紫の物語的解釈

漫画・ゲーム・アニメ等、さまざまなメディアにひそむ「物語」を抽出して解釈を加えてみようというブログです。

【るろうに剣心】弥彦の物語を追う[第二幕]

2011-03-25 01:45:58 | ○○の物語を追う
前回からの続き


  剣心、京都へ



ある日、神谷道場を一人の警官が訪れた。
その男は、かつて血風吹き荒ぶ幕末の京都で、当時人斬り抜刀斎と呼ばれていた剣心と
幾度も死闘を繰り広げた元新撰組の男・「斉藤一」であった。

斉藤は剣心に幕末以来の戦いを挑む。
二人の戦いは鬼気迫るもので、今まで弥彦が目撃してきた剣心の戦いとは一線を画していた。

「これが・・・幕末の闘い・・・」

その場にいた全員が息を飲むほどの迫力ある戦いだった。
どちらかが死ぬまで続けられるかと思われた死闘であったが、
意外な人物の登場により、幕が引かれることとなる。



明治政府内務卿「大久保利通」。
弥彦は知らなかったが、明治維新を成し遂げた中心人物の一人である。
斉藤一は大久保によって剣心の力量を測るために遣わされていたのだった。

大久保は剣心に「志々雄真実」の暗殺を依頼する。
志々雄真実は、剣心と同じく維新志士側の人斬りとして幕末に活躍した人物であった。
しかし、用済みになるとともに明治政府によってその存在を葬られていた。
・・・はずだったのだが、実は志々雄真実は生きていたのだという。
そして現在、志々雄は明治政府に復讐を行うかのごとく、兵を集めて
日本全土を巻き込む反乱を企てているのだという。

大久保は、剣心にそれを阻止してもらいたいと告げた。



これには当然、神谷道場の一同揃って大きく反発した。
もちろん、弥彦にも大久保ら明治政府の言い分が理不尽に聞こえた。

難しい話は自分にはよくわからないが、明治政府に暗殺されかけた志々雄と同様に
まかりまちがえば、剣心だって暗殺されていたかもしれない。
弥彦は、今も昔も自分たちの都合で暗殺だの抹殺だのを言う明治政府の偉い人物と、
人斬りだった過去を悔い、不殺を誓って流浪人として目に映る人々を助けている剣心とで
大きなギャップを感じずにはいられなかった。

結局、その日に話はまとまらず、大久保は神谷道場を辞した。

しかし、その翌日大久保は志々雄の手の者によって暗殺されてしまったのである。
この事件に直面した剣心は、志々雄を阻止することを決意。
明治十一年五月十四日夜、剣心は薫のみに別れを告げ、
志々雄が拠点を構える京都へと旅立っていったのであった。


  剣心を追う

剣心が京都へ旅立ったという知らせを聞いて、左之助はすぐに剣心を追う決意をする。
弥彦も当然、そのつもりであった。



しかし、斉藤一は、弥彦と左之助を剣心の「弱点以外の何でもない」と告げた。
弥彦たちが京都へ行けば、志々雄は必ず弱点を突いてくる。
剣心は弱点である弥彦たちを守りながら戦わなければならなくなるというのが
斉藤の言い分である。



左之助は斉藤の指摘に対し、だったら弱点にならないように強くなればいい!
と、道中修行しながら京都へ向かうことを決意。
弥彦にも薫を引っぱって京都へ連れてくるようにと言い渡す。
弥彦も、剣心の弱点となるつもりはさらさら無かった。



剣心に別れを告げられたショックで寝込む薫を叱咤に来た恵の心中を察し、
剣心を必ず連れ帰ることを約束する弥彦。
弥彦は剣心を通して、あらゆる人の気持ちに触れた。



そして、薫。
剣心が唯一別れを告げた相手である。
剣心を連れ戻せるのは、おそらく薫だけ。
すでに恵からの叱咤を受けていた薫は、それに続く弥彦の言葉によって
ようやく、京都へ向かう決心をした。

神谷薫と明神弥彦、二人連れだって京都へ向かう!


