新潮文庫
2020年1月 発行
解説・松永美穂
286頁
ベルリンに実際にある9つの通りと1つの広場を歩く「わたし」の10の物語
「わたし」は日本国籍で、かなり前からドイツに住んでおり仕事は執筆業
とくれば作者自身のことかと思いますが
本作は多和田さんの日常を記録したものではありません
小説です
街のあちこちに残る戦争や負の歴史を記憶させるためのモニュメント
一つの歴史書のようなベルリンの街を注意深く歩けば次々と物語は立ち上がってきます
一人で歩く「わたし」にはいつの間にか連れができていて、それは百年前にそこを歩いていた、その通りに住んでいた、あるいは通りの名前になっている人物だったりします
街を歩く一方、常に頭の中にあるのは、待ち合わせ場所に絶対に来ない「あの人」のことです
多和田さん特有の韻を踏む言葉遊びや、「あの人」とは一体誰だろう、と想像しながら、行ったことのないベルリンの通りを一緒に歩いているようで面白かったです
松永さんの解説にストリートビューで見ることができるとあったので本書に出てくる通りや広場を見てみました
バーチャルなベルリンお散歩もまた愉しいものです
でも実際に行ってみるのとは大違いでしょうねぇ
多和田さんは野間文芸賞受賞作「雪の練習生」を読んだことがあります
今回、表紙カバーの見開きをみて他にも芥川賞をはじめとして数多くの文学賞を受賞されているのを知りました
少しずつでも読んでいきたい作家さんがまた増えてしまいました( ;∀;)
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