紫の物語的解釈

漫画・ゲーム・アニメ等、さまざまなメディアにひそむ「物語」を抽出して解釈を加えてみようというブログです。

【るろうに剣心】緋村剣心の物語を追う[人誅]

2010-06-05 22:34:03 | ○○の物語を追う
前回からの続き


  人誅

明治11年晩夏。剣心29歳。
鳥羽・伏見の戦い以降、流浪人として全国を流れてきた剣心にとって
初めて安息の場所ができた。
神谷道場である。

京都への旅の前までは、流浪人ゆえいついなくなっても良いように
必要以上には人との関係を深めようとはしていなかった。
にっこり笑っていても、心のどこかで一線を引いていた。
それが、京都への旅の前までの剣心であった。



しかし、京都から帰ってきてからは、毎日のように弥彦に稽古をつけるようになった。
薫は、以前は剣心がいつかいなくなるのではないか、と心のどこかで
心配していたが、弥彦に稽古をつける剣心を見るようになってからは
以前のように、剣心がいなくなることの不安は軽くなったようで、
二人、自然にしっくりした関係ができあがっていた。
闘いの影は、剣心たちの周囲から去ったように見えた。

しかし。

神谷道場ひいきの牛鍋屋「赤べこ」を訪れた剣心は、ある人物とすれ違う。
それは、剣心が鳥羽・伏見の戦いで右腕を斬り落とした幕府側の武士であった。
相手は剣心に気付かなかったようだが、剣心は言い知れぬ嫌な予感を
覚えずにはいられなかった。
そして、その嫌な予感は現実となった。



晩夏の夜に、異様な轟音がとどろいた。
上野山から、「赤べこ」に向けてアームストロング砲の砲撃がなされたのだった。
上野山には、犯人が書き残したと思しき書き置きがあった。



「人誅」…。
"たとえ、天が裁かなくとも 己が必ず裁きを下す"
という、「天誅」とは全く逆の正義の意思表示である。
剣心は、過去人斬りとして大勢の人を殺めておきながら天の裁きがない自分に
己らの手で裁きを下そうとする復讐者たちがついに現われたことを予感していた。


  雪代縁

赤べこ襲撃の翌日、
剣心がかつて一度だけ薫の出稽古に同行したことのある前川道場、
剣心と数回やりとりのある、ヒゲめがねこと、警察署長の自宅
が二点同時襲撃された。
敵は、予想以上に剣心のことを調べているようだった。

「一体何者が?」
「どうしたら自分は許される?」

警察署長を襲撃から守り切った剣心が、悩みながら歩いていると、
一人の人物が剣心の前に姿をあらわす。



それは、かつての剣心の妻・巴の弟の「雪代縁(ゆきしろえにし)」であった。
10年前の鳥羽・伏見の戦いの硝煙の中、一度見かけてからそれきりだった縁は
長身の青年となって剣心の前に再び姿をあらわしたのだった。

この縁が、今回の「人誅」の首謀者であるという。
巴を失った縁は、戊辰戦争後、上海へ渡っていた。
縁は抜刀斎への復讐、巴の仇を討つという一念で、魔都上海を生き延びた。
そして、上海マフィアの武器密造組織の頭目まで昇りつめたのだった。
縁の同志は自分も含めて六人。
それぞれ、抜刀斎に浅からぬ怨恨を持つ者たちである。
縁は、この六人で今回の人誅を実行するのだという。



10日後、神谷道場に六人の同志が現われる。
その日こそ、縁たちの「人誅」の完成の場である。
縁の、剣心に対する宣戦布告であった。


  過去を告白

今回の人誅騒動は、すべて過去の人斬りの罪に起因している。
その罪を償うため、一端は「目に映る人々の幸せを守る」という
不殺・流浪人の道を歩いてきた剣心であったが、
では、命を奪った者の遺族やゆかりの深い者たちへの償いはどうするのか。
答えが見つからないまま、決戦の日は迫る。
剣心は、過去の幻に苛まれ、気が狂いそうになる。

しかし、一連の騒動の中「自分だけ弱いのは嫌だ」と一心不乱に稽古に臨む弥彦と、
そんな弥彦に神谷活心流の奥義を伝授しようとする薫を見て、
剣心は己の過去を皆に告白する決意を固める。

今はこの人たちを守りたい。
縁たちと闘おう。
人斬りの償いの答えを出すのはその後でいい。

そう思った。



剣心は皆にすべてを告白した。
十字傷にまつわる恨みの話。
斬殺してしまった、かつての妻・巴。その弟の縁のこと。
皆は衝撃を隠せなかったが、10日後の決戦においての剣心と縁の
「私闘」の重要性を悟った。
縁との私闘では、どのような決着になるのであれ、剣心自らの手で
決着をつけなければ意味がないのだ、と。

薫は、剣心の前妻・巴の存在を意識せずにはいられなかったが、
自分の気持ちを正直に剣心に伝えるのだった。



「剣心と一緒にずっと居たい」

薫の精一杯の告白に、剣心の答え。
京都から道場に帰ってきたときの「ただいま」という言葉。
それは、流浪人となってから初めて口にした言葉だったという。
つまりは、そういうことだった。

決戦は、その翌日に迫っていた。


  人誅完成



約束の日、神谷道場に「六人の同志」があらわれる。

「雪代 縁(ゆきしろえにし)」
「外印(げいん)」
「八ツ目 無名異(やつめむみょうい)」
「乙和 瓢湖(おとわひょうこ)」
「戌亥 番神(いぬいばんじん)」
「鯨波 兵庫(くじらなみひょうご)」

外印以外は、剣心に因縁を持つ者たちである。
対する剣心たちは以下の布陣で迎え撃つ。

剣心が最前線に立ち、左之助が前庭を中心とする道場周囲。
薫、弥彦が道場の中。弥彦は最悪、攻めに転じる。
恵も道場の中で、怪我人の治療を実施する。

宵の口、夏祭りの花火と共に六人の同志の襲撃は始まった。
鯨波、戌亥、乙和、八ツ目、外印、と次々と襲撃者を撃退する剣心たち。
やがて、敵は縁のみとなった。

剣心は、闘うことに迷いはなかった。
今は全力で闘い、その後、巴を殺めた罪を償う「答え」を必ず見つけ出す
と、剣心は縁に告げる。
が、縁はその「答え」は既に自分が用意しているのだと不吉な発言をする。
兎に角も、二人の私闘は始まった。



飛天御剣流奥義・天翔龍閃(あまかけるりゅうのひらめき)
 対
倭刀術絶技・虎伏絶刀勢(コフクゼットウセイ)



二人の奥義のぶつかり合いは、剣心が競り負ける結果となった。
天翔龍閃の要である「左足の踏み込み」が、人斬りの罪の意識によって
抑圧されてしまったための敗北であった。
そして、この敗北は最悪の結果を生む。

道場に流れる白梅香の香り。
それは、巴が生前よくつけていた香水の香りであった。
縁は、この香りの先に剣心が罪を償うための「答え」があると言う。
その先には、





剣心が愛しはじめた、二人目の女性・神谷薫の無残な姿があった――。


 次回へ続く

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