外国で一時的個人的無目的に暮らすということは

猫と酒とアルジャジーラな日々

料理本研究 イギリスパイとみそ汁

2012-03-17 14:59:22 | グルメ
羊飼いのパイ、残り少なし



料理本を読むのは私の趣味であるが、買うことはめったにない。だってお金がないんだもん。本屋で立ち読みするか、図書館で借りてくるかのどちらかである。

最近読んだ料理本は、「ミセス・ギフォードのイギリスパイとプディング」(ジェーン・ランザー・ギフォード著 文化出版局)である。
これは図書館で借りたものだ。この本はタイトルのとおり、イギリスのパイやプディング類のレシピ本である。「甘くないパイ」の章と、「甘いパイとプディング」の章の2つに分かれていて、前者では「豚肉とハムのパイ」、「羊飼いのパイ」、「ムール貝とかきとえびのスープパイ」などの塩味の料理が、後者では「レモン入り蒸しプディング」、「アップルパイ」、「ジンジャープディング」などのデザートやティータイム用のお菓子が紹介されている。写真を見ると、とても美味しそうだけど、どれも炭水化物とバターたっぷりで腹にたまりそう。そして作るのがたいへんそう。

私は子供の頃、うちの本棚に何冊かあった、イギリスの子供向けの本(主にファンタジー)を読みながら、話の中に登場する料理の名前の響きに憧れ、どんな食べ物なのか想像しながらうっとりしていた。例えば、「羊飼いのパイって、どんな味のパイかな? 羊飼いが中に入ってるとか? ああうっとり、おいしそう!」という具合に・・・というのは冗談ですがね。そんな子供いややし。

この本の著者であるミセス・ギフォードは、出版当時日本に住んでいて、駐日イギリス大使館でフード&ドリンクアドバイザーをしていたという。
この種の食べ物に対するイギリス人の思い入れの深さについて、彼女はまえがきで熱く語る。

「イギリスでは、パイとプディングに対しては特別な思い入れがあります。なぜかというと、イギリスの天候―とりわけ冬が、こういった温かくてエネルギーの出るような料理を要求するからです」
「キッチンに入ると、パイを焼くかぐわしいにおいが広がっている、それをかぐだけでイギリス人は言いようもない、理屈では説明できない懐かしさといとおしさにとらわれ、パイを一口かじるたびに、過ぎ去った日々のいろいろな思い出に浸るという誘惑にかられます」

そして日本の読者のために、彼女は補足説明している。

「同じような目的の、同じような食感と内容の日本の食べ物に、おにぎりとたこ焼きがあります」

おにぎりとたこ焼き!
パイ・プディング組と、おにぎり・たこ焼き組の間には、百万光年の距離がある
と思っていた私は、これを読んで少なからず仰天したが、彼女の言い分では、おにぎりやたこ焼きは「大量の炭水化物に少量のおかずがくるまれており、安価で腹持ちし、持ち運びも可能な伝統料理」だという点で、パイやプディングと似ているらしいのである。そういう見地からみると、確かに一理あるような気もしないでもない。でもどうだろう、日本人はおにぎりやたこ焼きにそこまでの思い入れを持っているだろうか。おにぎりなんてコンビニでも買えるから、ありがたみなんて全然ないし、たこ焼きにいたっては、地球上から消滅してしまっても、別段なんの問題もない。関西人にあるまじき発言かもしれないが・・・。

イギリス人にとってのパイ・プディングは、日本人にとっての何にあたるのか?

この命題に関して、自称料理本研究家の私は、しばし沈思黙考してみた。

・・・・・・チーン。(音が小さい)

素材や形状や食事における役割などを度外視して、純粋に「日本人一般に郷愁を呼び起こす、伝統的な家庭料理」という観点から考えると、それはみそ汁じゃないだろうか。
寒い冬の朝、いやいや布団から出て台所に行くと、みそ汁の鍋から湯気が上がっていて、いい匂いが漂っている。お母さんはこちらに背を向けて、まな板でトントンとなにか刻んでいる・・・これが日本人の郷愁の典型だと思うのだが、いかがだろうか。鍋物も近いように思うが、こちらだと冬季限定になってしまうのが惜しいところだ。
なにかもっと適切な答えを思いついた方は、ぜひコメントを入れて下さいね。参考にしますから。(なんの?)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ラジオスペイン語講座礼賛 | トップ | ルーチョ・ダッラ追悼 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

グルメ」カテゴリの最新記事