土木の工程と人材成長

土木建設の工程管理や組織運営、そして人材成長の話題や雑学を紹介します

「技術者に提案を書いてもらいたい高工事成績を獲得して貰いたい」と嘆く営業部長

2017-04-25 19:59:35 | 人生経営
先日、あるセミナーのアンケートに書いていただいたのが標題で、詳しくは、「私は管理職である営業部長なのですが、①総合評価の技術提案を外部コンサルタントなしで自力で作って高得点が取得できるようになりたい。できれば、技術部、工事部だけで作れるようになってほしい。②工事成績で同業者に負けることが多いので向上させたい」と、言うものでした。

 以下、的はずれかも知れないのですが、私なりの回答を書いてみました。

 ①と②は、同じ構造だと思われます。それは、会社の評価が、知財価値に向いていないのではないかという仮説です。きちんとした社員評価システムが無い場合には、会社の文化や風土に関係します。

 現代は知識時代に変っているのですが、依然として労働価値説による、現場での長期時間の頑張りなどを高く評価する気風があると、なかなか知財価値に関する仕事に時間を割こうとはしません。総合評価になって、技術提案や創意工夫など創造力が求められているのですが、これに対応していくためには、全社で方向を転換しなければなりません。つまり、経営幹部がまず方向転換したことを示し、評価も知財を高く評価するのだというメッセージを言い続けなければなりません。

 しかし、言うだけでは動きません。スキルも同時に教育していく必要があります。ですから、最初はコンサルタントなどの支援を受け、文章の書き方や創造力を磨く訓練が必要だと言うことになります。

 このような仕掛けが動いても、なお、意図した結果が出ていない場合には、技術者のモチベーションの問題がありますから、まずは、自尊感情を高めていく必要があります。自尊感情は、子供時代に自身が選択し続けて形成されるものですから、これにも時間が掛かります。また、自尊心が低くても、書く力や創造力がある場合には、満たすことができます。ただ、このような人は少ないので、一歩ずつ自尊心(自負心・自信)をつけていく、育てていくことが必要となります。

 工事成績は、その気にならなければ、なかなか上がるものではないと思います。その気にさせるための声かけや仕掛けなど、一人ひとり異なる方法が必要となる場合もあります。

 まずは、各人の自尊感情なるものがどのくらいのレベルにあるのかを知り、生き方にどう影響しているのかを学ぶことが大切なポイントになります。次に、自分の価値観を知るようにします。価値観に合ったミッションステートメントを書き上げ、そして価値観に沿った目標を立て、仕事に取り組んで行くようにします。折角地球45億年の中で命を受けた一生ですから、自身も悔いのない人生を歩んでいけるよう、会社としてもサポートしていくことが重要です。

 ところで、昨年末に、ある会社の技術提案支援をさせていただいたのですが、営業の方がほとんどを書き、技術者は、あまり手を掛けていませんでした。結果は満点ではなく、90%の得点で、それでも最高点だったので落札することができました。私は、事前にメール添削をし、コンテンツの枠組みも現地に伺う前にお知らせして行きました。2日間の現地支援予定だったのですが、ほぼ峠が見えたので、1日で切り上げてきたところ、後日現地支援が1日だったのでとのことで、支援料金の値下げ要求を受けました。この辺にも価値で見るのではなく時間(どれだけ汗をかいたのか)で判断している気風が見え、もしかしたら、技術者が提案を書くことに熱が入らないのもこの思考構造にあるのかも知れないと思いました。勿論、そうではなく満点が取れなかったということでの値下げ要求であれば、私としては、より納得感のあるものになります。私のことはともかく、なにはともあれ、技術者が前向きになる気風が築かれ、磨かれることを祈り、願うばかりです。

 さて、アンケートをいただいた会社も、提案支援した会社も、このような視点に気づき、経営幹部の考え方が変らない限り、技術者がその気になるのは、なかなか難しいのではないかと愚考した次第です。

自尊心

2017-04-24 19:43:43 | 人生経営
 ブランデン「自信を育てる」プレンティスホール出版、1999.4.18、を読む。ここで、「自信」と訳しているのは「自負心、自尊心」などのこと。Self Esteemの訳で、適当な日本語がないので「自信」としたらしい。

 高知駅のブックオフで108円で買った本。最初に手に取ってから数ケ月後の3回目くらいで、他に買いたい本がなかったので買った本だ。後で楽天で見ると2千円以上もする。これは掘り出し物である。

 読んでみてビックリ、これまで読んだ本の中では最深の論が展開されているではないか。つまり、目標を立てるには自分の価値観に沿っていなければうまくいかない。また、目標は「心と体と思考」が一致していなければ到達できないという鶴田豊和の論は読んでいたが、ブランデンによると、そのまた基礎となるのが自尊心だと言うのだ。大いに腑に落ちる論である。
   
 ところで、大学教授になったのだが、両親から「お前はダメだ」と言って育てられていたため、下着泥棒をして首になり、「やっぱり俺はダメな人間だったのだ」と、安心したという実話を、ある大学の経営学の教授から聞いたことがある。自尊心が育っていなかったのである。

 私自身「自尊心」が低く、自尊心テストをしても10数年前は30点満点中8点だった。2年前に22点になり、先日は25点まで上がっていた。自尊心は育つものらしい。

 ブランデンは、「多くの仕事が肉体労働から頭脳労働に置き換わった現在、単に高度な知識やスキルだけではなく、強い独立心や自信、自分を信じること、自らの責任で行動する能力、つまり自負心をもつことが必要である。このような精神を十分に備えた人が、今、企業の創造過程で多数必要とされているのである」と言う。