モアノー探偵事務所 第10話 2/4
その屋上には純平と岡本がいた。
昨日の午後、間もなく学校が終わる時間に純平は家路に急いでいた。
そこでまた岡本と出会ってしまったのだ。
純平は勇気を奮い起こした。
ちょっと話したいことがあるんだ。と切り出した。
岡本は身構えた。
何の話だよ?
ここでは話せないよ。と純平が言うと岡本はちょっと考えていたが、純平の後方のビルを指さした。
グレックビル。 非常階段から屋上に登れる。 明日の朝6時でどうだ。
それは純平が人に会うのに使いたい場所でも時間でもなかった。
しかし、純平は考え直した。
“腹を割って話せるかもしれない”
わかった。 一人で来いよ。
純平はケンちゃんに話すことも考えた。しかし、一人でこいと言っておいて、自分が誰か連れていくわけにはいかない。 と決断したのだ。
6時少し前、純平はグレックビルの下についた。
下には誰もいなかった。 純平は注意深く非常階段を登りだした。 建物は結構高かった。 階段を登り切ったところに金属の扉があった。ノブを回すと扉は開いた。
屋上に出てみると夜は明けていた。
日の出の時間にはなっていなかったが周辺の雲はピンク色にそまっていた。
屋上のフェンスは2重になっていた。純平はゆっくりフェンスに沿って歩いてみた。
一周したところにコンクリの箱のような建物が見えて危険の文字が壁にあった。
その横から岡本が出てきた。 そしてその後から西山ともう一人も。
「一人でって言ったのに」と純平はつぶやいた。
こうやって見ると岡本は小柄だった。初めて気がついた。純平は頭ひとつ背が高かった。
チュン太の仲間やカラスは3人の後方の離れたフェンスにとまった。
一人でって言ったじゃないか。
僕の護衛さ と岡本は平然と言った。
純平は西山を前にどう話をしようと思いめぐらしていると、
話ってなんだよ? と岡本が切り出した。
純平は口を開いて、閉じて、それから言い出した。
復活祭にドイツから友達が来るんだ。よかったら来ないか?
ドイツ人かよ?
うん、でも英語で大丈夫だよ。
英語? 純平から英語という言葉が出た途端、何か熱いものが岡本の体を走った。
それは体のアチコチで破裂した後、獣じみた“うなり“になって岡本の口から沸き上がった。
鳥たちは一斉に飛び立った。
叫びながら岡本は純平に突進して行った。