松本健史の「生活リハビリの達人」になろう!

超高齢社会の切り札「生活リハビリの達人」になる!講師・原稿依頼は matumomo@helen.ocn.ne.jp まで

介護のお悩み劇で解決します!リハビリオールスターズ おもろしかった!  

2013年10月29日 | Weblog

介護の悩みを劇で解説する研修会を開催しました。とても楽しかったです(写真は京都新聞)。

参加いただいたみなさんいかがだったでしょうか?

すこしでも日々の仕事のお役に立てたら幸いです。

4話分の脚本は僕が書きました。それを丹後リハビリオールスターズの面々が個性豊かにアドリブを入れ、支援センターのみなさんが小道具や音響を準備し、素晴らしい劇にしてくれました。

1~4話の脚本を以下にアップします。もしお読みの方で劇がしたいという方は使っていただいてけっこうです。

第1話 起き上がりの介助

 

夫婦の介護(起き上がり) 力を無視した全介助 

登場人物  夫:右手にマヒがある

      妻:力任せの介護をしており、腰を痛めている

 アドバイザー:蝶ネクタイの変な姿で現れて、アドバイスをしてくる 

 

妻「あなたご飯が出来たので起きるわよ せーのっ」(手を引っ張って起き上がらせる) 

夫(痛がって)「お前、もうちょっとやさしくできんのか?ガサイのう」

妻「もう介護するのが重くて重くて。こっちだって大変なんだから。あなた最近太ったんじゃないの?」

夫「いや、お前ほどではない」

効果音:チャラリーン

妻 「あなたもう一回言ってごらんなさい!」ハリセンで頭を叩く

夫 「ひえ~助けて~」

介護アドバイザー (変な格好で現れる)「ご夫婦でケンカしないようにお願いします

 奥さん、ここではご主人の力を大切に介助する方法をお教えしましょう

 そうすれば奥様も楽。ご主人も力がよみがえってきて、リハビリにもなるのです。手を出してタッチ交代!」

アドバイザーと妻がタッチをして、介護者が交代する。アドバイザーの介助でご主人がみるみると起き上がれるようになった。    

夫の動作の手順は以下

①手すりの下の部分を逆手でつかむ

②肘を伸ばす

③足をベッド端に出す

④ベッド柵をつかみ肘を曲げることで身体が起き上がってくる

⑤端座位になる   

 

妻「まぁ、あなたにそんな力があったのね。私のときにも出し惜しみせずに力を出すのよ」 

   奥さんがアドバイザーの方法を最初から習って、少し支えると夫は起き上がり、ベッドに端坐位になることができた

   「まぁ、とっても楽になったわ」

アドバイザー「これで夫婦がラブラブになります!」

夫婦 ベッドに腰かけてつつきあう。

「アナタすごいわ」

「お前のおかげだよ」

「あなたの努力の成果よ」

「それほどでも」

おたがい叩き合いながら、だんだんエスカレートして最後は妻のどつきで旦那がベッドに倒れこむ。

めでたしめでたし チャンチャン

 

 

第2話 移乗の介助法アドバイス

 

夫婦の介護(移乗) 力を無視した全介助 

登場人物 夫:右手にマヒがある

     妻:力任せの介護をしており、腰を痛めている

     アドバイザー 

妻「車いすに乗せるのが大変なのよねー」

(手につばを吹きかけて臨戦態勢に入る)

【効果音】相撲の音 トトントントン ひがーし嫁の山 にーしー亭主の里

はっけよーい のこったのこった (妻が夫の腰に手をまわし、車いすに押し倒すように移乗する) 

夫(痛がって)「お前ガサイのう」

妻「もう介護するのが重くて重くて。あなた最近太ったんじゃないの?」

夫「いや、お前ほどではない」

効果音:チャラリーン

妻 「あなたもう一回言ってごらんなさい!」夫の頭を大根で叩く。大根真っ二つにわれる。

夫 ひえ~助けて~

 

介護アドバイザーが現れる

「ご夫婦でケンカをされないようにお願いします

 奥さん、ここでは本人さんの力を大切に介助することをお勧めします

人の動きを考えてみましょう

人の立ち上がり動作を実演し、鼻の動きに注意してもらう。

(お客さんを呼んでホワイトボードに書いてもらう)

これを奥さんのような相撲取りの介助をするとどうなるでしょう??

