今月号のおはよう21は京都北部丹後スペシャルです。老健ふくじゅ、大宮苑、長寿苑が出ています。おすすめですのでぜひ手に取ってみてください。わたしの記事はこんなことを書いてます。
フロフェッショナルになろう!!
いま、介護現場では多くの施設が個浴を導入しています。個浴ケアがうまくいって「利用者さんに喜んでもらえた!」「元気になってもらえた!」という声を聞く一方、「個浴があまりうまく使えていません」という施設も多いようです。この違いは何でしょうか。私はいくつかの施設でリハビリアドバイスをしているのですが、その経験から、うまくいっている施設、うまくいってない施設の違いが少しずつわかってきたように思います。本特集では、その秘密を大公開しましょう。
「入浴は苦手だな~」って思っている方、難しいのは当然です。入浴は生活動作の中で一番難しく、奥が深いのです。この永遠のテーマ『入浴ケア』を極めて、入浴のプロ、人呼んでフロフェッショナルになろうではありませんか!どうぞ、楽しみながら読んでみてください!
入浴は何のため?「はい、清潔のためです」???
介護施設で「入浴ってなんのためにするのでしょう?」と質問をすると、新人職員から「ハイ!清潔のためです」と返ってきました。「清潔のため?それじゃ、べつに浴槽につからなくても、シャワーでもいいよね。シャワーですましちゃいましょうか?」と言うと、「いや、シャワーではお風呂に入った気がしないと思うんですよね~」と困った顔。そうなんです。人はお湯につかってはじめてお風呂に入ったという気分になるはずです。欧米ではシャワーが主流ですから、日本の入浴ケアは外国のそれとは一線を画します。なぜ日本人は独特な入浴文化をもっているのでしょうか?
日本人とお風呂の深~い関係
我々日本人はお湯に肩までつかる独特の入浴文化をもっています。日本でこれほどまでに入浴の習慣が根づいている背景はなんなのでしょう?まず頭に思い浮かぶのは日本人の温泉好きです。日本には活火山が多く、温泉があちこちにあります。日本書紀にも温泉の神が登場するぐらい、温泉につかることは古来から身近な習慣であったようです。また我々は、各家庭にお風呂を持ち、たっぷりお湯を張って毎日入浴しています。これは日本が水の豊かな国だからだと思います。日本は昔から水と安全はタダだといわれてきました。浴槽に身体を沈めて、ザーッとお湯を豪快にこぼす、なんてぜいたくができるのも、自然の恵みのおかげなのです。
あと日本には厳しく、そして美しい四季が巡ってきます。じめっとした梅雨、茹(う)だるような猛暑、凍えてかじかむ冬、我々は季節に合わせた入浴文化を発展させてきたのでしょう。仕事が終わって、ひとっ風呂浴びて、疲れを癒す。湯船で一日の反省をして、明日への活力にする人、歌手になってストレスを発散する人etc・・・。他人には見せない時間ですね。我々ケアスタッフはその超プライベート空間に踏み込むわけですから、心して入浴介助に向き合わなければならないのです。
病気をしたら奪われる生活習慣
今まで当たり前のように行ってきた入浴の習慣が突然奪われてしまう人がいます。そう、病気をして身体に障害が残った人です。特別浴槽(特浴)という名の機械浴が待ち構えています。僕はあれをお風呂とは言わず、『てんぷら揚げ機』と呼んでます(笑)。想像してみてください。真っ裸にされて、ストレッチャーに寝かせられ、上から見下ろされて、ウィーンジャブジャブとお湯につけられる自分の姿を・・・。お風呂はいままで自分だけの大切な時間、プライベート空間であったものが、それとは似ても似つかない身体洗浄の時間に変わってしまうのです。機械に持ち上げられて入浴しているとき、どんな気持ちがするでしょう?中にはこう思う人がいるはずです。「もうワシは病気したから、こんなお風呂にしか入れないのだな。もう贅沢な望みは捨てよう・・・」
それとは反対に、病気をしても浴槽に肩までつかって気持ちいい入浴ができたらどうでしょう?「おっ、病気してもこんないい風呂に入れたぞ。今度温泉旅行にでも行こうかな」
もう人生の望みは捨てようと思うのか、また旅行に行こうと思うのか、運命の分かれ道。入浴ケアひとつでここまで気持ちが変わってしまうのが介護のすごいところでもあり、怖いところでもあります。
(わかれ道の図)雑誌をみていただくと小さいけどわかりやすい、『運命の分かれ道』のシーンをイラストレーターさんが書いてくれています。
入浴ケアを見直そう!
