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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

ただより高いモノはない。

2023-12-08 20:01:54 | 毎日コラム
最近、急に「授業料無償化」という話がニュースになっている。
始まりは、大阪府内の高校完全無償化だろう。
あるいは、北欧の国々がたびたび引き合いに出されて、日本も子育てに優しい国にするために、医療や教育にかかる経費を無料にするべきだという声が上がっていたことが素地にあったのだろう。
そして、多子世帯には、大学の授業料無償の話まで出てきた。

だが、その一方で、これが少子化対策としての本丸というよりは、選挙対策のポピュリズムを煽る政策であるということも理解しておかないといけない。
子育て世代の親としては、もちろんありがたい。
ただ、無料であることに直ちに飛びつくのはちょっと危険な香りがする。

大阪の授業料無償化は、「63万円までは大阪府が出す」「それ以上は学校側が負担しろ」というものだ。
有り体に言えば、「授業料は一律63万円にしなさい」という価格設定である。
それまで授業料が50万円でも、63万円にできるし、70万円要求していた学校は7万円分の経費の削減が迫られる。
これは経済的な観点から考えると、非常に危険だ。

ランチはすべて無料にする、けれども価格(原価)はこちらで決める。
そんなランチを食べたいかどうかだ。
それは、ランチの中身がどんどん劣化することを意味する。
なぜなら、先に価格が決まっているから、競争できるのは「コストを下げる」こと以外にないからだ。
同じ価格なら、より安く、より劣悪な教育を施すことが、私立の高校が「利益」を出す方法となるわけだ。

ただという言葉には必ず裏がある。
教育であっても、サービスであっても、物質的な商品であっても、それは「競争」という原理がはたらくことで向上する面がある。
他府県から人(学生)は集まるかもしれない。
だが、そこで行われている中身が、価格によって覆い隠されるとすれば、「教育ってなに?」となるだろう。


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