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本谷有希子「異類婚姻譚」

2020年01月07日 | ま行の作家
講談社文庫
2018年10月 第1刷発行
解説・斎藤美奈子
171頁

第154回芥川賞受賞作

「異類婚姻譚」
子供もなく定職にもつかず、ただ安楽な結婚生活を送る“私”
ある日、互いの輪郭が混じりあって自分の顔が夫の顔とそっくりになっていることに気づきます
倦怠期にさしかかった夫婦が互いの姿にげんなりし、やがて離婚に至る物語です
「自分の甘えやだらしなさは棚に上げても、相手のそれは気になるもの」
「元は他人同士の二人が夫婦として一緒に暮らすなんて所詮は無理な話」
そんなところを不気味な設定に置き換えて語られる物語にゾッとすると同時に心の奥底を見透かされたようで冷や汗(*_*;

「トモ子のバウムクーヘン」
二人の子の母であるトモ子は、キッチンでバウムクーヘンを焼きながら、この世界が途中で消されてしまうクイズ番組だということを理解します
部屋にいる子供たちも猫もトモ子の恐怖や孤独には全く気づきません
自分に置き換えてみて想像するだけで恐ろしい!

「〈犬たち〉」
ある仕事を引受け山小屋にこもることになった“私”
そこには多くの白い犬たちがいました
三日後、買い出しのために出かけた麓の町のスーパーで「犬にはくれぐれも用心してください」と書かれたビラをもらいます
ビラには「町ではまた行方不明者が出た」とも書かれています
その後の展開は想像できてしまいますが、“私”にはそれも良しなのだろうと思いました


「藁の夫」
結婚して半年、夫選びは間違っていなかったと信じるトモ子の気持ちを反転させたのは、車内での些細なミスに対する夫の異常な拘りでした
徹底的にトモ子を責める夫、それも身体を構成しているのが藁なんて、想像するに気持ちが悪い
理解に苦しむのはトモ子が最終的に『自分が悪い』で争いを収めようとするところです
世のDV夫とその妻の関係は大体がそのようなものらしいですね
読んでいて大変心地悪かったです

解説で斎藤美奈子さんが書いておられるように
あとでじわじわ効いてくる毒がたっぷり盛られている中短編集でした


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