土木の工程と人材成長

土木建設の工程管理や組織運営、そして人材成長の話題や雑学を紹介します

技術研究発表会を聞く

2020-01-24 15:11:21 | 建設経営
ある団体主催の技術研究発表会に参加してきた。発表内容は先進的なものだったが、発表者を審査する10名ほどの委員の質問を聞いていると、年配が多いせいもあるのだろうが、後ろ向きで過去思考がほとんどであった。つまり、質問内容が形式論であったり、表層的であったり、現象論が主であった。

発表内容が本質論を言っている場合には、発表内容と質問内容の祖語とすれ違いの幅は、幅というよりも断絶と言っていい。

それにしてもスイスでは、建設技能者教育も哲学からはじまって科学など共通教育を踏まえてから専門職能技術教育というステップを踏んでいるという。職位があがるには再教育がなされていると言うから、知識の習得と職位、給与が連動している。

結果、建設生産性は驚くことに日本の3倍だという。審査者が「15分ごとの仕事量の記入では、後で使えないのではないか。生産性が高いのは、スイスは物価が高いからだろう」と発言していたが、発表者は「15分の記入はタブレットで簡単にできるようになっているし、全産業で行っていることだ。確かに物価は日本の倍だ」と答えていた。おおざっぱに言えば、物価の2倍と生産性の3倍には、まだまだ差がある。

評価者のこの発言を聞いて、昔、米国の自動車産業界がトヨタの工場見学に来て、「仕掛品のまったく無い、偽の工場を見せられた」と言ったらしいが、このことを思い起こした。

このように本質を見失うと大変なことが起こってしまう。すでに日本の世界での競争力は、かつて1位だった数十年前とは異なり、今や信じられない思いもするが30位というから、評価者の一人と私も含めての認識レベルでは「むべなるかな」なのである。

免疫力を高めて健康を維持する

2020-01-12 15:28:23 | 人生経営
中国の湖北省武漢市でウイルス性肺炎による患者が発生しているとのニュースが流れている。2020年1月9日、WHO(世界保健機関)は武漢市で発生している肺炎患者の数名から新型コロナウイルスが検出され、肺炎の原因である可能性があるとしている。

さて、免疫力とは、病気や癌にならないように健康でいるために、身体に備わっている、あるいは獲得する働きである。ところが、免疫力は中高年になると低下してくるという。高齢者が肺炎で死亡という記事がでるのも、免疫力が低下して肺炎をおこす病原菌に対抗できなくなってしまうからだろう。また、免疫力をまだ獲得してない病原菌には抵抗するのは難しいようだ。ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」草思社文庫、2012.2.2には、スペイン人が持ち込んだ病原菌で、免疫力を持たなかった新大陸の多くの人々が死亡したことが書かれている。

美と健康の新常識、NHK、2019年12月17日放送では、免疫力を高めるためには、ビタミンB1が不足しないようにすること。B1は豚肉、キノコ類、ナッツ類、うなぎに多く含まれる。運動は1日7千歩。飲みすぎ食べ過ぎはよくない。リラックスして脳の血流をよくする。このためには、マッサージや針、ヨガがよい。ストレスを貯めないためにも、仕事を楽しむこと。ベルガモット(イタリアの柑橘類)のアロマオイルの匂いがリラックス効果がある。オメガ3(えごま油など)と6(サラダ油、コーン油、ごま油)の脂肪酸の両方を取る。ツボやヨガ、油の摂取方法やその量については、番組情報で提供されている。

ところで、ノーベル賞生物学者・ブラックバーン博士らによる染色体の端にある「テロメア」研究がある。このテロメアは、細胞分裂のたびに短くなるため、年とともに縮む。しかし、テロメアを伸ばして細胞から若返る方法があり、がんを防げる可能性もあるという。それは日常で実践できる生活習慣。最新の研究から健康寿命を延ばす秘策は、野菜と魚中心の食事と運動、そして人間関係を良好に保ち、瞑想をすることだと言う。

テロメアをできるだけ短くしないように、また免疫力の低下をできるだけ防ぐような生活習慣を獲得し、元気で長生きピンコロリといきたいものだ。

テクノロジーと人間ー電子機器と原子力の利活用ー

2020-01-11 16:22:02 | 人生経営
高知県eスポーツ協会の会長は、「eスポーツ人口は確実に増えている。だが、PTAの父兄からは、『PTAの会長をしていながら、スマホの使用などを子供に勧めるような発言や活動をしているのはいかがなものか』との批判がある。しかしながら、私は子供のころから電子機器に慣れさせた方がいいと考えている」と言う。2019年4月3日、eスポーツ普及に向け県協会を法人化し組織強化した会長は、記者会見で「eスポーツは年代や男女の差がなく同じステージで戦え、都会と地方の格差もない。高知から活躍する選手が生まれ、地域の活性化にもつながれば」と、語っている。

