入管戦記―「在日」差別、「日系人」問題、外国人犯罪と、日本の近未来坂中 英徳講談社このアイテムの詳細を見る |
今や日本の移民政策のご意見番ともいえる坂中 英徳氏(ミスター入管)の仕事人としての自伝本。出版されたのはいまから数年前(2005年)だが、今読んでもまったく古さを感じさせない。昨年出版され話題を呼んだ移民国家ニッポンのさきがけ本という位置づけもできる。
入管といえば、外国人の人権保護の対極にあるというイメージが強いが、それを払拭するように、著者は入管の役割を次のように語っている。…「共生社会」に向かうための前提条件として、日本人が外国人に対して過剰なアレルギーを持たない社会を築くために、悪感情を引き起こす原因を徹底的にたつ必要があると考えたのである。その原因とはまさに「蛇頭」に代表される、不法入国の闇に巣くう犯罪組織だ(本書P30)。
坂中氏が訴えるように、出稼ぎ労働者から多額の斡旋料を巻き上げたり、犯罪行為を繰り返し行うような組織を厳しく取り締まることは、多文化共生社会の構築に必要な要素であろう。このような組織や個人を取り締まることに異議を唱える国民は少ないように思われる。
現在の入国管理行政で真の問題となっているのは、例えば在留資格がないまま日本で長期間に渡って就労を続けた外国人労働者と子供たちの処遇など、よりソフトなケースへの対応ではないか。彼らは不法滞在・就労の罪で強制退去が適用される恐れがあり、実際に同様の処分が執行され続けている。「多文化社会共生社会」の推進という観点から考えたとき、このような強制退去はどのような影響を及ぼすのだろうか、そしてそれは日本に居住する外国人の目にはどのように映るのだろうか。