入浴は単に清潔のためのみならず、人の元気を左右するものであることがわかっていただけたと思います。そう考えると、なにげなく行っていた入浴に対する意識が、明日から大きく変わってくるのではないでしょうか?
お風呂の入り方
障害のない人は、お風呂に入る時、普通、浴槽縁を持ちながら、片足立ちになって、またいで入ります。
これは、要介護状態の人にはとても難易度の高い動作です。入浴は危険だからと機械に頼ったり、清拭で済ませたりすることになります。個浴が介護の現場でこれほど受け入れられた背景には、要介護者が奪われてしまった『入浴』をもう一度、ケアの力で取り戻す、そんなムーブメントが起こったからだと思います。環境設定と介助技術があれば、もう一度、要介護状態の人にも「肩までつかるお風呂」を取り戻すことが可能なのです。
個浴を導入しても、心地よいと思っていただける介助ができていなければ、満足のいく入浴にはなりません。ここでは、個浴の入浴介助を改めて見直します。
基本的な個浴の入浴介助 手順と介助のポイント
掲載記事では以下の写真をもとにイラストでわかりやすくなっております。ぜひ手に取ってみてください。(写真 京丹後市大宮苑 モデル吉岡君)
まずは、大前提となる基本的な個浴の入浴介助について解説します。
出入りの手順
①浴槽の縁に置いたシャワーチェアに座る
ポイント
座位が安定するよう浴槽縁をしっかり持ってもらう。不安定なら適した位置に浴槽手すりを設置する。
マヒがある場合は、健側から入れるようにする。
②片足ずつ浴槽に入れる
ポイント
後方に倒れないように介助者は肩に手を回し、身体を支える。身体を後方に倒すことで、股関節が固い人でも浴槽をまたぐことができる。そのため腰かけは背もたれのない物がよい。
③ゆっくり臀部を前方に移動
ポイント
足がつくまで前方に移動する。足が浴槽の底につくまで要介護者は不安を感じるので注意。安心できる声かけをする。不安定なら背中側から介護者が臀部(大転子)を持って身体を支える 。
④ゆっくりお湯に入っていく
ポイント
右手で反対側の浴槽縁をつかむと安定して入りやすい。
⑤浴槽内で安定してお湯につかれるように配慮する
ポイント
浴槽の角にもたれる。入浴台を縦にして沈め、足のつっぱり台として使用
浴槽から出る
⑥姿勢づくり
足を身体にひきつける。浴槽縁、あるいは浴槽手すりを握って、前かがみ姿勢をとる。
ポイント
マヒのある場合、健側(この場合右足)だけ曲げて、足をひきつける。
⑦立ち上がり
ポイント
浮力が働きお尻が浮く。力が足りない場合、後方から支えて臀部を前方に押す(引き上げるように介助しない。腰を痛めます)。
⑧いすに腰かける
ポイント
浴槽に入った時よりやや前方に腰かけを設置するとスムーズに腰かけやすい。
⑨片方ずつ足を浴槽から抜く
ポイント
後方に倒れないように背中をしっかり支える。左足、右足の順番で足を浴槽から出す。
入浴介助Q&A
ここからは、多くの施設がかかえている個浴の入浴介助の悩みについて、お答えしていきます。
Q1個浴で一度すべり落ちかけて、怖い思いをさせてしまいました。入浴にお誘いすると「怖い怖い」を連発し、入ってもらえなくなった人がいます。恐怖心を与えないように入浴してもらうには、どうしたらいいでしょうか?
A運動学と解剖学に適った介助を心掛ける
お風呂は生活動作の中で一番難しい動作です。なぜなら、車いすで生活している人のほとんどが普段の生活の中で、「床にお尻がつく姿勢」をとることはありません。唯一、浴槽に入っている時のみ、お尻がゼロレベルで床につくのです。ただでさえ、すべりやすい中で、浴槽に出入りする、という難しい動作を行わなければなりません。多くの人はそれに恐怖感を覚えるのです。安心して入ってもらうために、介助者も知識と技術が必要なのです。
介護に役立つ運動学
入浴で浴槽から立ち上がる動作は大変難しいものです。ここでは運動学を理解し、床からの立ち上がりを上手におこなえるようにしましょう。立ち上がりの3条件を知っていますか?
