土木の工程と人材成長

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コンクリートの弱点を克服したNDR工法の魅力と成功要因

2022-05-13 14:04:17 | 建設経営
1 コンクリートの歴史・特徴・性質
セメントは、天然資源であるサンゴなど石灰質の殻を持つ生物遺骸を焼いて造られ、コンクリート構造物は、セメントと砂や砂利などの天然資源を混ぜて築造される。コンクリートは安価で使いやすく、イフタフ遺跡では9,000年前から、中国では5,000年前から使われていたと言われる。

だが、コンクリートは圧縮には強いが、引っ張りに弱い。さらに硬化時の発熱膨張と収縮、さらに築造後も外気温による膨張・収縮を受けるという弱点を持つ材料でもある。ただ、舗装や擁壁のように、平板的な構造物は10mごとにアスファルト繊維などで造られた目地材を入れて、膨張する欠点をカバーしてきた。が、空洞を持つ暗渠などの三次元的構造物は、凝結時の膨張と収縮に対応させるために、さらに5mとか3mごとにひび割れを生じさせる誘発目地を入れ、言わば細切れにすることで対応している。

2 凝結時の膨張・収縮課題を克服したNDR工法
コンクリートの硬化時における弱点である発熱による膨張と、引き続いて起こる収縮に伴うひび割れ問題解決という、やっかいで誰もが悩まされ続けてきた現象に対して、NDR工法は真正面から打開しようと取り組んできた。まるで巨大なモンスターに立ち向かうがごとくであり、この姿勢には尊敬と共に驚嘆する。

しかも、これまでセメント製造メーカや大手ゼネコンなどが、この硬化時の膨張・収縮問題解決に、NDR工法と同種の方法などで挑戦してきたが、いずれも途中で断念せざるを得なかったという困難な課題を、なぜNDRだけが成功したのか不思議にも思えてくる。

NDR工法は、オキシカルボン酸塩系の水和熱抑制型超遅延剤を、セメント量に対して1%程度を入れて生コンクリートを製造することで凝結時間を10日前後調整して、コンクリートの硬化時の膨張・収縮を緩和し、ひび割れの発生を防止するものである。しかも、構造物全体に混入するわけではなく、外部拘束をうける接点に、コンクリートの厚さによって異なるが、数十cm程度打設するだけでよい。したがって、NDRの材料費は少なくてすむという優れた工法である。

この接点だけに着目するという視点(選択)は、これまでのひび割れ発生箇所の観察と、さらに幾つかの先行する別のアイデアの組み合わせ等により開発されたものではないかと考えられる。いずれにせよ、着眼点の卓越性、優秀さ、あるいは勘の良さには驚嘆すべきものがあるといえよう。

3 NDR工法開発時の副次的な問題解決
さらに、NDRを添加するとブリーディングという生コンクリートから発生する余分の水が長時間浮き出てくるという課題を処理しなければならないという、新たな問題が発生している。だが、これも吸水シートを型枠に貼付けることで問題解決をしている。通常、ブリーディング問題が発生した時点で、開発を断念するのが人の常ではないかと考えられる。その点NDRの開発者は、ブリーディング問題発生にも関わらず、諦めることなく問題解決に向かって果敢に挑戦し続け、吸水シートを貼付けるというアイデアによって解決したことは素晴らしく、敬服に値する。

ただ、NDRはセメントとの相性があり、セメントはJISを満足する製品ではあるが、バラツキの範囲が大きく、現時点においては2つ程のセメント工場の製品への適用は難しいようである。この点ではまだ課題が残っており、完全完成品とは言いがたいところがある。したがって、念のため生コンクリート工場で試験練りを行い、事前に確認する方法がとられている。

4 NDR工法開発の高い志を称賛する
上記のほかにも、開発途中では数々の問題発生があったのではないかと推測される。そのうちのひとつでも解決できていなければ、成功には辿りつけない。いずれにせよ、成功までこぎ着けたことは、問題解決に立ち向かうあくなき挑戦姿勢と、継続的に諦めない情熱や闘志、の高さに驚嘆すると共に、優れた土木技術者として尊敬する次第である。おおいに称賛したいし、し過ぎるといことはないと考えている。

NDR工法開発にあたっての問題解決には、これまで人類が発展し反映してきた脳の使い方や継続的な成功するまで諦めないという行動原理等々共通の、言葉ではいい尽くせない秘密のようなものが凝縮されているのではないかと考えられる。

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