相撲取り介助の鼻の動きを分析(お客さんを呼んでホワイトボードに書いてもらう)

生理的な動作がでていないことがわかる

アドバイザー「これを介護の『運命の分かれ道』と呼んでいるのです」

 

ではご主人を鼻の動きを大切に介助してみましょう

そして人の立ち上がりを支える3条件があります

①ベッドの高さを合わせる

②前かがみ

③足をひく

 

【前方からの介助 イスなし、イスあり】

アドバイザーが前方からかつぐトランスで介助を行なう

鼻の動きを大切に介助しているのがいいんですね

介護現場などではイスを使った移乗もおススメです。

イスの介助を行う

 

【後方介助】

そして、本人さんの力がしっかりしているなら、こんなふうに後方から介助して移れる方もけっこう多いです。

ご主人も半身まひはありますが、左側の力は強いようです。後ろから支えて介助すれば移れると思います。

 

さぁ、奥さん旦那さまを介助してみてください。

2001年宇宙の旅 テーマ曲

少し支えると夫は起き上がり、ベッドに端坐位になることができた。ご主人の介助がうまくいく     

妻  「まぁ、とっても楽になったわ」 

アドバイザー「こんな風に相手の力を大切に介助するとお互いが協力しあえるのでラブラブになります」

妻(車いすをウィリーさせて後ろからほほを寄せる)「あなた、しっかり力が出ていたわよ」

夫(少し怖がりながら)「おまえのおかげさ、ありがとう」

【効果音】ロマンチックなムード音楽 車椅子でぐるぐる回ってダンスしはじめる

アドバイザー「ほらね、このように仲良くなっちゃいました。皆さんもぜひ本人さんの力を引き出す介護を心掛けてください!」

 

第3話 お父さん、悪い方の手も使わないとだめよ! 

あらすじ

むりに箸で食べさせようとしてしまう妻 

マヒには6段階あること。ブルンストロームステージの紹介

ステージに合わせた自助具を使いおいしくご飯が食べられてめでたしめでたし

 

妻「ほら、お父さん、リハビリが大切よ。テレビでも極力自分でするのがリハビリになるって言ってたわよ」

 夫「もう、口うるさく言わなくったってわかってるよ」

 妻むりやり箸を握らせながら「悪い方でもこうやってお箸をつかって食べるのよ!」

 夫 (妻の手をにぎりながら)「うるさいな、やめてくれ!」

 妻「ほら、私の手をこんなふうに握って、やっぱり手が動くんじゃない。お箸を使って食べれるはずよ」

夫「ひぇ~」

ストップ このリハビリはどこがおかしいと思いますか?

班で話し合ってみてください~

 シンキングタイム!!!  

 

お客さんにインタビューする

回答例「夫ができることをさせてあげた方がいいと思います・・・」

 

アドバイザー「では説明しましょう」

リハビリでは麻痺した手は6段階で評価します。その手がしっかり箸の操作を行える分離運動が可能かどうかを評価して、大丈夫なら悪い方の手を使っていきましょう。そして自助具を使うこと、たくさん自助具もありますよ!!!

テーブルに並べられた自助具のセットが現れる

これらが必要なのです。わかりましたか?

じゃんけんでも簡易検査ができます。

ではお父さん、グーチョキパーはできますか?

うーんチョキができないね~

それならお父さんの手はステージ3です。箸のような複雑な動作をするには少し無理があります。にぎりやすい自助具スプーンがいいかもしれません。

「あ、これなら食べやすい」

 

自助具セットであったかいご飯を食べ始める

ふりかけもかけてあげるわ(大量にふりかけをかける)

夫(すこしこまりながら)「お、おいしいよ」

アドバイザー「ほらね、このように仲良くなっちゃいました。皆さんもぜひ本人さんの力を引き出す介護を心掛けてください!」

 

 

第4話 古武術介護の達人あらわる 

あらすじ

古武術の達人が現れ、妻は「教えて!」と憧れる。しかし、この介護どこかおかしい。

介助者の都合が優先され、本人の動きが全く無視されているのだ。本人の力を引き出す介護が一番、と参加者にわかってもらう。

 

燃えよドラゴンのテーマ アチョー!

