介護の悩みを劇で解説する研修会を開催しました。とても楽しかったです(写真は京都新聞)。
参加いただいたみなさんいかがだったでしょうか?
すこしでも日々の仕事のお役に立てたら幸いです。
4話分の脚本は僕が書きました。それを丹後リハビリオールスターズの面々が個性豊かにアドリブを入れ、支援センターのみなさんが小道具や音響を準備し、素晴らしい劇にしてくれました。
1~4話の脚本を以下にアップします。もしお読みの方で劇がしたいという方は使っていただいてけっこうです。
第1話 起き上がりの介助
夫婦の介護(起き上がり) 力を無視した全介助
登場人物 夫:右手にマヒがある
妻:力任せの介護をしており、腰を痛めている
アドバイザー:蝶ネクタイの変な姿で現れて、アドバイスをしてくる
妻「あなたご飯が出来たので起きるわよ せーのっ」(手を引っ張って起き上がらせる)
夫(痛がって)「お前、もうちょっとやさしくできんのか?ガサイのう」
妻「もう介護するのが重くて重くて。こっちだって大変なんだから。あなた最近太ったんじゃないの?」
夫「いや、お前ほどではない」
効果音:チャラリーン
妻 「あなたもう一回言ってごらんなさい!」ハリセンで頭を叩く
夫 「ひえ~助けて~」
介護アドバイザー (変な格好で現れる)「ご夫婦でケンカしないようにお願いします
奥さん、ここではご主人の力を大切に介助する方法をお教えしましょう
そうすれば奥様も楽。ご主人も力がよみがえってきて、リハビリにもなるのです。手を出してタッチ交代!」
アドバイザーと妻がタッチをして、介護者が交代する。アドバイザーの介助でご主人がみるみると起き上がれるようになった。
夫の動作の手順は以下
①手すりの下の部分を逆手でつかむ
②肘を伸ばす
③足をベッド端に出す
④ベッド柵をつかみ肘を曲げることで身体が起き上がってくる
⑤端座位になる
妻「まぁ、あなたにそんな力があったのね。私のときにも出し惜しみせずに力を出すのよ」
奥さんがアドバイザーの方法を最初から習って、少し支えると夫は起き上がり、ベッドに端坐位になることができた
「まぁ、とっても楽になったわ」
アドバイザー「これで夫婦がラブラブになります!」
夫婦 ベッドに腰かけてつつきあう。
「アナタすごいわ」
「お前のおかげだよ」
「あなたの努力の成果よ」
「それほどでも」
おたがい叩き合いながら、だんだんエスカレートして最後は妻のどつきで旦那がベッドに倒れこむ。
めでたしめでたし チャンチャン
第2話 移乗の介助法アドバイス
夫婦の介護(移乗) 力を無視した全介助
登場人物 夫:右手にマヒがある
妻:力任せの介護をしており、腰を痛めている
アドバイザー
妻「車いすに乗せるのが大変なのよねー」
(手につばを吹きかけて臨戦態勢に入る)
【効果音】相撲の音 トトントントン ひがーし嫁の山 にーしー亭主の里
はっけよーい のこったのこった (妻が夫の腰に手をまわし、車いすに押し倒すように移乗する)
夫(痛がって)「お前ガサイのう」
妻「もう介護するのが重くて重くて。あなた最近太ったんじゃないの?」
夫「いや、お前ほどではない」
効果音:チャラリーン
妻 「あなたもう一回言ってごらんなさい!」夫の頭を大根で叩く。大根真っ二つにわれる。
夫 ひえ~助けて~
介護アドバイザーが現れる
「ご夫婦でケンカをされないようにお願いします
奥さん、ここでは本人さんの力を大切に介助することをお勧めします
人の動きを考えてみましょう
人の立ち上がり動作を実演し、鼻の動きに注意してもらう。
(お客さんを呼んでホワイトボードに書いてもらう)
これを奥さんのような相撲取りの介助をするとどうなるでしょう??
