紫の物語的解釈

漫画・ゲーム・アニメ等、さまざまなメディアにひそむ「物語」を抽出して解釈を加えてみようというブログです。

猫が主人公の作品いろいろ

2010-01-27 22:03:02 | その他
僕は猫が好きだ。

愛らしい仕草。
のんびりとした生活スタイル。
人間に媚びないが、餌なりはきっちり要求する自分勝手さ。

どれをとっても魅力的。
今日は猫が主人公となっている文学作品をとりあげてみる。


◆【吾輩は猫である】 夏目漱石(amazon)



文豪・夏目漱石の文壇デビュー作。
「吾輩は猫である。名前はまだない。」の書き出しはあまりにも有名。
全編、自らを"吾輩"と称する猫が語り手となり物語は進行する。
"吾輩"は人間を小馬鹿にしており、猫こそが万物の霊長であると信じて疑わない。
人間が自分の食事を用意したり世話をするのが当然と心得ており、
少しでも餌が遅れたりすると、「これだから人間は・・・」的な態度をとる。

ラストがちょっとあんまりな感じだが、明治の世に猫の語りの小説とは、なかなかに
斬新だったことだろう。


◆【猫の事務所】 宮沢賢治(amazon)



登場人物(?)は、ほとんど猫。あと、獅子。
猫の歴史と地理を調べる「猫の第六事務所」が舞台。書記の「竈猫」が主人公となる。
この竈猫が、同僚の猫に陰惨ないじめを受けるだけの話なのだが、このいじめがひどい。
殴る、蹴るという単純なものではなく、精神的にくる類のもので、克明に描写される。

物を落としたのを拾おうとしたのに理不尽にキレられたり、
悪質なうわさを上司に吹き込まれたり、
挙句、仕事の上で完全無視。

猫の社会も大変なのね・・・。とゲンナリするような内容。


◆【100万回生きたねこ】 佐野洋子(amazon)



主人公の猫は、死んでも何回も生まれ変わって飼い主を転々とする。
あるときは王様の猫。あるときは泥棒の猫。あるときはおばあちゃんの猫。
でも、猫は歴代の飼い主たちはみんな嫌いだった。
猫は自分がいちばん好きだった。
あるとき、猫は誰の猫でもなかった。
そして、ある白猫に恋をした・・・。

大人になってから読むと、涙腺的に瞬殺される超名作絵本。
【カウボーイ・ビバップ】のスパイクがこの話を嫌いだと言っていたが、
彼は絶対好きだと思う。


◆【猫の地球儀】 秋山瑞人(amazon)



はるか未来。放棄された宇宙ステーションには、人間はもう生きてはいなかった。
この世界の支配者は「猫」たち。
彼らは人間の残した高度な文明を利用し、自分たちの世界観をつくりあげてきた。

宇宙にぽっかりと浮かぶ『地球儀』を、かつての自分たちの故郷であると信じた猫が
主人公の「幽」(かすか)である。
幽は地球儀に向かうためのロケットを建造する・・・。

作者は【イリヤの空、UFOの夏】の秋山瑞人。
猫たちのコミカルな描写や、機械・宇宙などのSF的描写も素敵。
科学と宗教の対立など、哲学的な面もある、電撃文庫・初期の名作である。


ざっと、猫が主人公の作品を挙げてみた。
文学作品に限ってみたけど、漫画なら【ホワッツマイケル】とかも良いね。
とにかく、猫最強。猫狂い。
うちの実家の猫、元気かしら・・・。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【幽遊白書】美しい魔闘家・... | トップ | 【世界樹の迷宮】常に瀕死 カ... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
100万回生きた猫 (mana)
2012-09-08 10:03:51
私もスパイクはあの絵本好きなんだと思います。
…ビバップの解釈もいつか日記にして頂けますと幸いです。
返信する
Unknown (Unknown)
2013-01-26 22:29:51
>明治の世に猫の語りの小説とは、なかなかに
斬新だったことだろう。

漱石といえば「明治時代の文豪」というイメージが強いけど、
生まれたのは江戸時代で、急速に文明開化しつつもまだ江戸の文化の名残もあった頃の育ち。
で、江戸末期には、広重や国芳などによる
擬人化した猫たちが人々の生活場面に扮するユーモラスな戯画が人気を博したりしていた。

だから、むしろ今の私たちよりも当時の方がもっと
猫の語りによる日常コミカル&風刺も効いた作風というのは
誕生の背景や受け入れられる土壌があったかも知れない。
「昔の人たちにはこんな"斬新"な発想は珍しかっただろう」なんて軽んじていると
意外とそうでもなかったりする。
返信する

コメントを投稿

その他」カテゴリの最新記事