起き上がり、床からの立ち上がり すべて古武術介護でおこなう

  

妻 (目を輝かせて)私にも教えて~!!

 

ストップ この介護どこかおかしい?

班で話し合ってみてください~

 シンキングタイム!!!   ミュージックスタート

 

  回答例 「楽そうでいいと思いました」

「あんなのができたらいいけど家族さんには無理かも」

      

アドバイザー「それでは説明しましょう・・・

この介護にはメッセージがゼロなんです!

本人さんの動きを見極めて、こう動いてほしい、とメッセージが伝わる介護をしてあげるのと、なにが違いますか?

 

古武術介護とメッセージ介護を実演し、夫に感想を聞く。

夫「なんか、勝手に起きれて、楽でいいです。でも自分の力がだせてないような・・・」

  

アドバイザー「こんな起き方をして、明日から本人さんが起き上がれるでしょうか?

ぜひ、本人さんの力を大切に介助していってくださいね。」

 

妻 「あーだまされるところだったは、あなたやっぱり帰ってちょうだい」

  (達人に回し蹴りをする)

達人「ひえ~」 武道の達人が飛ばされていく。

夫 「おい、お前」

アドバイザー「いいじゃないですか。ご主人、あなたのこと大切にしてくれてますよ」

夫・妻・アドバイザー・達人(顔にあざができている)並んでみんな揃って「みなさん明日からの介護に役立ててくださいね。

これでリハビリオールスターズの介護劇を終わります。ありがとうございました~」

 


大阪のみなさん、ありがとう!

2013年10月20日 | Weblog

大阪で 認知症ケアの講演をしました。

参加いただいたみなさんありがとうございました。

やはり大阪のみなさんはノリがいい。いかがだったでしょうか?

明日から使えることがみつかったらうれしいです。

次回は来年1月東京です。興味のある方はぜひ東京でお会いしましょう!

以下、ホームページをみてください。 

http://www.kansaikango.co.jp/seminar/seminar2014/140111_matsumoto.html


生活リハビリの達人 メデシン仙人 in大阪  2Days 10/19(土)・20(日)

2013年10月17日 | Weblog

大阪で生活リハビリ講座を2日連続でおこないます。

2日とも別の講座ですので、どちらか一つでも、ぜひ聴きにきてください。

認知症ケアにも生活リハビリの手法が大いに役立ちます。

薬物療法に頼る前に、対話、コミュニケーション、介助の仕方、そういった基本的な関わりがいかに大事で効果的かをお伝えします。

コミュニケーションといったら、優しく声かけましょう、とか目を見て話しましょう、とかそんなことかなと思われるかもしれません。

いや、そうではないんです。そのお年寄りの環境を整えることから、もうコミュニケーションは始まっているのです。

講座では、まずは自分のカラダと対話していただきます。自分の体、隣の人の体を触れながら解剖学・運動学の知識をお伝えします。

その仕組みがわかれば自然と介助の仕方が変わってきます。お年寄りが動きやすい介助ができると、こう動きませんか?ともう言葉がないけど対話が可能になります。

そういう「言葉のない対話法」を会得すると認知症の方とも対話ができるようになります。

そしてお笑いからも「対話の型」(つかみ・つっこみ・ボケ・オチ)などを学んでみます。笑いの本場で、お笑い論が通用するのか?いまから緊張してます。

 

きっと明日からのケアに役立つことがあると思います。ぜひ、お誘いの上、お越しください。

10月19日(土) 大阪 松下介護学館 06-6774-6013

10月20日(日) 大阪 介護現場実践の認知症ケア学習会 【主  催】関西看護出版 場所:大阪府私学教育文化会館
           大阪府大阪市都島区網島町6-20

http://www.e-kaigonavi.com/freeseminar/products/detail.php?product_id=7981&cate=175


