紫の物語的解釈

漫画・ゲーム・アニメ等、さまざまなメディアにひそむ「物語」を抽出して解釈を加えてみようというブログです。

【けいおん!!】アルバム「放課後ティータイム2」について

2010-11-17 23:40:14 | その他

先日、アニメ【けいおん!!】の劇中歌アルバム「放課後ティータイムⅡ」が発売されました。



その週のオリコンのアルバムランキングで堂々の一位を飾り、そのコンテンツ力を見せつけたけいおんですが、
僕としては、放課後ティータイムⅡと同じ週に発売されたスピッツの「とげまる」がけいおんに抜かれて
二位に甘んじていたのがものすごく衝撃的でした。

スピッツを抜くとは、ひとつ一体どんなアルバムなんだろうと聴いてみると、これがなかなか面白いつくりの
アルバムとなっていました。

今回は、「放課後ティータイムⅡ」の感想をまじえつつ、「けいおん」というコンテンツについて
考えてみたいと思います。


  放課後ティータイムⅡの構成

放課後ティータイムⅡは、CD二枚組のアルバムとなっています。
ディスク1が「Studio Mix」、ディスク2が「Casette Mix」と銘打たれてますが、
まずは、ディスク1に注目してみます。

ディスク1の曲目は以下の通りです。

1. いちごパフェが止まらない
2. ぴゅあぴゅあはーと
3. Honey sweet tea time
4. 五月雨20ラブ
5. ごはんはおかず
6. ときめきシュガー
7. 冬の日
8. U&I
9. 天使にふれたよ!
10. Interlude
11. 放課後ティータイム


まあ、曲目だけ見せられてもアニメ観てない人には何のこっちゃって感じでしょうが
劇中歌アルバムということなので、作品内で使用された楽曲なんだろうなーとはなんとなく感じられます。
が、これらの楽曲すべてが作品内で使用されたわけではありません。

まず、「いちごパフェが止まらない」ですが、これはアニメ二期の第1話で曲名だけが登場し、
演奏シーンは一切なかった楽曲です。
アニメを観ていた人は、「いちごパフェが止まらない?どんな曲なんだろう?」と思っていたのが
このアルバムで聴いて、初めてどういう曲だったかわかるという仕掛けになっています。


次に「ぴゅあぴゅあはーと」。これは劇中、放課後ティータイムの新曲として演奏されています。



また、この曲が演奏されたエピソードの放映とあわせて、シングルCDとしても
「放課後ティータイム」名義でリリースされました。
シングルの楽曲が目玉トラックとしてアルバムに収録されるというのは、
一般のアーティストのアルバムの作り方と同様です。
これは、このアルバムがただの劇中歌集ではなく、「放課後ティータイム」というバンドを
一個のアーティストとして見立てたつくりにもなっているわけです。


「Honey sweet tea time」は、劇中、ムギが律のキーボードをいじったことに着想を得て
作曲した楽曲です。




劇中では歌詞はついておらず、ムギはAメロをさらっと演奏した程度でした。
「ムギちゃんが弾き語りしたらどうかな?」というメンバーの提案通り、このアルバムでは
ムギがボーカルを務める唯一のトラックとなっています。
劇中では未完成だった曲が、このアルバムで完成品となってあらわれるという面白い見せ方だと思います。


「五月雨20ラブ」は、これはタイトルも歌詞も劇中にはまったく登場しない楽曲です。
でも聴いてみると、放課後ティータイムの他の曲とも不思議となじんでいます。


「ごはんはおかず」。これもシングルでリリースされました。
このアルバムのキラートラックのひとつだと思います。
唯の書いたヘンな歌詞と、ムギの特徴的なキーボードのリフにあわせて
「いち、に、さん、し、ごーはん!」と、全員でシャウトするのが面白い曲です。



余談ですが、この曲のシングルリリース当時、あるFMラジオ内の発売曲ランキングのコーナーで
この曲が紹介されていました。
FMの女性パーソナリティが流暢な口調で、

「3位には放課後ティータイムの"ごはんはおかず"がランクイン。やっぱり日本人ならパンよりもごはんですね。
続いて、2位にはGLAYの・・・」

という感じで、ナチュラルにFM的曲紹介されていたのが妙に面白かったのを覚えています。


「ときめきシュガー」は、歌詞のみ登場のパターンのやつです。
澪のファンクラブの集いで、澪がファンの前でサプライズ的に歌詞を読み上げて、
そのあまりの甘ったるさに、ファンもみんなドン引きしたという超いわく付きの歌詞なのですが、
これがちゃんと楽曲に乗って、澪本人のボーカルで歌いあげられます。
ただ、曲に乗ってもやっぱり甘ったるいです・・・。


