読書と映画とガーデニング

読書&映画&ガーデニング&落語&野球などなど、毎日アクティブに楽しく暮らしたいですね!

夏川草介「神様のカルテ」

2010年05月17日 | な行の作家

信州松本平
信濃大学医学部を卒業
松本市のやや下町
深志神社の南にある本庄病院に勤務する5年目の内科医
栗原一止(いちと)

夏目漱石をこよなく愛し話し言葉もやや古風
ちょっと風変わりな先生の病院奮闘記


深志神社の南
病院の正面玄関に「24時間、365日対応」とある
とくればこれは実在する『相澤病院』ではありませんか!

深志神社、松本城を過ぎ徒歩で帰る自宅は古い旅館をそのまま賃貸アパートにした「御嶽荘」
うんうんあの辺りは古い家屋が多い
これも実在するのかもしれない

担当患者の急を聞き
木曽、奈良井宿から病院まで車で飛ばして40分
19号線をぶっ飛ばしたんだねぇ
不可能ではないな


ワタクシ
実は
2年ほど松本に住んでおりました
かれこれ20年ほど昔ですけど…


信濃大学病院は信州大学病院そのまま
(私が住んでいた頃はボロかったけど)
本庄病院の屋上からの北アルプスの眺め

病院の入院患者さんの名前は
豊科さん、明科さん、倉科さん、安曇さんetc

知っている地名、風景、情景が次々出てくるのが楽しくてどんどん読み進みました


一止の妻、病院スタッフ、御嶽荘の住人など登場人物は全て「良き人々」

ユーモアと優しさに溢れる展開の裏で
地域医療問題
終末医療問題
救急医療問題
など厳しい現実問題が迫ってきます


患者を看取る度思う

私は悲しむのが苦手だ…


点滴やら抗生剤やらを用いて、絶える命を引き延ばしているなどと考えては傲慢だ
もとより寿命なるものは人知の及ぶところではない
最初から定めが決まっている
土に埋もれた定められた命を掘り起こし光を当て、よりよい最期の時を作り出していく
医師とはそういう存在ではないか



先端医療を学ぶため医局へ戻ることを勧められた一止は悩んだ末、本庄病院に残りハードな医療現場で働く道を選択する


長い人生だ
いずれまた道を見失い戸惑う時も来るであろう
右往左往して駆け回り、瑣事にとらわれて懊悩することもあるであろう
そんな時こそ私は声を張り上げて叫ぶのである
立ち止まり胸を張って槌を振り上げよ
足下の土に無心に鑿をくわえよ
慌てずともよい
答えはいつもそこにある
一に止まると書いて『正しい』と読むではないか
つと振返れば月下に雪、その先に黒々とそびえる松本城
ささやかな真実をようやく掘り当てた私を、国宝の名城が悠々と見下ろしていた



夏川さん
本作でデビュー
信州大学医学部卒
本当に相澤病院に勤務されていた時期があったそうです


最期の時を栗原一止先生に診てもらえたら幸せな時を過ごすことが出来るにちがいありません




コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 江戸川乱歩「目羅博士の不思... | トップ | 高山文彦「ミラコロ」 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
読みました。 (narkejp)
2012-12-03 19:49:24
なかなかおもしろく読みました。この作者は、現役のお医者さん? 神様は、多彩な才能を授けてくださったようですね。でも、こんなにハードな職業には、正直なところ、就きたくない気持ちも(^o^;)>poripori
返信する
narkejpさん (こに)
2012-12-04 21:54:59
先週末、第3弾を読み終えたところです。
頭痛持ちのお医者様がこんなハードな働き方をしていて大丈夫なのかしら、と心配になるくらいですが、まぁ小説世界ということで。
返信する

コメントを投稿

な行の作家」カテゴリの最新記事