雑誌連載(第七回)『宇宙兄弟に学べ!』 全文掲載

2013年10月13日 | Weblog

ブリコラージュ10月号に原稿書きました。重力は地球にある貴重な天然資源じゃ。これを使わぬ手はないぞ!ヒントを得たのが宇宙兄弟の12巻、宇宙から帰ってきたお父さんに飛びつきたいのに、引きはなされてる子供のシーンがあって。あ、重力って僕らには初期設定やけど、いったんリセットされるとすごいもんなんやなー、あれ、寝たきりのお年寄りさんもリセットされてない?って思ったんです。20巻まで一挙に貸してくれた同僚のY君に感謝!おもろすぎて21巻から自分で買ってます。

 

 

 

参考文献: 宇宙兄弟 小山宙哉 講談社

 

↓ここから本文です。

Mission7 宇宙兄弟ニ学べ

朝のあわただしい業務が一段落して、タバコを吸っていると煙の中から、メデシン仙人が現れました。

 

NASAの写真

仙人は辺りを見渡し、テーブルに座っているお年寄りの姿をみて残念そうな顔で言いました。「みなさん座ってるけど、本当には座ってない。もう一工夫欲しいの~」

「えっ仙人、目がおかしいんですか?どうみても座ってると思うんですけど・・・。座るのにも工夫があるんですか?」と僕が訊くと

「この写真をみろ」一枚の写真を渡されました。

みるとけったいな格好のオッサンの記念写真でした。

 仙人に渡された写真  宇宙飛行士の膝にリンゴが・・・なぜ?

「なんですかこれ?」

「これはな、宇宙飛行士が無事に地球に帰還した時の記念写真じゃ。」

「これが今の話と関係があるんですか?」

「まぁ、話は最後まで聞け。この写真、なにか気にならんか?宇宙飛行士のマタのところになんか置いてあるじゃろう」

宇宙飛行士の膝にリンゴが乗せられていました。

「リ、リンゴに見えますけど。まさか、この場面でリンゴ、なんで?」

「これ、おふざけじゃ。無重力空間で何ヶ月も過ごしてきた宇宙飛行士に『重力の世界にお帰り』というNASAのアメリカンジョークじゃな」

「え・・・、このリンゴ、ジョークですか?」「そうじゃ。ニュートンのリンゴ。宇宙飛行士に『体が重いやろ。なーんでだ?正解は地球に重力があるからでーす!』ってリンゴが渡されておるのじゃ」

僕は話が把握できないので、だんだんイライラしてきました。「そんなふざけてないで、この宇宙飛行士を早急に手当てしてあげてほしいですね。なんかリンゴ渡されて迷惑そうな顔してませんか?」「そうじゃ、お前の言う通りじゃ、ジョークを言ってる場合ではないのぉ。しっかりせい、NASA!ナサけないのぉ」(仙人のダジャレでさらにイラッときました・・・)

 

重力に対抗、その名も『抗重力筋』

仙人は続けました。「地球に帰ってきた宇宙飛行士が最初にびっくりするのが、この重力のはんぱない強さじゃ。体が床に引っ張られて、動けなくなるほど強い重力を感じるんじゃぞ。NASAは帰還した宇宙飛行士に日常生活に戻るためのリハビリプログラムを用意しているのじゃ」

「へぇ~、びっくりです。そんなに地球の重力ってすごいんですね。僕はなんにも感じませんけど」僕はその場で飛び跳ねてみました。

「そうなんじゃ、わしらはオギャーと生まれてからずっと、この重力に引っ張られておる。重力がもともとアリの条件で生活してるから、全く意識せずに暮らしておるのじゃ。こうやってちゃんと立ったり、歩いたりするための筋肉、その名も『抗重力筋』が備わっておる。だが、ひとたび無重力に慣れてしまうと、これらの筋肉は弱ってしまうんじゃ。だから、地球の重力下での生活に再び適応しようと思えば、鍛え抜かれた宇宙飛行士といえども大変なんじゃ。この絵をよく見ておけ!」

