1983年12月新潮社より刊行
新潮文庫
2015年5月 発行
解説・中島京子
327頁
1984年 谷崎潤一郎賞受賞
戦争末期の東京
空襲に怯え明日をもしれぬ不安な日々を過ごす19歳の里子
母と伯母と暮らす里子は、妻子を疎開させ隣家で一人暮らしをしている20歳も年の離れた市毛と密かに結ばれる
戦時を生きる市井の人々の日常と一人の女性の成長を端正な筆致で描き上げた作品
70年前の東京にこのような日常があったのです
解説の中島京子さんも「小さいおうち」で戦時下に生きる人々を描いておられます
明日がどうなるかわからない日々を送る中で、妻子のある市毛を慕う里子、戦況悪化の中自分にもいつ赤紙が来てもおかしくない不安に苛まれる市毛
平和な世であれば二人が結ばれたことを里子の母が知れば血相を変えて里子を叱りつけたことでしょう
しかし現実には二人の関係に気づいていながら何も言いません
やがて終戦の日をむかえます
里子は市毛の妻子が戻ってくることも自分の立場も充分理解しているようです
市毛の身勝手や里子の心情を思うと憤りや切なさがこみ上げてきましたけれど、ラストの一段落でそんな思いは消えてしまいました
茶の間の灯は明るかった。戦争が終われば、あれにも増して明るい灯が、どの家にも点るだろう。あと一週間が過ぎれば、それからは死に脅かされずに別の時間を長く生きられるのだ、と窓辺に母の影を探しながら、里子は思った。
「この国の空」に爆撃機が飛んでくる日がきませんように…
映画は二階堂ふみさんと長谷川博巳さん
本書を読んだ後、YouTubeで予告編を観ました
二人の関係が生々しいです
多分、予告編では流れていない『戦争』のシーンがたくさんあるのでしょう
機会があったら観てみたいと思います
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