土木の工程と人材成長

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ICT施工「時々刻々の進化」に驚く

2020-02-27 10:29:24 | 建設経営
 先ごろ(1月28日)、高知大学で大林組技術研究所・古屋弘氏の5Gの講演会を拝聴した。演題は、「建設分野の今日と、将来に向けて」で、主として高知大学生向けの「建設業はかっこいい」という、学生の就職先として建設業界に誘おうとする目的で開催されたものであった。

 講演内容で驚いたのは、AIを使って自律(自動)で盛土をダンプトラックの荷台に載せたり、人手不足の時代に合わせ、2台の重機をひとりのオペレーターが遠隔操作したりと、夢の世界のようなことを紹介してくれていた。まさに、建設分野におけるICT施工は、時々刻々と進化している様がせまってきた。

 ところで、上記の「自律運転」とは、バックホウが自分で積み込む土砂の位置を確認し、ダンプトラックに積み込む「自律運転バックホウ」の一連の作業のことである。重機とは別の位置にあるカメラが土砂の位置を探しだし、バックホウに伝え、バックホウが土砂をダンプの荷台に積み込む。この時、バケットで土砂を抄うと、その都度形が変わるしダンプの荷台の姿も一回一回変化する。当たり前のことだが、これらをその度に認識し、作業しなければならない。この時5Gのスピードがモノを言うわけである。

 古屋氏は、「月に人間を送り込んだ時代の電波は、地球から月へ送信し、返ってくるまでに3秒ほどかかっていた。月の裏側に入った衛星は、どうなっているかまったく分からない。月面着陸船とのやり取での3秒というと相当長い時間である。よくも月面に人を送り込んだものだ」と、感嘆していた。この時代の最大通信速度は10キロ・ビット/秒で、5Gは、メガを超えて10ギガという超高速なのである。5Gは「低遅延」が売り物である。

 また、2台の重機の遠隔操作は、6つの大型モニターを見ながら、1台は手で、もう一台は声で動かしていた。声で動かす重機にはAIが搭載されている。遠隔操作は、部屋の椅子に座って操作するのだが、敢えて音と振動を与えた方が、臨場感があって良いとのこと。これを「体感型操縦席」と言うらしい。この点では、人間の思考と認識感覚はなんとも面白い。

 高知県技術公社の岡上泰三氏も、スイスの建設業では日本の3倍の生産性があり、タブレット端末を使い作業時間実績を記録していると講演されていたが、古屋氏もタブレットの現場活用の話をしていた。15分ごとに作業記録を入力するとのこと。これは全産業で行われているらしい。日本は世界の動向から隔絶されている感がした。

 これらを含め、例えば盛土の過転圧による強度低下を回避することもICT施工では可能となる。つまり確実な品質管理ができるのである。また、これまで既存の重機にはMG(マシーン・ガイダンス)しか搭載できなかったのだが、トプコンが先日MC(マシン・コントロール)も各社の油圧ショベルに搭載可能とした。ICT施工関係の進化スピードがますます速くなってきており、文字通り「時々刻々の進化」である。

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