紫の物語的解釈

漫画・ゲーム・アニメ等、さまざまなメディアにひそむ「物語」を抽出して解釈を加えてみようというブログです。

【るろうに剣心】緋村剣心の物語を追う[星霜]

2010-06-08 23:14:46 | ○○の物語を追う
前回からの続き


  落人群

神谷薫(享年十七歳)の葬式には大勢の人が集まり、涙を流した。
ただ、葬列の中に緋村剣心の姿はなかった。



剣心は、「落人群(らくにんむら)」に居た。
幕末から明治へ、時代の移り変わりとともに
時代に背かれた者、時代から背いた者、社会に弾かれた者たちがいた。
彼らが身を寄せ合う、人生を捨てた者たちの最終領域。
それが、「落人群」だった。

剣心は逆刃刀を封印し、ただ落人群にうずくまる。
左之助や弥彦が仇討ちをうながすが、うつろな瞳で「もう疲れた」と
言うばかりであった。
これこそが、雪代縁の用意した究極の復讐・生き地獄であった。



左之助は剣心に失望し、東京を去る。
一度は見込んだ男が落ちぶれていく様を、これ以上見ていられなかった。



東京へ到着した操と蒼紫は、薫の死に愕然とする。
生前、薫は縁を止めるために京都の寺に保管されている巴の日記帳を
持ってきてもらうよう、操に手紙を送っていた。
しかし、その日記帳は一足遅れで間に合わなかったのだった。

操は、せめてこの日記帳を縁に読ませ、自分のしたことの無意味さを悟らせ、
薫の墓前で土下座させようと提案する。
操の威勢の良さに火をつけられた弥彦は、いつまでも沈んでいないで
まずは動くべきと悟り、縁を捜索する決意を固める。

弥彦は、落人群の剣心に縁を捜索する旨を告げた。
そして、縁に薫を殺した罪を償わせる、とも。
その後は、以前剣心が言っていたように神谷活心流で強くなり、
剣心のように目に映る人たちのため剣を振るう、とも。



神谷道場で待っている―。
そう告げて弥彦は、剣心のもとを去る。
どうやら、剣心は落人群に腰をおろすには少し早過ぎるようだ。


  希望

数日後、神谷道場の決戦で捕縛された鯨波兵庫が脱獄し、
町で暴れているとの情報が弥彦のもとに入る。
剣心の生き方を継ぎ、目に映る人たちのために剣を振るうことに決めた
弥彦は燕の制止も聞かずに鯨波を止めるため戦場へ赴く。



このままでは弥彦が死んでしまう。
弥彦を救えるのは、弥彦が憧れる日本一の剣客・剣心だけ。



燕は、剣心に助けを求めに落人群へ駆け込み、訴える。
「弥彦君を助けて」と。



剣心の胸に、「助けて」という声が響いてゆく。
一度は捨てたはずの想いが胸の奥でうずくのを感じる。
変わらず剣心を信じ続ける人たちが、剣心の帰りを待っている。

逆刃刀の鎖を断ち切り、剣心は立ち上がった。
剣心を動かしたのは「仇討ち」でも「贖罪」でもない。
「助けを呼ぶ声」であった。
それが剣心の真実であり、剣心はその声に応えるべく立ち上がった。

剣心が探し続けた、人斬りの罪を償う「答え」は、
どうやら初心と変わらぬ「目に映る人たちのために剣を振るう」ことであった。
巡り巡って、結局は同じところに辿り着いたようだ。



緋村剣心は復活した。
剣心の復活と弥彦の勇気により、鯨波兵庫は再捕縛。
同じ頃、故郷・信州で大暴れしてきた左之助も剣心のもとに戻ってきた。

さらに、嬉しい知らせはまだあった。



弥彦たちは蒼紫の提案により、薫の墓を暴きその死体を確認していた。
その死体は、精巧な人形であったのだ。
からくり芸術家の外印が、その芸術家としての技術のすべてをつぎ込んだ
作品であった。
姉の死を眼前に見て以来、トラウマで姉と同年代の女性を殺せない縁と、
芸術家としての自分の作品の精巧を誇りたい外印の利害が一致し、
このような奇妙な状況が出来上がっていた。

