土木の工程と人材成長

土木建設の工程管理や組織運営、そして人材成長の話題や雑学を紹介します

ICT施工の課題と展望

2019-10-08 10:30:33 | 建設経営
 国交省の推進するICT施工の第1号と認定された北海道の「道央圏連絡道路千歳市泉郷改良工事」について、砂子組と札幌開発建設部千歳道路事務所が論文を発表している。「平成28 年度 ICT土工における実際の効果と課題について~i-Construction の取り組み事例~」https://thesis.ceri.go.jp/db/files/14747113735976ab2a282cf.pdfである。

 この論文では、当該工事で得られた「効果」や「課題」を取りまとめている。この効果と課題について、それぞれ( )で意見を述べてみたい。

5.まとめ
効果
今回、i-Construction 対応型工事の全国第1 号としてICT 土工の効果を検証するべく各工程においての調査を実施した。全体をまとめると以下の通りとなる。

(1) UAV 測量は、従来の人が行う起工測量と比較すると約50%の短縮が実現されている。

  (場所にもよるが、もっと短縮される現場もあると考えられる。特に、北海道のような平地ではなく、山岳地帯などにおいては安全性と共に、短縮効果は著しいものがあると思われる)

(2) ICT 建設機械を使用することにより初心者オペレーターでも安心して作業することができることと、疲労軽減・ストレス軽減にも繋がっている。

  (図4に心拍数のグラフが示されており、平均心拍数が従来重機は115であるのに対し、ICT重機は89と下がっており、施工における緊張度合いが少なくなっていることがわかる)

(3)初心者オペレーターと熟練オペレーターの比較では、ICT 建設機械を使用した初心者オペレーターは従来機を使用した熟練オペレーターよりも早く作業が出来ている。

 (これは、熟練オペレーターも慣れてくれば、同程度になるものと考えられる)

(4)全体工程で約20%の効率化が実現され、大規模工事になるほど工程短縮が図られるものと期待できる。

(効率化率は、工事内容によって、大きく差が出てくるものと考えられる。もっと大幅に効率化が図られる工事もあろう)

(5)約3 万㎥以上の大規模土工であれば、受注者にとっても収益性が見込める。

(図9にグラフが示されているが、建機のリース代がいくらかによって採算ラインが変わってくる。恐らく砂子組が使用したよりも、もっと安い建機もあるのではないかと考えられることから、地形等にも大きく影響を受けるであろうが、数千m3程度でも採算性が取れるのではないかと考えられる。事実5千m3程度の報告も複数あることから、慣れるという要素も含めて、今後ICT土工の採算ラインが示されてくるであろう)

 以上、確認できた効果として挙げられるが、他にも作業段取りの軽減や仕上がり品質の向上など様々な効果が出ており、有用性の高いものであると実感できた。

課題
効果や有用性について多くを述べてきた一方、課題も確認された。

(1)3 次元データを扱える人材が少なく、確認・修正が出来る人材育成が必要。

(人材育成に注力していくしかないだろう。経営判断が求められる)

(2)各データの容量が膨大で作業するパソコンの要求スペックが高いものであること。また、データ容量が大きいため、ネットワーク環境によってはメール送信等が困難な場合がある。さらに、現状での3 次元データ作成には多様なソフトウェアを使用するため、設備を整えるための投資が必要。

(初期投資は、なにごとをするにも必要であり、コトがコトだけに、投資額も半端ではないであろう。経営判断が求められる)

(3)現況測量および出来形計測において、気象条件による影響を受けやすい。

(衛星の飛行状態や電波が雲で影響を受けること、また、高い山がある場合にも電波が遮られることなど、場所によっては施工が困難なところもあるようだ)

 今後も積極的に取り組み改善していくことがi-Construction 普及への近道となり、更なる生産性向上へ繋がっていくと考える。

(赫々他でもICT施工が論じられている。しかしながら、まだ慣れていないことや、変更金額の問題もあり、なかなか厄介な課題もあるが、慣れの問題も含めて、より充実した報告が待たれる)


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