この2~3日、96歳になる祖母を預かっています。
年々足は歩行困難に、腰はえびのように曲がり、かなりやせました。
それでも我が家に来ると、自分の足で歩いてトイレに行き、顔を洗い、おしゃべりをして、本人もまだまだ歩けることを実感しています。
やせた代償として、歯茎や顎までやせ入れ歯が合わなくなるケースが増えています。若い時に歯を失った方は、入れ歯を維持する顎の土手があまりありません。
ここに維持を求めることになるためあまり噛めない、噛まずに飲み込む、小さく切ったもの、どろどろのもの、流動食・・ということになってしまいます。
歯科医師の立場から、介護老人にも現在の幼児と同じく重大な要因があることに気付きました。
祖母、舅ともに観察してみると
うまく飲み込むことが出来ません。
原因は多々あるでしょうが、次のようなことが考えられます。
①現在の老人の若壮年時代は、食事は短時間ではやくすませていた。
つまり、固いものは噛んでいたが飲み込む時間も早い。
②歯医者で定期的に検診する習慣がないため歯を失う年齢が早かった。
③入れ歯になってからの時期が長いため、長期間同じ入れ歯を使っている。
④入れ歯の手入れが、個人によって差がある。
⑤唾液が出ないのは、
年のせいだけと思っている。
⑥手足の衛生観念があっても、口の衛生に対しての知識に乏しい。
さて、
嚥下障害からおこる肺炎が原因で亡くなった俳優さんについて先週は話題になっておりました。
嚥下は、
1. 食する食物の性状を認知し、食べ方・唾液分泌・姿勢といった摂食に必要な準備を整える時期。
2. 食物を口腔に取り込み、歯で咀嚼して飲み込みやすい大きさの塊(食塊)を形成する時期。
3. 食塊を舌によって咽頭への送り込む時期。
4. 咽頭から奥の、これ以降は不随意運動(意識して止められない運動)。
舌尖(舌の先端)が持ち上がり、食塊が咽頭に達すると嚥下反射が生じて、極めて短時間(約1秒)の間に食堂まで送り込む動作。
このようにわかれます。
1の準備期間は目で見て脳に信号をおくる大事な認識時期です。
まず、食べ物をよく見ましょう。
一番困難とされているのが2の
咀嚼といわれる時期です。どうしても食べやすいように切り刻む食事が増えています。しかしながら、まだ自分で食事のできる老人に、本当に切り刻んだ食事を与えることが、歯と顎、そして体によいのでしょうか?
実際祖母にやわらかいとうもろこしをガリガリとかじらせてみました。普段は、小さくとうもろこしの実を削ったものを食しています。
しかしながら、かじらせてみるとよく噛みしめ、唾液の分泌が増え上手に飲み込むことが出来ました。これは、普段からすする行動にたより、顎を使わないため脳からの唾液を出る指令が鈍ってしまっていることを示します。
たしかに年齢とともに唾液腺も萎縮し唾液の量も減ってきます。
しかしながら、食べ方や体操などの工夫で、
大きく口を開ける→顎の力を使う→噛み切る→かみ締める→唾液がよくでてさらによく噛める→食塊をつくり飲み込むこの一連の行動がうまく出来たことを示します。
もちろん祖母の例をとってみれば、食事時間は一回に30~40分かけゆっくりと食し、噛み方を観察して噛み癖を是正できるよう入れ歯を調整する、などの処置を施しました。
現代の高齢化に伴い、嚥下事故が増えているようです。
嚥下障害防止、脳の活性化、唾液の増加のためそして丈夫な体を作るためにこんな体操があります。
ごっくん体操をしてみましょう。
①姿勢と深呼吸
リラックスして深く腰かけましょう。
お腹に手をあててゆっくりと深呼吸します。
②肩の体操
肩をゆっくり上げて、ストンと落とします。
そして、両手を頭の上にあげ、ゆっくりとおろします。
2回ずつやってみましょう。
③首の体操
首をゆっくり前後や左右に倒しましょう。
そして、ゆっくり大きく回旋しましょう。
④口の体操
大きく口を明け「アー」閉じて「ンー」
と「イー」と「ウー」の口の形をします。
⑤頬の体操
頬をふくらませたり、すぼめたり
しましょう。(アップップ)
⑥舌の運動
舌を前後や左右に動かしましょう。
舌の先で左右の頬の内側や唇の内側を2、3回押しましょう。
最後にグルリと頬と唇の内側を右回り・左回りに2周します。
⑦発声練習
パタカラやララリリルルレレ
ロロを繰り返しましょう。
⑧咳ばらい
胸を軽く押しながら、エヘンと咳ばらいをしましょう。
ごっくんちょでインターネット検索
ごっくん体操は、ごっくんちょ研究会大石善也先生作を参考に作成しました。
参考資料:「ごっくんちょ」
食前の習慣にすると、高齢者に多い『窒息の予防』にもなります。