兎に角、薫は生きているのだ。


  決戦

「抜刀斎が生き地獄から復活した」という知らせを聞いた縁は、
剣心を生き地獄ではなく本当の地獄に叩き落すことが巴の真の願いだと解釈。
孤島のアジトに乗り込んできた剣心と決着をつけようとする。



孤島のアジトには、無残な人形の姿とは違った元気な薫の姿があった。



剣心と縁の、最後の闘いが始まる。



二度目の奥義の打ち合い。
しかし、今度は状況が違った。
迷いを払った剣心の左足の踏み込みは、虎伏絶刀勢を破り、
天翔龍閃が縁の刀を砕いた。
ここに、決着はついた。

捕縛される縁に、操が京都から持ってきた巴の日記帳が渡される。
縁は、その日のうちに日記帳とともに護送船から姿を消した。


  星霜



縁との闘いの後、剣心は薫と二人で巴の墓を参った。
剣心は巴に
「ありがとう」
「済まない」
「さようなら」
と告げる。
墓には剣心たちより前に誰かが訪れた形跡があり、かんざしと白梅香が
添えられていた。
それは、剣心が落人群で見た"オイボレ"と呼ばれた老人が持っていたものと
よく似ていた。


東京に帰った後、剣心は斉藤一に決闘状を送る。
京都の闘いの後から、剣心の身体は徐々に悪くなっていた。
もともと飛天御剣流を使うには体躯に恵まれていなかった剣心は、
奥義の会得が引き金となり、身体への負担が一気に増していたのだった。
命の別状はないが、このままではあと四、五年のうちに飛天御剣流は
使えなくなってしまうという。
そうなる前に、剣心は斉藤と決着をつけるつもりだった。



しかし、斉藤は決闘の場には現われなかった。
斉藤は、剣心が最後まで不殺を貫いたことに失望していた。
この度の人誅事件で、剣心が抜刀斎に戻ることはもう無いと悟った斉藤は、
剣心の前から姿を消したのだった。


仲間は次々と新しい道を見つけて旅立っていく。
操と蒼紫は京都へ帰り、恵も故郷の会津で医院を開業するために東京を去った。
そして、親友・左之助も。



狭い日本を飛び出し、世界に向けて旅立って行った。


そして、時は流れ、明治15年。剣心33歳。



薫との間に息子・剣路(けんじ)を設け、すっかり神谷道場に落ち着く。
すでに飛天御剣流はほとんど撃てなくなっていた。

弥彦の元服の祝いの日。
剣心は逆刃刀を手に、弥彦と立ち合う。
「これまでの闘いの中でお前が感じた全てを、渾身の一撃に込めて撃て」
と、弥彦の一撃に魂が有るかを見た。そして。



十五年もの月日を共にあった逆刃刀を、弥彦に託す。
剣心の志の象徴であった刀が、今新たな世代へと引き継がれたのだ。

ここに、緋村剣心の闘いの物語は幕を閉じる。
しかし、彼の人間としての物語は、まだまだ始まったばかりだ。




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3 コメント

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Unknown (MR)
2012-09-25 17:33:16
まとめ方が上手ですね★
すごく真剣に見ちゃいました^^
返信する
超・遅ればせファンです (ハナママゴン)
2015-01-28 18:52:35
実写映画版をDVDで見たのがきっかけで『るろ剣』のことを知りました。
こちらの記事、剣心の半生がわかりやすくまとまっていて一気読みしてしまいました。

事後報告で申し訳ありませんが、自分の拙ブログ記事にリンクを貼らせていただきました。
何とぞご容認いただけますよう、お願い申し上げます。
返信する
Unknown (t)
2015-05-23 19:39:40
まとめ方ウマすぎww
返信する

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