人は立ち上がり動作を行う際、3条件が必要です。
立ち上がりの3条件
1、前かがみ
2、足を引く
3、適したイスの高さ
普段の立ち上がり動作を介助するときに、この3条件を大切にすると見違えるように立てる人がいます。ただ入浴時は図のようにお尻が地面についています。これは条件の3、適したイスの高さ が奪われてしまった状態です。ですから、この時は残りの2条件をいつも以上に意識して、しっかり前かがみ、しっかり足を引く、という姿勢づくりが大切になります。お湯の中で助けてくれる力があります。さてなんでしょう?そう!浮力です。浮力を味方にするとお尻が浮いてきて、案外簡単に立ち上がり動作が実現します。
介護に役立つ解剖学
さて、立ち上がりを支える時に、身体のどこを持てばいいでしょう。利用者は裸なので介助するときにズボンの後ろを持って、引っ張り上げることはできません(普段からズボンの後ろを引っ張っている人は、お風呂介助が下手です。引っ張らない介助を覚えてください!)
後方から大転子を両手で支えると安定して介助できます。またお尻を浴槽縁に持ち上げるときは、坐骨結節を手の平で支えます。
このように支えやすい解剖学上のポイントを知っておくと介助が上手になります。
まずは自分たちで練習を!
想像してみて下さい。自分がお風呂に入れられるときに、アナタの担当職員がこわごわと介助していたらどう思いますか?「怖い!今日はやめとく」と、逃げ出したくなるでしょう。そうではなく「大丈夫!大船に乗った気持ちで入ってください!」と言えるように腕を磨く必要があるのです。
まずは入ってもらう利用者を想定して職員同士で練習をしましょう。右半身にマヒがある、とか膝の関節が固くなっている、など事前に身体評価をおこない、環境を合わせます。すべり止めマット、バスアームなど、福祉用具も設置します。また入ってもらった時に小柄な方は浴槽内で不安定になるため姿勢の安定方法を考えます。写真は浴槽台を沈めて、足が突っ張れるようにしているところ。
怖がっている方にも「大丈夫!大船に乗った気持ちで入ってください!」と言えるようにみんなで練習をしてください。
フロフェッショナルの条件 その一 運動学・解剖学を知り、介助技術を磨こう!
Q2 個浴がありますが、職員も利用者も機械浴に慣れてしまっていて、個浴はほとんど使用していません…。
A2 身体機能をみて判断できるようになりましょう
機械浴か個浴か?見極める方法
アナタの施設ではみんなが機械浴に慣れてしまっているようですね。利用者さんが個浴での入浴が可能かどうか、身体機能をみて判断できるようになりましょう。個浴に入れる人を何の疑問もなく機械浴に入れていませんか?冒頭に書いたとおり、「こんな機械の風呂にしか入れないのか・・・」とあきらめの気持ちになり、元気を失ってしまう人もいます。情報カルテに、「要介護5、車いす使用」と記載があれば、機械浴対応、とすぐに決めてませんか?しかし、介護度や病名ではなく、その人の身体機能を丁寧に確認していくことが大切です。四肢麻痺といっても、「完全麻痺」なのか「不全麻痺」なのかで身体の動きは全く違います。また、四肢に麻痺があっても、体幹の筋肉(腹筋や背筋)が残存している場合もあります。確認項目としては、しっかり座位ができるか、お湯の中で身体を支える程度の下肢筋力があるか?股関節、膝関節などに極端な関節拘縮はないか?などをみるとよいでしょう。
入浴の身体機能チェック
1座位保持の能力(体幹の筋力、立ち直り反応の有無)
2上肢・下肢の筋力 (とくに浴槽で身体を支える下肢筋力)
3関節の可動域(とくに股・膝関節)
4疾患の諸注意(左右の麻痺、人工関節の脱臼肢位など)
これらをチェックし、どういった介助法が適切かを考えていきます。
「こうすれば入れる」そんな環境設定を!
身体機能を見極めることが出来れば、次にそれに合わせた環境設定と介助のポイントを決めます。具体的には腰掛けや入浴台の位置、出入りの方向などを検討します。その行程でどこを手伝えば安全に入浴できるかを考えます。こうして身体機能を見極め、適した環境を手づくりしていくのもフロフェッショナルの大切な心得です。
フロフェッショナルの条件 その二:日常生活から入浴動作を思い描くことができる
Q3個浴に対する職員の考え方がバラバラです。「個浴に入浴してもらいたい」という考えの職員もいれば、「時間がないから無理」と言う職員もいます。どうしたらいいでしょうか?
