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高野和明「グレイヴディッガー」

2012年07月01日 | た行の作家

 

角川文庫

2012年2月 初版発行

解説・村上貴史

416頁

 

 

久しぶりの高野さんです

 

帯より

読み始めたら止まらない!

これが小説の全速力だ!!

悪党は命を懸けて走り続けた。

病気の子供を救うために―――。

 

悪党からの骨髄提供を待っている子供がいるので、病院へ行かなければならないのです

過去の悪事を償うための行為としても、その思い入れはかなりのもの

悪党は悪党なりのポリシーに頭が下がります

 

2002年、講談社より単行本として刊行されています

時代背景はおよそ10年前

少しズレは感じますが、帯の宣伝文句の通り、面白かったです

 

高野さんが創作したという伝説「グレイヴディッガー」に擬えて起こる連続殺人事件

連続殺人犯、悪党、警察、公安、政治家

誰が敵なのか、味方なのか

タイムリミットが迫る中、悪党は子供を救うことが出来るのか?

映像を見ているようで、ドキドキしながら一気読みでした

警察の内情など、所々宮部みゆきさんみたい、と思う箇所がありましたが、似てくるのは必然かもしれません

 

悪党・八神のキャラクターが良いです

悪党ながらユーモアや変なこだわりがあったりします

凶悪犯ではなく、普通に街中で悪事を働く程度の彼が、その道のプロ教育を受けた人間のように機転を利かせ、アクロバット的な逃走劇を見せるのは痛快

防犯カメラを避ける様子など先日逮捕されたカルト教団の人間の言葉を思い出しました

昔、世話になった警官に「論理だよ、ワトソン君」

何故追われるのか理由の分からない相手から逃れ病院へ向かう途中思う、人助けとは何と困難なことだろう

連続殺人犯を誘き出すためにカモになってくれと言われ「俺は老衰で死にたい」

いよいよ病院が近づいてくる、最後に笑うのは俺だ

悪の本丸で「俺は正真正銘の悪党だ。市井の名もなき悪党を甘く見たな」

 

やっとたどり着いた病院で、いよいよ骨髄移植の手術を控えて「誰かのことを祈りたいから人間は神を創った。誰かのことを呪いたいから人間は悪魔を創った。そうじゃないのか?」

 

手術直前

八神は祈ります

神様、どうかその子を助けてください。移植を成功させてください。何も悪いことをしていない、小さな無垢の命を奪わないでください。

何一つ報われることのなかった人生で、初めて八神の心が希みだけで満たされた。

自分だけの神、自分の善意が創り上げた神に向かって、悪党は一心に祈りを捧げていた。

 

 

何が正義で、正義の名のもとに人は何をするのか

高野さんが、その作品で題材にされる正義への想いとタイムリミット

堪能しました

 


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2 コメント

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ノンストップ感 (ねこやま)
2012-07-02 21:00:19
デビュー作は13階段の筆者ですが
わたしは某新聞のレビューを読んで興味を惹かれこちらを先に読みました
その時の衝撃といったら!
とても好きな作家さんです!
最近ではジェノサイドを読みましたが
それによって高野氏の印象が少し変ってしまったのですが
グレイブ・ディッガーはすごく好きです!
各々の“正義”を描かせたら文句なく上手い作家さんだと思います
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ねこやまさん (こに)
2012-07-03 17:06:50
私は、最初が「幽霊人名救助隊」でしたので泣ける小説を描く方だと思ったのですが、そこに収まるような小さな作家さんではありませんでしたね。
「ジェノサイド」も近いうちに読みたいです♪
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