Nissay Operaのロジーナに感心して、メゾ・ソプラノの山下裕賀を追っかけて渋谷の文化総合センターにある伝承ホールにやって来た。Vivid Opera Tokyoという若手歌手で構成されたオペラユニットによるロッシーニのオペラ「アルジェのイタリア女」の公演である。ムスタファ後藤春馬、イザベッラ山下裕賀、リンドーロ岸野裕貴、エルヴィーラ別府美沙子、ズルマ実川裕紀、タッディーオ塙翔平という配役は、元気がはち切れんばかりの爽やかな歌役者達で、彼らの作り出す生き生きとした舞台は誠にこのロッシーニの傑作ブッファに相応しいものだった。歌唱で突出していたのは、山下と後藤だったが、これは経験の差というものか。日本語脚本も手がける塙もなかなか良い味を出していた。ギャング集団「アルジェ」の事務所を舞台にした太田麻衣子の演出は機知に富んでいて、一瞬たりとも飽きさせることがない。そして、どこをとってもロッシーニの響きをピアノ一つで作り出した青木ゆりの伴奏も傑出しており、指揮の谷本喜基の作り出す果てしないロッシーニ・クレッシェンドに血湧き肉踊り、音楽の悦楽を心いっぱい堪能した至福の時間だった。さしずめこの晩は、渋谷の伝承ホールがPesaroのTeatro Rossiniに変身したようであったと言ったら言い過ぎだろうか・・・・
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