A3、意見が割れたらもうオシマイ、じゃありません!
ケアを巡って職員間で意見が割れることはよくあります。一度意見が割れてしまうと「もうあの人とは話したくない!」そんな風に人間関係に溝ができてしまうこともしばしば。でもそれではモッタイナイ!「意見が割れたらもうオシマイ」ではなく、そこから話し合ってケアを深めていけばいいのです。そんな時、私がおススメするのは「ケアの3原則」を職員間で共有し、いつもそこに立ち返るということです。
ケアの3原則
1寝たきりにしない、させない
2主体性・個性を引き出す
3生活習慣を大切にする
高口光子 「リーダーのためのケア技術論」 関西看護出版より
この原則は我々ケアスタッフが仕事の目的を見失いそうになったら、立ち返るべき羅針盤のようなものです。ぜひ職場で広めていってください。たとえば会議で「○○さんは機械浴で対応していきましょう」と決まりかけた時に「ちょっと待ってください。ケアの3原則に寝たきりにしないさせない、とあります。機械浴は、利用者さんを寝たきりにしています。できるだけ個浴で入ってもらうようにしませんか?」と提案しましょう。そこで、もう一人の仲間が
「そうそう、ケアの三原則に生活習慣を大切にする、とあるけど、機械で上下するお風呂が生活習慣だった人はいないよね。なんとか肩までつかる入浴をさせてあげたいね」
このように話し合うことで少しずつ職員の感じ方が変わってくるはずです。「あれ、今までの介護はなんか違ったみたい・・・。」こんな風になれば、個浴が使われる頻度は必ず増えていくと思います。
チームで成功体験を共有しよう!
成功体験を共有しているチームは強いです。みんなで考えて、話し合って、実行したケアはありますか?元気にした利用者さんがあれば、悩んだときにその経験に立ち返ることができます。「あの人のとき、こうしたら喜んでもらえた。元気になった。今回もあの時みたいにやってみようよ!」そういうチームはどんどん経験が蓄積され、成長していきます。ぜひ、そんなケースがたくさん持てるようにチームで頑張ってみて下さい。
フロフェッショナルの条件 その三、現場で話し合い、成功体験を共有する
Q4.個浴の介助がうまくできずに、2人介助で持ち上げておこなっています。よく本などで「個浴の介助法」が紹介されていますが、全然できません。「あれは理想だけど、ムリよね~」と職員同士で言っています。
A4.普段のケアを大切に!
先に述べたように入浴動作はとても難易度の高い動作です。普段の介護が入浴の場面で問われているのです。「個浴を導入したが、うまくいっていない」という施設は、やはり普段のケアに問題があるように思います。いかに利用者の残っている力を引き出しているか?運動学に適った動作を基本に介助しているか?そこをすっ飛ばして、お風呂に入ってもらおうとするからうまくいかないのです。
入浴がうまくいっている施設は、ベッドからの移乗、トイレへの移乗、食事姿勢の環境設定などに配慮し、日々の生活のなかで残っている力を大切にしたケアが行われています。座位保持や立ち上がり動作など、日常の動作でいつもやっていると浴槽でも自然に身体が動きます。そう、勝負は入浴前についているのです。もし、アナタの施設で個浴の介助がうまくいかないと嘆いているなら、お風呂の前に、そもそも普段のケアがどうなのかを見直してみてください。
フロフェッショナルの条件その四 ふだんのケアを大切にする ~勝負は入浴前についている!~
Q5個浴にするメリットがわかりません。うちの施設では食事、排泄をはじめ、日々の業務にてんてこまいしています。時間をかけて入浴をする余裕がないです。それでも個浴にした方がいいんでしょうか?
A5 そんな施設に個浴が必要なのです
個浴のメリットはとにかく、ゆっくりと時間を過ごし、リラックスした入浴ができることです。バタバタで余裕がない!といっているアナタの施設のようなところで、とくに導入してほしいのです。個浴は一人の職員が一人の利用者の入浴にマンツーマンで対応するのが基本です。それに対して、効率だけを考えている施設は、誘導係が利用者を浴室前に並べて、着替え係が衣類を脱がせて、洗髪係がシャンプーをする・・・。ベルトコンベアじゃないんだから、流れ作業の介護はやめましょう。プライベートな空間を大切にし、一日の疲れを癒す、そんな日課を取り戻すべきではありませんか?個浴の導入の意義は、効率優先で分担作業化した状態をもう一度見直し、シフトを組み直すという側面もあります。だから、個浴を実施しているけれど流れ作業をしている、という施設も見直しが必要です!
