石川達三
蒼氓(そうぼう)
日本が移民を送り出していた頃、20世紀の始めの二つの世界大戦の狭間の時代を背景とした小説である。
戦後の平和で恵まれた生活をしてきた私達にとって、日本にもこれほど恐ろしく貧しい時代もあったのか、と改めて気づかされる。
本書を読むと、日本の多くの農民がどのような背景、プロセスや情報をもとに、海外へ移民する決断にいたったのか、よくわかる。それは今日フィリピンやインドネシアなどから海外出稼ぎに出る貧しい人々のそれとあまり変わらないと思った。藁をもつかむ思いだ。
現在、多くの海外出稼ぎ労働者が斡旋業者にそのすべてを託し、そこには往往にして搾取が見て取れるように、日本からの移民も十分な情報をもらえなかったり、移民事業担当者の恣意的な指図に右往左往していたこともわかる。
移民の物語に共通するテーマ、移民の力強さと適応性、作者はそれは主人公の家族の娘を通じて描いている。運命を受け入れつつも、そこから幸せと生きがいをみつけていくことができるタフさ、それが移民の底力である。
本末のあとがきには、本書が芥川賞の第一回受賞作であると書かれていた。絶版になり、文庫本は書店には並んでいないようだが、古本屋さんで見つかると思う。
蒼氓(そうぼう)
日本が移民を送り出していた頃、20世紀の始めの二つの世界大戦の狭間の時代を背景とした小説である。
戦後の平和で恵まれた生活をしてきた私達にとって、日本にもこれほど恐ろしく貧しい時代もあったのか、と改めて気づかされる。
本書を読むと、日本の多くの農民がどのような背景、プロセスや情報をもとに、海外へ移民する決断にいたったのか、よくわかる。それは今日フィリピンやインドネシアなどから海外出稼ぎに出る貧しい人々のそれとあまり変わらないと思った。藁をもつかむ思いだ。
現在、多くの海外出稼ぎ労働者が斡旋業者にそのすべてを託し、そこには往往にして搾取が見て取れるように、日本からの移民も十分な情報をもらえなかったり、移民事業担当者の恣意的な指図に右往左往していたこともわかる。
移民の物語に共通するテーマ、移民の力強さと適応性、作者はそれは主人公の家族の娘を通じて描いている。運命を受け入れつつも、そこから幸せと生きがいをみつけていくことができるタフさ、それが移民の底力である。
本末のあとがきには、本書が芥川賞の第一回受賞作であると書かれていた。絶版になり、文庫本は書店には並んでいないようだが、古本屋さんで見つかると思う。