  京都にて



京都に着いた弥彦と薫は剣心の居場所を知った。
剣心は、飛天御剣流の師・比古清十郎のもとで御剣流の奥義の伝承を受けようとしているという。
薫と弥彦が自分を追って京都へとやってきたのを目の当たりにした剣心は、
複雑な気持ちを抱いたが、どこかほっとしたようだった。



弥彦は、流浪人となってからの剣心の生き方を比古清十郎に事細かく伝えた。
比古は弥彦の話を聴くことで、剣心が飛天御剣流の真の理を会得していたことを知る。
これによって、剣心は比古から飛天御剣流奥義を伝授する資格を得たのだった。




奥義を得、志々雄のアジトへ乗り込もうとする剣心。
弥彦は剣心についていくことを望んだ。
京都へ着いてからというものの、稽古を欠かした日はない。
自分は剣心が思っているよりずっと強くなっている。決して、弱点にはならない!

が、剣心は弥彦の志願とは別の答えを示す。



剣心が志々雄のアジトで戦っている間、志々雄側の別の兵が拠点・葵屋を襲撃する可能性がある。
その場合に備え、弥彦には防御(まもり)の力として葵屋に残ってほしいのだという。
弥彦は剣心の望みを察し、葵屋に残ることを決意した。


  決戦



志々雄一派が葵屋を襲撃する可能性があるという剣心の予測は的中した。
葵屋は志々雄の兵に包囲されたのである。
この戦いにおいて、志々雄一派の幹部「十本刀」が何人か出陣していた。



弥彦は、十本刀が一人「飛翔の蝙也」と対決することとなる。
京都へ来てから初めての実戦である。
その上、相手は敵の幹部。否が応にも緊張が走る。



弥彦には「一番多く一番そばで剣心の闘いを見てきた」という自負がある。
相手がガキだからとあからさまに侮るこの男に負けるつもりはない!



しかし、そうは言っても、相手は十本刀である。
爆弾による爆風で空中を自在に飛翔する蝙也に翻弄され、弥彦は手も足も出ない。
「葵屋の中へ逃げ込め」という声が響く中、弥彦は剣心の言葉を思い出していた。
「いざというときの防御(まもり)の力」としてここに残った自分。
自分はまだ、相手に一太刀も浴びせていない。
ここで退くわけにはいかないのだ!



弥彦の大きな底力が発揮された。
宙空を飛翔する蝙也の上を取るため、爆風と戸板を利用して相手の頭上をとった弥彦。
そのまま、剣心の得意技・龍槌閃を見様見真似で再現してみせたのだった!
満身創痍の状態でも相手の隙を見逃さず起死回生の一撃を狙った弥彦の姿は、
あたかも剣心が闘っているようですらあった。




  あきらめない!



全員満身創痍の状態において、葵屋に信じられないような巨人が現れた。
十本刀「破軍の不二」である。
そのあまりの巨大さに、誰もが絶望し、誰もが観念したが、弥彦だけはあきらめなかった。



「剣心が帰ってくるまで諦めるな!」
自身が最も傷を負っていながら、絶望に沈む仲間を叱咤する弥彦。
どんなに絶望的な状況においても、弥彦の心は決して折れはしない。



それは理屈ではなかった。
「剣心を信じる」ただ、それだけの想いが弥彦の心を決して折れない強固さで支えていたのである。



そして、その心身は打ち砕かれることにはならなかった。
剣心が事前策として、師・比古清十郎を葵屋の守りに走らせていたのである。
比古は弥彦の気迫を褒め、葵屋の絶体絶命の危機をあざやかに救ってみせたのだった。