相撲取り介助の鼻の動きを分析(お客さんを呼んでホワイトボードに書いてもらう)
生理的な動作がでていないことがわかる
アドバイザー「これを介護の『運命の分かれ道』と呼んでいるのです」
ではご主人を鼻の動きを大切に介助してみましょう
そして人の立ち上がりを支える3条件があります
①ベッドの高さを合わせる
②前かがみ
③足をひく
【前方からの介助 イスなし、イスあり】
アドバイザーが前方からかつぐトランスで介助を行なう
鼻の動きを大切に介助しているのがいいんですね
介護現場などではイスを使った移乗もおススメです。
イスの介助を行う
【後方介助】
そして、本人さんの力がしっかりしているなら、こんなふうに後方から介助して移れる方もけっこう多いです。
ご主人も半身まひはありますが、左側の力は強いようです。後ろから支えて介助すれば移れると思います。
さぁ、奥さん旦那さまを介助してみてください。
2001年宇宙の旅 テーマ曲
少し支えると夫は起き上がり、ベッドに端坐位になることができた。ご主人の介助がうまくいく
妻 「まぁ、とっても楽になったわ」
アドバイザー「こんな風に相手の力を大切に介助するとお互いが協力しあえるのでラブラブになります」
妻(車いすをウィリーさせて後ろからほほを寄せる)「あなた、しっかり力が出ていたわよ」
夫(少し怖がりながら)「おまえのおかげさ、ありがとう」
【効果音】ロマンチックなムード音楽 車椅子でぐるぐる回ってダンスしはじめる
アドバイザー「ほらね、このように仲良くなっちゃいました。皆さんもぜひ本人さんの力を引き出す介護を心掛けてください!」
第3話 お父さん、悪い方の手も使わないとだめよ!
あらすじ
むりに箸で食べさせようとしてしまう妻
マヒには6段階あること。ブルンストロームステージの紹介
ステージに合わせた自助具を使いおいしくご飯が食べられてめでたしめでたし
妻「ほら、お父さん、リハビリが大切よ。テレビでも極力自分でするのがリハビリになるって言ってたわよ」
夫「もう、口うるさく言わなくったってわかってるよ」
妻むりやり箸を握らせながら「悪い方でもこうやってお箸をつかって食べるのよ!」
夫 (妻の手をにぎりながら)「うるさいな、やめてくれ!」
妻「ほら、私の手をこんなふうに握って、やっぱり手が動くんじゃない。お箸を使って食べれるはずよ」
夫「ひぇ~」
ストップ このリハビリはどこがおかしいと思いますか?
班で話し合ってみてください~
シンキングタイム!!!
お客さんにインタビューする
回答例「夫ができることをさせてあげた方がいいと思います・・・」
アドバイザー「では説明しましょう」
リハビリでは麻痺した手は6段階で評価します。その手がしっかり箸の操作を行える分離運動が可能かどうかを評価して、大丈夫なら悪い方の手を使っていきましょう。そして自助具を使うこと、たくさん自助具もありますよ!!!
テーブルに並べられた自助具のセットが現れる
これらが必要なのです。わかりましたか?
じゃんけんでも簡易検査ができます。
ではお父さん、グーチョキパーはできますか?
うーんチョキができないね~
それならお父さんの手はステージ3です。箸のような複雑な動作をするには少し無理があります。にぎりやすい自助具スプーンがいいかもしれません。
「あ、これなら食べやすい」
自助具セットであったかいご飯を食べ始める
ふりかけもかけてあげるわ(大量にふりかけをかける)
夫(すこしこまりながら)「お、おいしいよ」
アドバイザー「ほらね、このように仲良くなっちゃいました。皆さんもぜひ本人さんの力を引き出す介護を心掛けてください!」
第4話 古武術介護の達人あらわる
あらすじ
古武術の達人が現れ、妻は「教えて!」と憧れる。しかし、この介護どこかおかしい。
介助者の都合が優先され、本人の動きが全く無視されているのだ。本人の力を引き出す介護が一番、と参加者にわかってもらう。
燃えよドラゴンのテーマ アチョー!
起き上がり、床からの立ち上がり すべて古武術介護でおこなう
妻 (目を輝かせて)私にも教えて~!!
ストップ この介護どこかおかしい?
班で話し合ってみてください~
シンキングタイム!!! ミュージックスタート
回答例 「楽そうでいいと思いました」
「あんなのができたらいいけど家族さんには無理かも」
アドバイザー「それでは説明しましょう・・・
この介護にはメッセージがゼロなんです!
本人さんの動きを見極めて、こう動いてほしい、とメッセージが伝わる介護をしてあげるのと、なにが違いますか?
古武術介護とメッセージ介護を実演し、夫に感想を聞く。
夫「なんか、勝手に起きれて、楽でいいです。でも自分の力がだせてないような・・・」
アドバイザー「こんな起き方をして、明日から本人さんが起き上がれるでしょうか?
ぜひ、本人さんの力を大切に介助していってくださいね。」
妻 「あーだまされるところだったは、あなたやっぱり帰ってちょうだい」
(達人に回し蹴りをする)
達人「ひえ~」 武道の達人が飛ばされていく。
夫 「おい、お前」
アドバイザー「いいじゃないですか。ご主人、あなたのこと大切にしてくれてますよ」
夫・妻・アドバイザー・達人(顔にあざができている)並んでみんな揃って「みなさん明日からの介護に役立ててくださいね。
これでリハビリオールスターズの介護劇を終わります。ありがとうございました~」