在京のどのプロオケより遅く東京シティ・フィルの来年度プログラムが発表された。このオケの場合、タケミツメモリアルホールで開催される定期が9回とティアラこうとうで開催される定期が4回なので、年間たった13回しか定期演奏会がない。しかし毎年決して集客目的の名曲の羅列に終わらず、多彩な曲目で組み立てられており、年季の入ったファンには大いに魅力的である。このあたり首席指揮者高関健の選定眼を強く感じさせる。更に指揮者にもソリストにも「外人」の名前はほぼ見当たらず、日本人を並べるのは逆に「壮観」でさえある。このあたりは、財政上の都合が大きく影響しているとは思うが、人選に間違えがあった試しはない。さて次年度を見渡してまず気づいたのは、二曲の大曲が最近10年来の定期で二度目の登場だということだ。10月のスメタナ作曲連作交響詩「我が祖国」は、2015年4月の定期で高関が首席指揮者として初めて定期で披露した曲だ。今回は生誕200周年であえて取り上げたのだと思うが、その時の演奏は楽団史に残る名演だった。そのコンビが10年目を迎えてどんな成長を聴かせてくれるか、あれ以上の名演があり得るのか。これは本当に楽しみである。もう一つは9月の、これも生誕200周年のブルックナーの交響曲第8番ハ短調だ。これは2020年8月の定期に登場したばかりである。とは言えこの時はコロナ禍で各オケが小編成での舞台演奏を再開する中、あえて万全な対策を講じつつ演奏会形式「トスカ」の代替え公演として演奏されたという云くがある。この時はハース校訂による原典版が使用されたが、今回は最新の研究成果に基づくホークショー校訂の第一稿による演奏だということだ。「初稿」による演奏となれば、2020年とは明らかに異なる音になる筈である。誠にマニアックな高関らしい選曲ではないか。その他、5月の藤岡幸夫によるヴォーン・ウイリアムスの交響曲第2番「ロンドン」や翌年3月の高関によるヴェルディのレクイエムは、コロナ禍による中止のリヴェンジ公演だ。11月にはこのオケには珍しい小林研一郎が登場してチェイコの4番&6番というのも彼らしいが、飯守翁でないのがなんとも口惜しい。1月の高関によるマーラー7番は、昨年8月のサントリー音楽賞受賞公演のアンコールだ。ティアラこうとう定期に目を向け得ると、11月の藤岡と上原彩子によるプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番も魅力的だし、3月の高関によるチャイコフスキーのバレエ「くるみ割り人形」第二幕全曲なんていうのも、あの真面目な高関がどう振るか実に楽しそうではないか。そんな訳で今年も9度目の継続を決めました。
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