嬉々是好日 L`Atelier de Megummy since2000

行く先々でMIX犬疑惑を掛けられているビーグルならぬ、ぴーくる姉妹との徒然や、常が旅の途中な日々を綴っている備忘録

宮本常一

2007-09-17 | megummy's
購入して、そのままになっていた宮本常一の「民俗学の旅」を
読んで休日を過ごす中…。

その本の内容は、自叙伝的な部分も多いのだけれども。宮本常一の
人柄が良く出た一冊で、とっても感動している。
民俗学者って、フィールドワークも去ることながら、人との関係性
やら土地への関心やら、独特の感性で関わるそのスタンスが何とも
言えず面白いなぁ~と思うんだけれども。

この宮本常一という人は、学問の編纂以前に土地に対する愛着や
血脈への思いが優っていた人なんだろうなぁ~と、読み進むうちに
民俗学というよりも日本古来の家族の形が垣間見えて感動した。

父に言われた言葉を書き綴った一節で。

①汽車へ乗ったら窓から外をよく見よ、田や畑に何が植えられているか、
育ちがよいか悪いか、村の家が大きいか小さいか、瓦屋根か草葺か、
そういうこともよく見ることだ。駅へついたら人の乗り降りに注意せよ、
そしてどういう服装をしているかに気をつけよ。また、駅の荷物置き場に
どういう荷が置かれているかをよく見よ。そういうことでその土地が富んで
いるか貧しいか、よく働くところかそうでないところかよくわかる。

②村でも町でも新しくたずねていったらところはかならず高いところへ
上がってみよ、そして方向を知り、目立つものを見よ。峠の上で村を
見おろすようなことがあったら、お宮の森やお寺や目につくものをまず
見、家のあり方や田畑のあり方を見、周囲の山々を見ておけ、そして山
の上で目をひいたものがあったら、そこへはかならずいって見ることだ。

③金があったら、その土地の名物や料理はたべておくのがよい。
その土地の暮らしの高さがわかるものだ。

④時間のゆとりがあったら、できるだけ歩いてみることだ。いろいろの
ことを教えられる。

⑤金というものはもうけるのはそんなにむつかしくない。
しかし使うのがむつかしい。それだけは忘れぬように。

⑥私はおまえを思うように勉強させてやることができない。だからおまえに
は何も注文はない。すきなようにやってくれ。しかし身体は大切にせよ。
三十歳まではお前を勘当したつもりでいる。しかし三十すぎたら親のある
ことを思い出せ。

⑦ただし病気になったり、自分で解決のつかないようなことがあったら、
郷里へ戻ってこい。親はいつでも待っている。

⑧これからさきは子が親に孝行する時代ではない。親が子に孝行する
時代だ。そうしないと世の中はよくならぬ。

⑨自分でよいと思ったことはやってみよ、それで失敗したからといって
親は責めはしない。

⑩人の見のこしたものを見るようにせよ。その中にいつも大事なものが
あるはずだ。あせることはない。自分のえらんだ道をしっかり歩いていく
ことだ。

こういう生き方の教訓って昔は当たり前だったんだろうなぁ~と思うと、
こんなごく当たり前のことが忘れられてしまっている今って危ういんだ
なって感じる。親が子へこんな風に伝えていたことって教育という括り
じゃなく生き方そのものなんだよね。

民俗学って人の生き方も伝承していく学問なんだなぁ~と。
久々に感動した1冊でした。