何とこの日生劇場にヴェルディのオペラがかかるのは1970年のベルリン・ドイツ・オペラの「ファルスタッフ」以来53年振りだというから驚きだ。どうして「オペラ劇場」として誕生した日生はそんなにヴェルディを遠ざけていたのだろう。まあそれはともかくとして、このヴェルディ初期の名作は何と言ってもマクベス夫人に人を得ないと形にならない。そうした意味で、今回二日目に夫人を歌った岡田昌子は歌唱的にも演劇的にも十二分に説得力のある出来だったと言って良いだろう。前半で気弱な夫マクベスを鼓舞する場面の強烈な歌でも決して汚く響くことはなくニュアンスも十分、そして後半の狂乱的な場面での虚な歌、そして演技も見事に決まった。一方マクベス役の大沼透も独立したアリアは一曲しかないものの苦悩の王をよく描いた。バンクオー役の妻屋秀和もいつもながらの安定的な立派な歌唱で安心させた。マルコムの役は新進テノールの品定め的な役柄でもあり、1985年のザルツブルグ音楽祭での市原多朗の名唱が語り草になっているが、この日の高畠伸吾は歌唱がいささか硬くて残念だった。沼尻竜典と読売日響は、迫力はありつつ決して歌唱を遮ることのない職人的なピットだった。一方大きな動きを求められつつ歌ったC.ヴィレッジシンガーズの合唱はなかなかの苦戦を強いられた。粟国淳の演出は幻想的な場面をも求められるこの作品を要領よく上手く纏めていたと思うが、いささか暗い場が続きすぎて変化に乏しかったという印象だ。更に100%紗幕越しというのも観る方としてはストレスが多かった。とは言いつつも岡田昌子の絶唱によって忘れ難い舞台になったというのも事実である。
goo blog お知らせ
プロフィール
ログイン
最新コメント
ブックマーク
カレンダー
goo blog おすすめ
最新記事
- ブログの引越しについて
- アーリドラーテ歌劇団「エルナーニ」(2025年7月6日)
- 紀尾井ホール室内管第143回定期(2025年7月4日)
- 東京シティ・フィル第380回定期(2025年7月6日)
- 京都市響第15回名古屋公演(2025年6月26日)
- 山響さくらんぼコンサート2025(2025年6月19日)
- 都響プロムナードコンサートNo.412(2025年6月15日)
- 東京交響楽団第101回川崎定期(2025年6月7日)
- 東京シティ・フィル第379回定期(2025年6月6日)
- ボヘミアン・フィルハーモニック第10回記念演奏会(2025年5月31日)
- 新国「セビリアの理髪師」(2025年5月28日)
- 東響名曲全集(2025年5月17日)
- グリーンコンサート(2025年5月6日)
- 日本フィル「オペラの旅」(2025年4月27日)
- 藤原歌劇団「ロメオとジュリエット」(2025年4月26日)
- 東京シティ・フィル第81回ティアラこうとう定期(2025年4月12日)
- 山下裕賀&小堀勇介&池内 響 with 矢野雄太 ~ Baccanale!! ~(2025年4月6日)
- 東響第729回定期(2025年4月5日)
- 東響第99回川崎定期(2025年3月31日)
- コンサート・ホール・ソサエティのこと