュの公表は私も同様の考えです。メッシュ内は広い範囲とはいえ、知っている人が
丹念に探せば見つかる可能性は否定できません。ましてや最近はインターネットに具体的な
多くの文章や写真が無造作にアップされており、それを参考にもできます。メッシュを今後
無くしても本は残ります。なのでそういうネットへ情報公開の制限をするべきだと私は
考えます。実際に守っている山の名前を書かれたのを注意しても過去の情報は修正されませ
んし、どうしようもありません。早く条例化してほしいものです。
また知らずに掲載されてしまう危険性の除去についてはYAMAPが検討中です。結果を
楽しみにしたいと思います。






勉強不足を痛感したこと。

2020-11-03 10:02:00 | 基礎知識
10月のお天気がぐずいついた日を中心にコツコツとやってきて
「山梨県の植物誌」のデータベース化がやっと終わりました。
その植物の希少性が分かるように県と国の絶滅危惧種ものはランクを
記入し、県のレッドデータブック載っていて植物誌にないものは
新規として追加してみました。
これによって以下のいくつかのことがわかりやすくなりました。

◯ハナワラビの仲間はどんな種類が山梨にはあるの?   など比較検討する対象を限定
   できる。
◯前にも書いたように山梨県で新規な植物がわかる。
◯家の近くの山域にある少し珍しい植物もわかる。

あとはこれを元にいろいろ比較検討していこうかと思います。

その手始めとして植物誌にも生息地として多く記載のあった櫛形山の植物に
ついて検討してみることにしました。櫛形山の植物については、巨摩高校自然科学部と
理科研究部みなさんが昭和39年から10年にわたり調査されたまとめが
「櫛形山の自然」昭和51年に発行されています。
そこには被子裸子合わせて93科593種、羊歯植物9科52種類が確認されていると
書かれていました(p92)。
山梨県の植物はレッドデータブックによると2139種。
約30%の植物が櫛形山に存在することになります。すごいことですね。

そこで先の自作の山梨県の植物データベースを元に、
◯「櫛形山の自然」に掲載されているもの
◯掲載されているものですでに確認しているもの
◯掲載されていないが確認したもの
を書き込んでみました。

そこで一番痛感したのは、
私が身近な植物名前をよく知らないということでした。
なので確認したかどうかを記入しようとしても植物の特長が
全く浮かんでこないものがほとんどなのです。
保護したいと思ってもその存在に気づかないとできません。
日々見出した特徴的な花の名前ばかり追いかけて、日常的に見かける
木や草に知らないものがあってもあきらめて名前を調べようとしなかった
のが一番いけなかったのではないかと思います。本当に勉強不足でした。
まずはこの山にある植物を実物を確認し、徹底して覚えていくことから始め
ようと思います。




山梨県の「希少な植物」を見分けるには?

2020-10-08 10:26:00 | 基礎知識
山梨で植物観察をするときに気になっていたことがある。
あまり見かけない花を見つけた時に、それが希少なのかということだ。
それを判別するのに2つのものさしが必要だと最近になって気がつきました。

ひとつは言うまでもなく2018山梨県レッドデータブックです。
はじめて作られた2005年版を改訂したものでこれに記載されていれば希少種ということができます。
このHPに公開されているので参照するか、本を購入して参照すればよくわかります。
ただ最新版はHPなり、最近ではヒメスズムシソウがCRとして追加されました。

もうひとつは山梨県にこれまで発見されていない植物という観点からの希少価値です。
これは何がベースなのか難しいところですが、現時点での私の結論は、
2018山梨県レッドデータブックの概要のカテゴリー別集計表の注釈に書かれている
「山梨県植物誌1982年発行」に新たにレッドデータブックに記載した23種を加えて、
   山梨県在来種の暫定値とした。」という内容の記載に注目した。
この「山梨県植物誌1982年発行」は各図書館に置いてあり、容易に借りることができます。
現在のもうひとつの希少基準は2018レッドデータブック(ヒメスズムシソウを含む)に記載
されてなく、かつこの植物誌に記載されてないものが「山梨県にまだあると認められてなく
希少なもの」としてます。実際には学術論文などですでに存在が明らかにされていたり、
ネットで情報が飛びかっていたりしているものもあると思いますが、私はこう考えました。
オフィシャルな2140種類の植物以外ということです。

この植物誌は当時の、
◯昭和50年から行ってきた県の貴重植物群落調査の記録と標本
◯秋山樹好氏の記録と標本
◯植松春雄氏が前年(1981年)に出版した山梨県の植物目録
◯中込司朗氏の山梨県樹木目録
基づいてまとめられたとあり、
自生するものと帰化植物、そして園芸種などの逸出植物についてまとめられているものです。

この植物誌は有用なデータなので頑張ってデータベース化しています。
2014種、レッドデータブック記載の新たな種を追加しながらやるのでなかなか進みません。
科目がすでに変わっていたりしますが、それも修正しながらやっています。

ただこの入力の際にもいくつか気づくことがあり、意外に楽しい作業です。
分布については、
多い、普通、少ない、稀、ごく稀   の主に5分類になっていますが
当時 普通と書かれていたものがレッドデータブックに載っていたりしました。

また分布域や産地は7分類で記載されていますが、今の希少種が昔はそんなところにもあった
のかと気づかされることも多いです。
さらに科目の花の全体が見通せるので、すでに存在が知られている植物にも気づきやすいです。
出来るだけ追記しています。
きっとこんな作業は県のほうでもされているんだろうなと考えながら。