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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

M:I:Ⅲ

2009-07-12 18:06:19 | 映画(ま)
評価点:79点/2006年/アメリカ

監督:J・J・エイブラムス

安定感抜群のエンターテイメント大作。

イーサンは既に現役を引退、結婚をひかえ幸せの絶頂にあった。
婚約パーティーの席で電話がなる。
教え子のスパイが敵に捕まり、消息がわからなくなっている。
敵を捕らえるために、救助部隊を送りたいと出動要請が出る。
イーサンは戸惑いながらも、任務を受けることにする。
ベルリンの廃工場に向かったチームは、エージェントを救出するも、頭に仕掛けられた爆弾が爆発、死なせてしまう。
失敗を叱責されたイーサンは、犯人であるデイヴィアン(フィリップ・シーモア・ホフマン)を捕捉する計画を立てる。
超絶隠密作戦によりデイヴィアンを確保するも、護送中、敵の部隊に襲撃されデイヴィアンを奪われてしまう……。

人気シリーズの第三弾。
期待の新作だが、アメリカではそれほどヒットしなかったようだ。
僕としては待ちに待った作品であるので、たとえ「2」のような駄作であっても観に行かざるを得まい。

テレビシリーズの「スパイ大作戦」は再放送で何度か観た記憶がかすかにある程度だ。
思い入れのある人にはこの映画は酷評の的になるかもしれない。
純粋なトム・クルーズ主演のエンターテイメント作だと考えれば、十分に及第点をあげられる映画だと思う。
あの「スパイ大作戦」が! というような思いこみではなく、頭を空っぽにして楽しんで欲しい。

トムが嫌いだったらどうしようもないけどね。
 
▼以下はネタバレあり▼

ストーリーといい、アクションといい、ミッションの不可能さといい、本作がシリーズの中でも飛び抜けて面白いだろう。
そもそも、チーム内の人間が裏切るというのが好きじゃない僕としては、この映画は好感が持てる(「1」)。
また、アクションだけで特に不可能でもなかった「2」よりは、緊迫感があり、全体のバランスが取れているように思える。

冒頭、いきなり緊迫した状況からはじまる。
「お前の頭に爆弾をしかけた」
「ラビットフットはどこにある」
「言わないとこの女を殺すぞ」
観ている人間には当然なんのことだがわからない。
わかるのは、イーサンが非常に危ないことになっているということくらいだ。

この冒頭からいっきに時間が、イーサンと婚約者のジュリア(ミシェル・モナハン)とのパーティーへと戻される。
冒頭にいきなり緊迫感あるシーンを見せることによって、そのシーンへどのようにして接続されるのか、ということを観客に期待させるやりかただ。

本作の最大の特徴は、スパイの私生活を暴露したことにある。
今までなら行きずりの女との恋や情事はあったのものの、ここまで二重生活について詳細に語ってはいなかった。
今まではスパイという仕事や作戦に重きが置かれていたのに対し、本作ではスパイ個人、イーサン個人へスポットライトがあてられているのだ。
その意味で本作の評価は賛否両論に分かれるだろう。

また、「IMF」という組織の内部についてもを詳細に語っている点も「3」の特徴だ。
組織内部と私生活を語ってしまったことによって、変に人間味溢れる側面が強調され、イーサンの行動があまりにできすぎるため、かえって不自然な印象を受けるのはそのためだろう。
それまでは人間臭くないところが、何でもできることに妙に説得力を与えていたのだ。
何でも見せればよいということではないようである。

また、組織内部を明らかにしたおかげで組織に裏切り者がいる、ということが露骨に出てしまった。
それで真犯人が読めてしまった点も残念だ。
とはいえ、彼の取り巻く環境をつまびらかにしたことによって、感情移入しやすく、ドラマそのものの緊張感が出たことは確かだ。

しかも、アクション部分がよくできている。
ただ単に絶体絶命に陥るだけではなく、仲間を助けながら、銃を奪いにいきながら、時間に追われながら、といった二重三重のピンチを同時的に発生させている。
これによって、大きなストレスと解決されたカタルシスが、映画としてのメリハリをつくっている。

そして欠かせないのがユーモアだ。
バチカンに潜入する際のお馬鹿なスパイ活動と、
ハイテクすぎる技術とのギャップはスパイ映画が好きな観客にとっては、緊張の中にも笑いがあっておもしろい。
「そんなんできるかいな」と思いつつも、すべてが上手くいくその作戦にドキドキさせられるのだ。
このあたりの展開や笑いはさすが「スパイ大作戦」である。

残念なのは、「48時間」というタイムリミットの使い方が悪いということ。
これは「2」でもあったように、時間制限という枷をつくったわりには、それが発動されるのがあまりに遅い。
もっと早い時間帯に制限しないと、ほとんど意味がない。
しかも移動で46時間も使っている。
結局上映時間でその時間制限による緊迫感があるのは30分程度だ。
これではいかにももったいない。
しかもその作戦の具体的な部分は潜入しか見せていない。
時間的に仕方がなかったのは理解できるが、それにしても無駄な「48時間」だ。

また、冒頭のシーンに戻ってきたあとの展開もお粗末だ。
結局デイヴィアンのあの脅しは全く無意味だったのだ。
既にラビットフットは入手済みで、イーサンを恐怖に陥れるためだけに演出された「芝居」だったのだから。
じゃあ、冒頭に意味ありげにもってきた意味はなんなのだ?
映画のためだけの演出になっている点が拍子抜けだし、観客を愚弄しているようにさえ思えてしまう。
この点に関しては、映画としての評価を大きく下げたように思う。

しかも、デイヴィアンにしても黒幕のマスグレイブにしても、倒し方があまりにあっけない。
だから「やったった感」が極端に少なく、まだ何かあるかもしれないと逆に身構えたくなるほどだ。
「え? 自動車にひかれて死んだの?」というまったくもって期待はずれだ。
裏切り者のマスグレイブにおいては、看護婦の奥さんに殺されるなんて。
まるでシュワちゃんの「トゥルー・ライズ」のようだ。
途中で似たような橋も壊しているしね……。
あそこまで奥さんに「手伝わせる」ともうリアルさのかけらもない。
しかも最終的に組織の中まで連れてきているし。

全然隠していないじゃん。

僕としては嬉しかったのは、先にも書いたように、作戦を実行するメンバーの中に裏切り者がいなかったこと。
あまり味方同士で裏切る映画は好きではないからね。
また、オープニングの爆弾に火を付けるのも昔を思い出して嬉しかった。

単純に楽しむ分には申し分のない出来だ。
この際リアルさには目をつぶって楽しもう。

(2006/8/6執筆)

二度目をテレビでこの前観た。
二度観ても、十分鑑賞に堪えうる作品だった。
商業的にも優れた作品であるのだろう。


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