「冬の日」も歌詞のみ登場のパターンでした。
澪がプリントアウトした歌詞を律のポストに投函したため、律がラブレターと勘違いしたという
やっぱりいわく付きの歌詞なのですが、これにもちゃんと曲がついたというわけです。
でも、ボーカルは何故か唯。


「U&I」は「ごはんはおかず」と両A面シングルでリリースされました。



唯が風邪をひいた妹の憂を想って作詞した曲。
劇中では学園祭ライブのシメの曲として使用され、アニメ視聴者にとってはひときわ思い入れが
あるだろう楽曲です。これもキラートラックかと。


「天使にふれたよ!」は、卒業する唯たちが、ただ一人軽音部に残される梓のために作って演奏した楽曲です。



この曲をこの位置に持ってくるところが憎い演出ですな。
劇中、最も大事な場面で使用されシングル化もされていないため、このアルバム最大の目玉曲とも
いえるかも?


ふわふわ時間のインストを挟んで、


最後の楽曲「放課後ティータイム」。
劇中未登場の曲です。なんとなく上海万博のテーマ曲っぽい曲調ですが、多分偶然でしょう。

 放課後は Tea Time 全力の Break Time
 響かせよう 世界でひとつだけの 終わらない歌を

という、まさにバンド「放課後ティータイム」のテーマ曲!という感じの曲でシメとなります。


と、まぁディスク1だけ聴いてみても、なかなかよく出来てるCDアルバムと言えるでしょう。
ただの劇中歌集で終わっていないところに、作り手のこだわりみたいなものが感じられます。

・・・が。

その「作り手のこだわり」が最大限に発揮されているのは、実はディスク2の方だったのです。

では、ディスク2の「Casette Mix」の内容に注目します。
ディスク2の曲目は以下の通りです。

1. Introduction
2. ふわふわ時間
3. カレーのちライス
4. わたしの恋はホッチキス
5. ふでペン ~ボールペン~
6. ぴゅあぴゅあはーと
7. いちごパフェが止まらない
8. Honey sweet tea time
9. ときめきシュガー
10. 冬の日
11. 五月雨20ラブ
12. ごはんはおかず
13. U&I


曲目をみると、「なんだディスク1と曲被りまくってんじゃん」とか思うかもしれませんが(僕は思いました)、
実は、このディスク2は劇中に登場した、放課後ティータイムのすべての楽曲を収録したカセットテープの
完全再現なのです。



卒業式の前、放課後ティータイムのメンバーはカセットデッキを使用して
今までに自分たちが演奏したすべての楽曲を収録することにします。
ディスク1の「天使にふれたよ!」は卒業式の日にサプライズ的に発表された曲なので
ここには登場しません。
また、「放課後ティータイム」も収録されていないので、少なくとも卒業式時点では
出来ていなかった曲ということでしょう。




このディスク2のスゴイところは、「放課後ティータイムによってつくられたカセットテープ」を
再現することへのこだわりがハンパないことだと思います。

まず、曲全体がカセット音源っぽくミックスされています。
(あくまでも"っぽく"してるだけなので、楽曲としてのレベルを損なわない味付け程度です)
さらに、劇中ムギが思わずくしゃみしてしまったところや、演奏前の掛け声、
カセットデッキをON/OFFする音なども完全に再現されています。



要は、このCDそのものが「けいおん」というコンテンツの一部だということなのです。
アニメの放映時間は20分そこそこしか尺がないので、どうしても放課後ティータイムによってつくられた
カセットの全容がどういうものだったのか、視聴者には知りようがありません。
しかし、このCDを聴くことによって、アニメのエピソードの「補完」ができるわけです。


フルアルバムとして劇中歌集の域にとどまらないディスク1と
アニメのエピソードを補完する役割を果たすディスク2によって構成される「放課後ティータイムⅡ」。
細部にまで作り手のこだわりを感じる、非常によく出来たアルバムでした。

拍手ボタン
記事が面白かったらポチっとよろしくです。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【ダイの大冒険】獣王クロコ... | トップ | 名機【ドリームキャスト】の... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

その他」カテゴリの最新記事