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植松三十里「燃えたぎる石」

2019年02月25日 | あ行の作家

 

角川文庫
2011年4月 初版発行
解説・末國善巳
288頁

 

幕末に常磐炭坑を発見し開発、偉大な足跡を残しながらも、現在では知る人も少ない片寄平蔵という人物の生涯を描きます

 

貧しい開拓農民の家に生れ、幕府に巨木を納入するまでになった磐城の材木商・片寄平蔵は阿片戦争の現実に衝撃を受けます
アジアが欧米列強の植民地として狙われていること、清国に勝利したイギリスは日本と同じ小国ながら産業革命を成し遂げ、目覚ましい進歩を遂げていること
やがて、西洋の先端技術を支えているのが石炭であることを知った平蔵は、国産の石炭を求めて炭鉱開発に情熱を注ぎます

 

石炭を原料にしたコールタール製造工場を建設し採算ベースに乗せてもいます
炭坑開発に限らず石炭を多角的に事業化した独創性、人の何気ない一言からビジネスチャンスを察知し資金を惜しげもなく出す判断力には素晴らしいものがあります
勿論、事業の成功は平蔵独りの力でなされたものではなく、平蔵のアイデアを基に、設計、製造、販路開拓に力を貸した人々あってのものです
日本の得意とする“ものつくり”の縮図をみるようです
また、西洋の技術の上辺を真似ればこと足りると考えている水戸の徳川斉昭と、最新テクノロジを学ぶためには時間をかけて人材を育成する必要があると考える薩摩の島津斉彬との対比には、現代日本に真の教育とは何か、今、何をすべきか、メッセージが折り込まれています

 

幕末、時代の流れの中で経済的な混乱が攘夷論に拍車をかけ、西洋人への偏見を正そうと啓蒙活動を始めた平蔵の運命を大きく左右してしまいます
最後は少し残念…

 

外国人排斥運動、国際協調、などなど、現代日本への問いかけが詰まった作品でした

 

 


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