ほどなく、志々雄を打ち倒した剣心が帰還する。
志々雄の反乱は未然に阻止されたのだ。


  勝利のあと



剣心たちは志々雄一派との闘いに勝利した。
弥彦は葵屋で闘っている最中は無我夢中だったが、闘いが終わってしばらくすると勝利の実感がわいてきた。

「俺は勝った!俺は強い!!」

正しかったのは、志々雄一派ではなく俺達の方だったのだ。
しかし、剣心はそれは違うと諭す。
勝った方が正しいというならば、それでは「弱肉強食」を掲げた志々雄が正しいことになる。
何が正しいのかなどはわからない。
だから、自分の正しいと思うことを信じて闘っていくしかない、と剣心は語った。

剣心の言葉を聴きながら、弥彦は自分がまだ未熟であることを悟る。



ともあれ、闘いは終わった。
弥彦はこの闘いを通して、大きく成長しようとしていた。


  目指すべき男達



崩壊した志々雄のアジトの跡地を見に来た弥彦は、そこで左之助と一緒になる。
左之助は志々雄のアジトでの闘いに参加していたが、その際に行方不明になった斉藤を
探しに来ていた。
それも、左之助は斉藤の生死を確かめに来たわけではなく、失われた斉藤との勝負に
決着をつけにきたようである。
しかし、それも無理なようなので、左之助は斉藤に「勝つ」に変わる、「超える」という
答えを見出したようであった。
そんな左之助を見て、弥彦も答えをみつけた思いがした。



「超える」!
自分が未熟であるならば、それを乗り越えて前へ進めばいい!



そうすれば、確実に剣心達に――
凄い男達に近づけるんだ!!

弥彦は決意も新たに、前へと進みだす・・・。


 次回へ続く

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6 コメント

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大久保利通の暗殺 (るろ剣ファン)
2016-03-13 06:09:30
大久保利通が神谷道場に現れた翌日暗殺されたとありますが、暗殺されたのは神谷道場に来てから一週間後の5月14日です。
大久保卿も一週間待つから考えてくれと剣心に言ってます。
返信する
Unknown (Unknown)
2020-03-27 23:09:46
考えてみれば、最初からこの世界に正しいも間違いもない。ただあるのは、何方の方がマシなのかしかない。剣心と志々雄の何方が違うかは、正しいかではなく、何方の時代がマシに思えるのか、判断しなければならない。正しいなどと貴殿にすれば、必ずそこに、本当の欲望や負の感情などが生まれる。
返信する
Unknown (Unknown)
2020-03-27 23:20:48
剣心と志々雄、何方が正しいかではなく、何方の時代がマシに思えるのか、判断するしかない。剣心は、弱肉強食の時代だけは絶対に間違っている言ったのも、考えてみれば、志々雄は未来を見てなどいないから。正しいのを貴殿にすれば、それこそ欲望や負の感情などが生まれてくる。何方がマシなのか、判断することこそ、底に迷いを捨てられると思う。恐らく、剣心は志々雄よりずっとマシだった訳です。
返信する
Unknown (Unknown)
2020-03-27 23:26:40
志々雄は、何の未来を見てなどいなかった。だが、剣心は自分自身の明治維新を終わらせる為に、志々雄真実を倒した。弱肉強食の時代だけは絶対に間違っているのは確か。恐らく、マシだったのは、剣心の方だった様です。マシか判断するこそ、底に真実を見極める可能性があるから。剣心は主人公として、志々雄を倒した訳ではない。例え、主人公だったとしても、志々雄の様に正しいかを貴殿にするだけは、絶対に間違っている。
返信する
Unknown (Unknown)
2020-03-27 23:33:22
この世界に、価値観が違うのは、私にとっては痴がましいことなのです。正しいか間違いかで、判断するこそ、本当の欲望や負の感情が生まれる。マシか判断するこそ、剣心と志々雄の何が違うか、ハッキリ判断できる。優先するなら、マシかどうかです。剣心は、志々雄よりずっとマシだった訳です。
返信する
Unknown (Unknown)
2020-03-28 00:06:00
もし、相手のやっている事が、間違いと言い切る事が、欲望や負の感情が塗れてる事に繋がるから。しっかりするなら、正しいか間違いか関係なく、マシかどうかで見極める。それこそ、真実を見極める比率だと思います。
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