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インド政府、ECR対象国にインド人向け福祉基金を設立

2008年12月02日 | アジアの移民政策
今日は、インドからの海外出稼ぎのニュース。ECRってなに?と思われた方も多いのでは。

ECR とはEmigration Check Required の略、インドには、一般旅券に二種類あり、ひとつは、海外渡航の許可が必要なもの(ECRパスポート)、そしてもうひとつが許可免除パスポートである。(ECNRパスポート)

許可の要らないECNRパスポートの保持が認められるのは、10年間以上の教育を受けたもの、海外に3年間以上居住するもの、海外の永住権を持つもの、船員手帳の保持者など。ECNR保持者の扶養家族もECNRの発給が認められる。

中東やASEAN各国で働くインド人出稼ぎ労働者、とくに単純労働者はECRパスポートの保持者が多く、就労に伴う海外渡航の許可を在外インド人省に申請することが必要となる。このように国民の学歴や技術レベルを軸に自国民の海外渡航を管理する国はほかに例がない。インドはそれだけ貧富のや知識レベルの差が顕著であるということか。アジア全域にいえることだが、教育を受ける機会の少なかった出稼ぎ労働者が悪徳斡旋業者にだまされる事件が日常茶飯事だ。

↓の記事は、より保護を必要とするECRパスポートを持つインド人出稼ぎ労働者を対象に、福祉基金を設立するというもの。工事現場など危険を伴う職場で働く出稼ぎ労働者が直面するさまざまなリスク(病気や事故、雇用企業の破産や紛争など)基金によって回避しようというもの。この基金はフィリピン、スリランカ、タイ、バングラデシュなどさまざまな国ですでに導入され、困窮した労働者の帰国の渡航支援やホットラインの運営などをし、一定の成果をおさめてきた。基金は労働者の会員費によってまかなわれるのが通常の運営方法だ。

従来、インドは一線を画して、民間保険会社にこの業務を委託していた。国以外の機関が海外出稼ぎ者のリスク回避に対応できるか注目を集めていたのだが、今回のニュースを見る限り、国が自らが基金を設立するようだ。半年ほど前に在外インド人省の担当官からアジア各国の福祉基金の財源に関する問いあわせを受けたのだが、説明がつく。民間企業の運営する保険では対応が難しいのか、なにか問題があったのか、ぜひ今度質問してみたいとおもう。

各国の出稼ぎ労働者対象の福祉基金(Welfare Funds)に関する記述はこの書籍が参考になる。

Labour Migration in Asia: Protection of Migrant Workers, Support Services And Enhancing Development Benefits

United Nations Pubns

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インド政府、ECR対象国にインド人向け福祉基金を設立
2008/11/28 Friday 17:03:40 JST
〈ニューデリー〉インド政府は、インド人が移民する際に審査が必要とされる国々(ECR対象国)にインド地域福祉資金を設立し、海外で働くインド人のサポートする。

在外インド人省ヴャーヤラル・ラヴィ大臣は27日、「在外インド人省はECR対象国にインド人コミュニティー福祉基金を設立する。基金は、ECR対象国で働くインド人が災害や困窮などに直面した時に大使館がインド人を援助する財源となる。2009年1月1日から各ECR対象国で施行される」と発表した。

ラヴィ大臣は「フリーダイヤルの電話相談窓口、保護施設、相談センターなど、海外で活躍するインド人に適切な福祉サービスを提供するためにも、新しい枠組みを作る必要性を感じていた。違法移民対策も重要ではあるが、合法移民を保護する政策もそれ以上に大切だ」、「海外で働くインド人に経済的な安定と選択の自由を与え、リスクを最大限におさえ、利益を最大限に増やすのが、大臣としての私の務めだ」と語った。

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