仙人に渡されたメモ 抗重力筋のイラスト

 

地球上にもあった無重力空間!『寝たきりのベッド』

仙人は僕の肩に手を置いて言いました。「おい、他人事と思うなよ。この抗重力筋を使ってない人が身近にいるということに気づかぬか?」

「誰ですか?」「お前、いつも介護しておるじゃろ」「・・・あ、ねたきりのお年寄りですか?」

「やっと気づいたか」仙人はため息をつきました。「よいか、重力に負けぬように筋肉を使って生活する。これ、地球上にいるすべての人の基本じゃ」

「そうか、寝たきりの人も抗重力筋を使えるように、立ったり歩いたりした方がいいんだ!」

「まぁ待て。お前、ちと早合点がすぎるのぉ。よいか長期間寝たきりだった人が、急に立つだの歩くだのできると思うか?宇宙飛行士でも無理なことをお前はご老人にさせるのか?」

「たしかに、ちょっと無茶でした。でも、どうしたらいいんですか?」

「そうじゃな。まずは重力を『感じる』ことぐらいから始めてみることじゃな。寝たきりの人はフラフラしないように支えながら起きて座ってみる。もたれて座ってる人は背もたれから背中を離してみる。そんな工夫で筋肉が目覚めるぞ。それぐらいはできる人がたくさんおるはずじゃ」

「単に座るといっても工夫があるんですね。だから仙人は、さっき『ここにいる人は本当の意味で座っていない』と言ったんですね。もし座り方の秘訣があれば、教えてください」

「よし、次回は『座る』を極める介護のレッスンじゃ。これこそTHE(座)・介護じゃ!」

ダジャレが決まった!とドヤ顔の仙人です。ダジャレのせいで僕の体がズシンと重くなりました。これも仙人の言う「重力を感じよ」ということなんでしょうか?そう考えると仙人の言葉もなかなか奥が深いのかもしれません・・・。

 

ブリコラージュ10月号、ぜひお手に取ってみてください。

http://www.nanasha.net/home.html

 

 

 

 

 


講座に参加されるみなさんへ少し長い手紙を書きました

2013年10月11日 | Weblog

10月20日(日) 大阪にて介護現場実践の認知症ケア学習会を開催します。 場所:大阪府私学教育文化会館 主催:関西看護出版

http://www.e-kaigonavi.com/freeseminar/products/detail.php?product_id=7981&cate=175

まだ席がありますので、興味のある方はぜひお誘いあわせの上、ご参加ください。聞いた次の日から役立つ、認知症ケアのアイデアが満載です。

今回参加してくださる皆さんに、手紙を書きました。会場で配ります。ブログにもアップしておきます。これを読んで行ってみようかな?と思っていただけるとうれしいです。今の医療について感じる疑問、認知症ケアに見え隠れする不安、そんなものを言葉にしてみました。

ぜひ読んでみてください。

この研修をうける皆様へ ごあいさつに代えて

ボケを測定しようと近づいてくる人に誰が心を開くでしょうか?

みなさん、ご参加いただき大変ありがとうございます。本日は、認知症ケアについての講座です。私は今、近代に発展した医療について、大きな疑問を抱いているのです。

哲学者ミシェル・フーコー(1926-1984)は「診断」はとても危険なものであることを見抜いていました。認知症のケアにも関係することなので、まずは「診断」について考えてみたいと思います。近代医療には、とても暴力的な側面があります。古くからの医術にはない役割が与えられたからです。その役割とは症状を分類し、命名する「診断」です。疾患名がついていないものは医師が頭をひねって、疾患に名前をつけていきました。いわば疾患をつくりだしていったわけです。

「診断がついた」っていう言葉、なんか少し安心の響きがあるでしょ。

逆に「診断がつかない」「原因不明の難病」そんな言葉には、なんか不安で得体のしれないもの、という感じがしないでしょうか?

