音楽監督ジョナサン・ノットの指揮で、まずはシェーンベルクの「5つの管弦楽曲作品16」。無調の作品で、それぞれ数分の5つのピースには〈予感〉/〈過ぎ去りしこと〉/〈色彩〉/〈急転回〉/〈オブリガード・レチタティーヴォ〉という表題が与えられているのだが、どれも私のような凡人にはイメージさえ湧かずに決して聞きやすい曲ではない。ゆえに正直のところ微睡を誘う15分だった。続く弟子筋にあたるウエーベルンの「パッサカリア作品1」は調性を感じることのできる小品で、師匠の前曲よりも相当に聞きやすい佳作だ。ここではノットの作り出すメリハリある美しい流れが作品を引き立てた。休憩を挟んでブルックナーの交響曲第2番ハ短調。今回はノヴァーク版第2稿(1877)使用とアナウンスされていたが、ノットの強い意向で初稿(1872)に準じた楽章順で演奏されるというビラがプログラムに挿入されていた。つまりは一楽章(モデラート)、ニ楽章(スケルッツオ)、三楽章(アンダンテ)、四楽章(フィナーレ)と、ベートーヴェンの第九のような速度感というわけだ。その他基本的に第2稿を採用しつつも、主観的に良いと判断される部分は初稿を参照したということだ。演奏の方は、伝統的な堅固に聳り立つブルックナーとは異なり、スピード感ある流れが際立つ緩急自在の快演と表現したら良いだろう。楽章を追うごとにノットは熱を帯び、終楽章に至ってその気迫は最高潮に達した。そのノットに冷静に追従しつつ、決して爆炎にならず、しかし熱量の極めて多い感動的な演奏を繰り広げたこの日の東響は素晴らしいの一語に尽きる。まさに21年間に渡る深い信頼に基づく「絆」のなせる技であろう。
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