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NissayOpera「マクベス」(11月12日)

2023年11月13日 | オペラ
何とこの日生劇場にヴェルディのオペラがかかるのは1970年のベルリン・ドイツ・オペラの「ファルスタッフ」以来53年振りだというから驚きだ。どうして「オペラ劇場」として誕生した日生はそんなにヴェルディを遠ざけていたのだろう。まあそれはともかくとして、このヴェルディ初期の名作は何と言ってもマクベス夫人に人を得ないと形にならない。そうした意味で、今回二日目に夫人を歌った岡田昌子は歌唱的にも演劇的にも十二分に説得力のある出来だったと言って良いだろう。前半で気弱な夫マクベスを鼓舞する場面の強烈な歌でも決して汚く響くことはなくニュアンスも十分、そして後半の狂乱的な場面での虚な歌、そして演技も見事に決まった。一方マクベス役の大沼透も独立したアリアは一曲しかないものの、苦悩の王をよく描いた。バンクオー役の妻屋秀和もいつもながらの安定的な立派な歌唱で安心させた。マルコムの役は新進テノールの品定め的な役柄でもあり、1985年のザルツブルグ音楽祭での市原多朗の名唱が語り草になっているが、この日の高畠伸吾は歌唱がいささか硬くて残念だった。沼尻竜典と読売日響は、迫力はありつつ決して歌唱を遮ることのない職人的なピットだった。一方大きな動きを求められつつ歌ったC.ヴィレッジシンガーズの合唱はなかなかの苦戦を強いられた。粟国淳の演出は幻想的な場面をも求められるこの作品を要領よく上手く纏めていたと思うが、いささか暗い場が続きすぎて変化に乏しかったという印象だ。更に100%紗幕越しというのも観る方としてはストレスが多かった。とは言いつつも、岡田昌子の絶唱によって忘れ難い舞台になったというのも事実である。

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