「診断」はそういう意味では現代人の安心のお守りとしても人気を得て、ちゃくちゃくと発展していくわけです。

でもその診断は「鬼っこ」でもあったのです。人を分類し、感染の危険、周りに危害を加えそうな患者は日常生活空間から外へ追いやる、あるいは一般社会からみえないどこかへ閉じ込める、そんな暴力的な側面も持ち合わせていました。

精神疾患では診断がついたら閉じ込める、という「治療」が横行しました。そして治療に携わる専門職はこう思っています。「閉じ込めてもいいんだ、だってこの人○○(精神病の病名)なんだもの・・・」

これ免罪符、ですね。

昔、日常的に町内にいた、「すこしおかしいカナ?」という人を今はあんまり見かけなくなりました。

あの人々はどこへ行ったのでしょうか・・・?

そうです。疾患名をつけられ、分類され、収容されていったのです。

僕は思います。今、認知症にこの風潮がないでしょうか?

認知症にも診断名があります。アルツハイマー病、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、ことこまかに分類する傾向にも注意が必要です。

なんせ診断がつくと周りは安心します。安心だけならまだいいけど、「この人、認知症だから」と線が引かれる。「施設の3階行き、決定!」なんて・・・。

この線が引かれることの精神的影響が、認知症状を落ち着かせるどころか、火に油を注ぐことになっていないでしょうか?次の新たな「問題行動」へとつながってないでしょうか?

僕は思います。「ボケを測定しようと近づいてくる人にだれが心を開くか!」と。

自分に置き換えて考えてみてください。たとえばアナタが失恋したときに、なぐさめようと、近寄ってきた人が実は、噂にできるネタ集めをしていた。そんなときどう思います?心が開けますか?

そんな人より、一緒に泣いてくれる人に心を開きますよね。

あと、次の人を紹介してくれる人に心を開きます(笑)。

認知症を悪化させないためには、線を引かず、どうしたらコミュニケーションが維持できるか、この人にこの「役割」をしてもらったら落ち着いて過ごしてもらえないだろうか?周囲の人がそんな気持ちでいることが安心感につながるはずです。そんな試みを本講座ではたくさん紹介していきます。

よくチマタで認知症の勉強会などをするとき、まず疾患の分類、中核症状、周辺症状って勉強しますよね。あれにちょっと違和感を感じていたんですが、謎が解けました。人を診断して安心したい、線引いて隔離して安心したい、という近代医療のお決まりのコースに違和感を感じていたわけです。医療側がいくら安心してもいけませんね。だって認知症を患った方こそが不安でしかたないはずなのですから。そして僕らも実は心の中ですごい不安をかかえることになります。なぜなら、いつか線を引かれて、あっち側に分類されるのでは?と感じてしまうからです。みんなが不安を抱える空気を医療がつくりだしているとするなら、ちょっと考え直さなければなりません。今回の研修では、そういったあっち側とこっち側のような線を引きません。コミュニケーションの取り方、力を引き出す介助法、居場所と役割づくりの関わり、そんな介護側からのリハビリアプローチをふんだんに盛り込んでみました。認知症の深さを診断するのではなく、今ここからできる、その人を中心としたコミュニケーションづくりを考えます。どうかしばしお付き合いください。


生活リハ講座in大阪のおしらせ 10月20日(日) 明日から役立つ認知症ケアの方法論 お笑いからも学びます

2013年10月09日 | Weblog

大阪 10月20日(日) 関西看護出版主催の研修で講師をさせていただきます。認知症ケアに「生活を支えるケア」と「コミュニケーションの方法論」をお伝えします。「認知症ケア」といっても日常の生活基盤をおろそかにはできません。というか、そこが一番大事で、日常に安心が得られないことからはじまる不穏や問題行動がたくさんあります。そのときに、「じゃあ安定するために眠剤を」とか『医療的に正しい処置』が間違い(悲劇)の始まりです。薬でフラフラになっておとなしくなるのがいいでことでしょうか?