職員サイドの都合でスケジュールが決められ、本人さんの主体性や個性(前掲:ケアの3原則 2,主体性・個性を引き出す、がありましたね)がないがしろになってませんか?本人さんがいままでどんな仕事をして、どんな時間帯に、どんなお風呂に入ってきたか?そんな視点が抜け落ちていることが多いのです。ぜひ自宅のお風呂を見せてもらって、家族さんに話を聞いて、その人らしい、リラックスしたお風呂とは何かを考えてみてください。
お湯の温度、入る時間帯、手順(身体を洗ってから入るのか、先に浴槽につかるのか?風呂上がりのビールはお好きか?)そんなことを考えることができるのも個浴の良いところ。きっとバタバタの業務を改善するのに一役買ってくれるはずです。ぜひ、素敵なお風呂の演出家になってください。
フロフェッショナルの条件 その五 その人らしいお風呂づくりの演出家
お風呂職人あらわる!
特養長寿苑(京丹後市)は、個浴のない施設でした。他の施設で研修して、肩までつかる気持ちいいお風呂を用意したい!と考えた職員の廣野君は、入浴委員会で「個浴を用意して、もっと利用者さんにお風呂を楽しんでもらおう」と呼びかけました。そして倉庫にあった浴槽を引っ張り出してきて、なんとお風呂を手づくりしてしまったのです。
いい施設はいつも利用者の環境を考えている
いかがでしょうか?こんな手づくりの苦労に比べたら、個浴がちゃんと備えられた施設にいるアナタはとても恵まれていると思いませんか?私の実感として活気のある施設は利用者のことを考えて、どんどん環境を変えていきます。反対に悪い施設は環境のせいにして何も変えようとしません。「うちの施設にはこんなお風呂しかないので、無理です!」とか言ってあきらめています(もちろんその職員さんだけの責任ではなく、環境改善を言っても知らん顔の上層部が一番悪い!)。いまある環境はあくまでも初期設定です。左・右のどちらから入るのか?福祉用具を設置したほうがいいのか?など、どんどん工夫して気持ちいいお風呂を実現し、利用者さんの笑顔がみられるようにがんばっていきましょう!
フロフェッショナルの条件
一、運動学・解剖学を知り、介助技術を磨く
二、日常生活から入浴動作を思い描く
三、現場で話し合い、成功体験を共有する
四、ふだんのケアを大切にする ~勝負は入浴前についている!~
五、その人らしいお風呂づくりの演出家
5項目がクリアできたら、個浴ケアが変わり、施設の全体のケアも変わってくることでしょう。さあ、フロフェッショナル目指して、一緒にがんばっていきましょう!
参考文献
リーダーのためのケア技術論 高口光子 関西看護出版
新しい介護 大田仁史 三好春樹 講談社
生活リハビリ術 松本健史 ブリコラージュ
テルマエ・ロマエ ヤマザキマリ エンターブレイン
おまけ:入浴文化の理解に役立つ名作マンガ
『テルマエ・ロマエ』主人公、ルシウスは現代日本にタイムスリップし、そこで日本の銭湯の素晴らしさに驚嘆する。古代ローマのお風呂に日本の銭湯のアイデアがもたらされて大盛況となる。外国人が日本の入浴文化に憧れを抱いているのに、当の日本人は、ないがしろにしていないか?介護現場でも、この素敵な入浴文化を捨てるようなもったいないことはしていないか?自問自答してしまう作品です。テルマエ・ロマエ ヤマザキマリ (著) 出版社 :エンターブレイン舞台は西暦130年代の古代ローマ帝国。日本のお風呂文化がローマで旋風を巻き起こす。読みながら日本のお風呂文化の奥の深さに触れることができる。
神々が集う温泉宿!『千と千尋の神隠し』(宮崎駿監督)舞台は大型温泉旅館“油屋”。八百万(やおよろず)の神々が、疲れを癒す。私は燃えました。「そうだ、うちの個浴も神々の集う温泉旅館!ここで疲れを癒して、元気になってもらうんだ!」そんな気持ちになれます。