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鹿島田真希「6000度の愛」

2010年04月03日 | か行の作家
難解でした
この難解さ
佐藤亜紀さん以来です

文章自体は一文一文短めで読みやすく、ページ中に空白が少ないところが好み


主人公の「私」
アル中で自殺した兄
兄だけを愛し、妹の自分は兄の影としかみてくれなかった母
未だ家族や昔の恋人との古い記憶に縛られている

結婚して子供も生れ都会の団地で平凡で安定した生活を送っていた「私」
団地の非常ベルを聞いた「私」は子供を隣家に預け長崎に向かう
長崎のホテルで出会ったロシア人とのハーフの青年と肌を合わせる5日間

「私」は青年に対し理不尽なまでに辛くあたる
青年は対立を避け親愛と信頼の情けを出し惜しみしない
「私」は加虐の無意味を悟り兄の自殺依頼自分を苛んできた死への誘惑から解放され夫と子の待つ日常へ戻っていく

何故、長崎なのか?
何故、原爆なのか?

作者はロシア正教の信者で
長崎には被爆したマリア像など宗教的なイメージを喚起させるものが残っているから

長崎/青年がアメリカ/私の行いを許す力
原爆それ自体は許さずそれを使用した主体の過ちは許す
許しと再生を宗教に託している


青来有一さんのように原爆に対しストレートではなく小説の中に含んでいる部分が大きいです

他の作品も読んで慣れたところで再読の必要がありそうです
デュラスの「ヒロシマ、私の恋人」「愛人」も

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