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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

M3GAN ミーガン(V)

2024-01-29 20:08:09 | 映画(ま)
評価点:75点/2022年/アメリカ/102分

監督:ジェラルド・ジョンストン

そらそうやな、という映画。

幼いケイディ(ヴァイオレット・マッグロウ)の両親は三人でスキーに出かけたとき、事故に遭い亡くなってしまった。
疎遠だった祖母に代わり、ジェマ(アリソン・ウィリアムズ)が彼女を引き取る。
彼女はおもちゃ開発に携わっていたが、うまくいっていなかった。
追い込まれていたジェマは、ケイディを引き取ったものの、彼女を持て余していたが、大学の頃に開発した自立型ロボットに光明を見いだした。
ミーガンと名付けられた子ども方のロボットは、自律的に相手の感情を理解して、寄り添うことができる、身体をもったまったく新しい「おもちゃ」だった。

公開前後から話題になった、ホラー映画。
トレーラーから想像できるそのまんまの展開で、残酷描写に注意する必要があるが、本当に一直線に話が進む。
そこそこおもしろいし、期待は絶対裏切らないので、この手の話が好きな人は、どうぞ、という感じだ。

▼以下はネタバレあり▼

AIが身体をもち、感覚をもったとしたらどうなるか?
こういう想像は、単なる絵空事ではなく、かなりリアリティをもって語られるようになってきた。
しかし、そのAIが自我を持って襲ってきたとしたら?
昔からこういう映画や物語は存在するが、この映画の希有なところは、しっかりとキャラクターや物語設定が立てられていることだ。

子どもとあまり接したことのないジェマは、いきなり姪を預かることになり戸惑う。
仕事一筋で、おもちゃオタクなのだから無理もない。
スマホに頼りたくなるし、いきなり両親を亡くした姪っ子にどう接していいいか、だれも分からないだろう。
その彼女が、ミーガンを開発し、ミーガンの変化に気づくことで、本当の親になっていく。
面倒くさくても、子どもに向き合わなければ人は育たないということに気づく。

一方で、その姪もいままで丁寧に育てられてきたにもかかわらず、突如両親を失ってしまう。
哀しみを誰かに伝えたくても、伯母さんはまったく相手にしてくれない。
自分の居場所はこの家にない、と感じたときミーガンが現れる。
当然ミーガンに惹かれていく。
人の形をしながら、人ではないという1.5列目のおもちゃは、彼女が最も求めていた何でも話せる相手になる。

しかし、そのミーガンの恐ろしさに気づいたとき、彼女もまた、人間として成長しようとする。

この映画は、このミーガンが登場するまでの設定を思いついた段階で勝利だった。
単なるおもちゃとしての存在ではなく、人間とは何か、友達とは何か、ということを考えさせるにふさわしい、必然的な展開だった。

だから物語は、人間そっくりなミーガンが、「機械」であることを改めて突きつける物語である。
あるいは、人間として振る舞いを忘れたケイディが人間になる物語である。
さらにいえば、いきなり大人から親であることを求められたジェマが、ミーガンを通して親になる物語である。

この結構(プロット)が見事だったので、話はぶれることなく進んでいく。
中盤以降の展開に、はっきり言えば驚きはない。
けれども、その驚きがない、ということが、この映画の完成度の高さを表しているだろう。
「そらそうなるよね」という展開は、私たちのあり方のある部分を見事に映し出す影になっている。

残酷描写が多用されるのに、なぜか少し心温まる展開になるのは、そういう理由だろう。

人間だったミーガンが、機械であることを意識させる演出も見事だ。
かわいらしい容姿が、ラストでジェマを襲ってくるとき、見事に「機械」であることをビジュアルで突きつけてくる。
死や血に一切の躊躇がないあたりも、人間としてはとうてい扱えない不自然さがある。

どう考えてもそうなるやろう、という展開が続くのだが、やはりそれでは物足りないと思うのがホラー映画だ。
中盤にいた男の子のような、「実は人間の方がやばい」というような一ひねりが欲しかった。
また、序盤でもっとケイディの苦しんでいる様子を端的に見せておけば良かった。
何でもないのに泣いている、それに気づかないジェマ、というような描写があれば、ミーガンへの愛着の強さがより印象付いただろう。
(ジェマよりの描写が多いから、「ケイディは何馬鹿なこといってんの! あいつは殺人鬼よ!」と思ってしまう)

まあ、これくらいのバランスがちょうど良いのかもしれないが。

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