紫の物語的解釈

漫画・ゲーム・アニメ等、さまざまなメディアにひそむ「物語」を抽出して解釈を加えてみようというブログです。

【ゼロ年代 珠玉のアニメソングスペシャル】にみる畑亜貴の創作の秘密

2010-08-16 22:47:03 | その他

先日、NHK-BS2で興味深い番組がやっていました。
【ゼロ年代 珠玉のアニメソングスペシャル】という、アニソン特番です。
2000年~2010年までのアニソンを、「萌える」「泣ける」「燃える」という
観点から分類し、それぞれ10曲ずつ紹介するのをメインの流れに据えて、
田中公平、畑亜貴などのアニソンクリエイターたちの楽曲解説や
創作秘話などを間に差し挟む形式で番組は展開して行ったんですが、
内容がものすごい濃かったです。

NHKはどんな番組でもそうですが、番組内容がマニアックで良いです。
「歴史秘話ヒストリア」は、毎回面白い切り口で歴史上の人物を紹介してくれますし、
「名将の采配」は、世界の名将が参加した戦場を、シミュレーションゲーム形式で
番組ゲストに采配させるという新しい試みをとっています。
ラジオでは、「今日は一日○○三昧」で、アニソンやゲーム音楽、ハードロックやプログレなど
民放ではほとんど流れない音楽ジャンルをまるまる十時間以上流してくれます。
とにかく、
「さすがNHK!民放にできないことを平然とやってのける!!そこにシビれる、あこがれるぅ!!」
と、いうのが我らが日本国・国民放送局「NHK」なのです。日本の未来はあかるいなー。

【ゼロ年代 珠玉のアニメソングスペシャル】も、NHKクオリティに洩れずとても面白い番組でした。
今回は、この番組のなかで畑亜貴さんが語っていたアニソン歌詞創作秘話が面白かったので、
紹介してみようと思います。


  畑亜貴って?

畑亜貴(はたあき)さんは、アニメ・ゲーム作品に膨大な歌詞・曲を提供する音楽家の方です。
萌え系アニメ作品への提供が多いので、男性かと思われがちですが、女性の方です。
また、ご自身でもプログレバンドに参加してインディーズで独自の活動をされているそうです。



作詞では、【あずまんが大王】の「空耳ケーキ」や【涼宮ハルヒ】の「ハレ晴れユカイ」「God knows...」
【らきすた】の「もってけ!セーラーふく」などが代表作になるようです。
その作風の多彩さから、「畑亜貴は複数いる!?」と噂されたこともあったとか。

ただ、言動に少しクセのある人で、本人いわく「キモい中年」。
番組では「アニソン界の黒い天使」と銘打たれてました。
NHK-FMの「帰ってきた、今日は一日アニソン三昧」に出演したときは
進行を無視して、パーソナリティの丹下桜さんにセクハラしまくるという
暴挙に出たトンデモナイ人でもあります・・・。


  畑亜貴、作詞のルーツ

畑さんの作詞のルーツは、意外なことに「童謡」にあるというのです。



日本人にはおなじみの童謡「あめふり」です。
畑さんは、歌詞のサビの部分がもっとも情報量が多くなければならない、と言います。
その上で、「あめふり」のサビを「ぴちぴち ちゃっぷちゃっぷ らんらんらん」の部分とします。
すべてが擬音で構成されているこのフレーズですが、この擬音だけで情景がすべて浮かびます。

「ぴちぴち」 ⇒ 雨が降っている。雨が地面にはねている。傘にあたっている。
「ちゃっぷちゃっぷ」 ⇒ 水たまりに足を入れている、すっごいうきうきしてる感じ
「らんらんらん」 ⇒ 「ぴちぴち」と「ちゃっぷちゃっぷ」で、気持ちは「らんらんらん♪」になる!

一見情報のない「擬音」を並べることで、情景を浮かびあがらせる方法が、
この「あめふり」の歌詞ではとられているのだといいます。

畑さんの歌詞の特徴のひとつとして、「キーワードの組み合わせの面白さ」がありますが、
(「もってけ!セーラーふく」なんて、その最たる例ですね)
そのルーツが童謡から来てたんですねー。すこし意外な感じでした。


  プロとしての作詞



【涼宮ハルヒの憂鬱】劇中歌である「God knows...」は、主人公・ハルヒが
高校の文化祭で歌う邦楽ロック調のラブソングです。
畑さんによると、この歌詞はいかにも女子高生が書きそうな詞を意識して書いたそうです。
あえて、テクニックを使わずにストレートに歌詞を書くことによって、
思春期独特の「恥ずかしさ」、「痛さ」を表現したとか。



たしかに厨二くさい痛々しい歌詞ですが、畑さん、自分で書いた歌詞に自分でツッコんでます・・・。


また、ここで「God knows...」の作曲家である神前暁(こうさきさとる)さんから、
「畑さんはメロディの解釈が素晴らしい」との一言が。
「God knows...」は曲が先行で作られ、その曲に畑さんが歌詞をつけた楽曲でした。



楽曲には、ボーカル担当者が息継ぎをする「ブレスポイント」が要所要所に入ります。
この「ブレスポイント」をどこに置くかで、曲の解釈が大きく変わってくるのだそうです。
また、曲のフレーズが上へ向かうか下へ向かうかで日本語のイントネーションも変わったりと。
畑さんは、そういったメロディのとらえかたがとても上手いのだといいます。

これを受けて、畑さんは、曲をもらったときにはどこにブレス位置を持ってくるかを考えながら
歌詞を書いていると答えます。
やはり、どこに息継ぎを入れるというのは、歌詞の意味、曲の意味に大きくかかわるそうです。
また、ブレスポイントを入れるか入れないか迷うような箇所があったとき、
「声量のある人なら歌いきれるけど、ひょっとしたら歌いきれない人もいるかも・・・?」
と思ったなら、あえて歌詞に助詞(てにをは)を使い、これを抜かしても大丈夫なように作るといいます。
歌手がブレスなしで歌えなかったときに、助詞をいっこ取るだけで覚えてた歌詞そのままで歌える
ようにという工夫なのだそうです。

「そこまで考えてつくるんですねー」

という会場の感嘆の声に対して

「歌うのは女性声優が多いので、こうしとけば「畑さんってわかってるー」ってモテるかもしれないじゃないですか」

と、おどけて答える畑さんがステキすぎます!
まぁ、半分本音かもしれないですが・・・。


番組は終始、こんな感じで3時間もやってました。いやー、面白かった。
他にも、田中公平さんが「プラチナ」(カードキャプターさくら主題歌)のコード進行の
センスの良さを解説したり、「鳥の詩」(AIR主題歌)の出だしの一音の音とりが難しいので
歌手のLiaさんに「これよく音とれましたねー」と話したり、
「For フルーツバスケット」のタイトル命名秘話を、大地丙太郎監督自ら解説したりと、
NHKクオリティで深く深く突っ込んだ番組でした。

ああ、素晴らしきNHKよ。
これからもこういうトガった番組を作り続けてほしいです!


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