私が現場で大切だと思うのは、不穏や問題行動の原因を考慮しながら、ケアをより基本的にすること、その方の生活歴から居場所と役割のある生活づくりを目指すこと。その方法論を事例を交え、お伝えします。生活リハビリで大切な環境設定や介助法が認知症ケアでも、とても頼りになります。そしてお笑いからコミュニケーションの型について勉強します。お笑いのネタからコミュニケーションの極意をつかむことができます。つかみ、ボケ、ツッコミ、ネタフリ、ノリツッコミ、オチ・・・考えてみると「お笑い」はコミュニケーションについて考える絶好のテキストです。(写真はお笑い芸人ハライチ このコンビのネタも人を元気にするコミュニケーションについて重大なヒントが!)

興味のある人ぜひお越しになってください。お待ちしております。

10月20日(日) 大阪 介護現場実践の認知症ケア学習会 【主  催】関西看護出版 場所:大阪府私学教育文化会館
           時間10時~16時 

http://www.e-kaigonavi.com/freeseminar/products/detail.php?product_id=7981&cate=175

 

※参考に私の過去ブログを読んでください。当日さらに理解が深まると思います。

お笑いに学ぶ認知症ケア(ボケ編)

http://blog.goo.ne.jp/matumomo_2006/e/0db40fc7cb9b43bb04e0deb6d621928f

お笑いに学ぶ認知症ケア(ツッコミ編)

http://blog.goo.ne.jp/matumomo_2006/e/d645b09406b1baeb55ad0a85919ff842


タスキをつないでゴール

2013年10月07日 | Weblog

町の駅伝大会に出場しました。目指していたタイムにはめちゃくちゃ遠かったですが、無事タスキをつなぐことができました。前のランナーがくる瞬間の緊張感は半端じゃありませんでした。タスキをつないだ桑飼チームのみなさんお疲れさまでした。(終わってみれば、)とても楽しかったです。前日は逃げ出したくなりました。そして当日のレースでは息があがって、あっぷあっぷして、自分のふがいなさに自己嫌悪することになりました。しかし、やっぱりこんな緊張感の中に身を置いて必死になることって、ふだんはそうありません。みなさんと走れてよかったです。そして全チームのランナーのみなさん、準備していただいた役員のみなさん、ありがとうございました。


生活リハビリの達人になろうin岡山 お疲れさまでした!

2013年10月02日 | Weblog

岡山で初の「生活リハビリの達人になろう」研修会をさせていただきました。

(主催:備中地区老人福祉施設協議会 場所:くらしき健康福祉プラザ 5階 大ホール)

みなさん熱心に聞いてくださいました。お疲れ様でした。なにか役に立つことがあったらうれしいです。

岡山は瀬戸内の穏やかさを感じることができ、気持ちがよかったです。参加された人も真面目で積極的!起き上がりや移乗動作のモデルをしていただいたみなさんありがとうございました。質問などありましたら、またご連絡ください。

連絡調整からお世話になった、服部さん、また協議会の田中会長はじめみなさんお招きいただき、ありがとうございました。

この研修会は参加者みなさんに豪華お弁当が出て、びっくり。私もしっかりいただきました。

アンケートには「お弁当はなくてよいので、多くの人がこの研修に参加できるようにしてほしかった」と書いておられる方もいました。熱い気持ちが伝わってきて大変うれしかったです。

「達人になろう」の研修では多くの町に呼んでいただいております。うれしく思います。今まで京都府、大阪府、広島県、島根県、兵庫県、奈良県、神奈川県、岡山県 にお邪魔したことになります。うちの町でも、というかた、都合が合えばどこでも行こうと思っております。ご連絡くださいね。

 

以下、研修会予定

10月19日(土) 大阪 松下介護学館 06-6774-6013

10月20日(日) 大阪 介護現場実践の認知症ケア学習会 【主  催】関西看護出版 場所:大阪府私学教育文化会館
           大阪府大阪市都島区網島町6-20

http://www.e-kaigonavi.com/freeseminar/products/detail.php?product_id=7981&cate=175

2014年 1月11日(土) 介護現場実践の認知症ケア学習会 【主  催】関西看護出版 東京 林野会館

http://www.kansaikango.co.jp/seminar/seminar2014/140111_matsumoto.html

メールは以下

E-mail : matumomo☆helen.ocn.ne.jp (☆を@に変えて送信して下さい)