ところで、「米国では子供の外遊びが4~7分で、ディスプレィで遊ぶ時間が7時間半だという。そんな中、人格形成における子供時代の外遊びの重要性が指摘されている(BS1、「遊びの科学」2019.12.9,23:00からの放送で)。

また、日経2020.1.7、6面「テック悲観論、革新への通過点」では、「親はスマートフォンのせいで、子供が画面を眺めてばかりいるゾンビになってしまったと心配する」を紹介している。

一方、同「日経」記事では、「どんな強力なテクノロジーも使い方によっては善にも悪にもなる。・・・テクノロジーに関する問題はテクノロジーをもっと使うことで解決できる場合が多い。・・・おそらく懸念の根源はテクノロジーそのものではなく、こうした問題を議論し、まともな答えを出す力が社会にあるかという不安の高まりにあるのだろう」としている。

さて話は変わるが、原発問題で吉本隆明は、「勉強して克服したらいい」との立場だった。私も原発は必要ではないかと考えている。それは、現時点では地球の温暖化が問題になっているが、太陽の黒点の推移等について観測・研究している科学者たちの中には、これから地球は寒冷化するのではないかと言うものがいる。温暖化よりも寒冷化の方が人類にとってはより深刻になると言われる。

ならば、温暖化も心配ではあるのだが、それはそれとして、私としては、寒冷化に対応するためには、原発は必要ではないかと思っている。それも、これまでの原発方式を漫然と継続するのではなく、一定の工夫は必要である。現在のように集中させないで、費用はかかったとしても、現実的には困難性が高いものの、もっと小型化し分散させて設置する方法を提案したい。

それは、もしも事故が発生した場合、対応が可能な規模とし、設置個所の地形などを十二分に調査して慎重に選定することはいうまでもない。そして原発は、なによりも地球温暖化への対処法となるのである。だからこそ、安全確保の確立が急務なのだ。単に嫌うだけでなく、人類が狭くなった地球で安全に暮らすための本質思考が求められている。

また、原子力を利用し発展させていけば、隕石が地球に接近したときの撃墜や軌道を逸らせる技術としても使えるだろう。

話は逸れたが、電子機器の子供の使用についても、節度ある使い方をして、慣れる方がいいという考え方を私もしている。将来を考えた場合、電子機器の利活用は避けてとおれないと思うからだ。私たちは「まともな答えを出す力」を、早急に身につけていかなければならない。

プラステックゴミをはじめ、環境に関する選択が迫られているのだから、まったなしなのである。再び言うが、日経2020.1.10,25面の経済教室で、ローラン・ビッグ氏が「高速炉開発 重要性変わらず」に書かれているように、「高速炉の技術はまだ確立しておらず、コンピューター上の研究が不可欠だ」としており尚更と言える。

生育歴と人生 

2020-01-10 09:59:15 | 人生経営
先月中旬にBS1放送の「遊びの科学」の内容紹介で、「子供のころの遊びは、その後の人生にとって大変重要であり、ことに外遊びが大切である」ということを書いた(2019.12.13,16)。

1月1日22時からEテレの100分で名著「ナショナリズム」の中で、富豪であった安田善次郎を刺殺した朝日平吾の話をしていた。刺殺した理由は、「庶民が苦しんでいるのに裏で儲けたから」というもの。朝日平吾は裕福な家庭で育ったのだが、継母との折り合いが悪く、中学生のとき家出をしている。その後の人生でも様々な人たちと衝突ばかりしている。人との衝突を繰り返していたということは、たぶん子供時代に仲間との外遊びをしていないか、していたとしてもうまくできなかったのではないだろうかと推測される。安田は東京市に慈善事業費として300万円を寄附したほか東京帝国大学に講堂建築費として100万円を寄附するなどをしているが、匿名であったため朝日は知るよしもなかった。当時の世間は朝日平吾が安田を刺殺したことを英雄視していたという。無知とは恐ろしい。ハンス・ロスリング他「FACTFULNESS―10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣―」日経BP、2019.1.11のカスタマー・レビューに、「世界を知らないことは時として悪意よりも残酷な事態を招く」という表現の現実化の一例だといえよう。

1月5日7時からBS1で「三島由紀夫×川端康成」を放送していた。三島由紀夫は、ご承知のように45歳のとき割腹自決をしている。「英雄として死ぬ」と言ってたらしい。三島はヒステリックな祖母に過保護に育てられたという。祖母と折り紙やままごとばかりして外遊びをせず、病弱で渾名は「アオジロ」だった。昭和20年徴兵検査で肺浸潤と誤診され、徴兵を免れている。30代から武の道にも入って身体を鍛え、筋肉質な体を獲得し、真冬でも裸で外に座っていたりしたとのこと。師の川端とノーベル文学賞を競い敗れている。盾の会を結成し、隊員4名と共に自衛隊市ケ谷駐屯地(現防衛省)で東部方面総監を監禁。バルコニーでクーデターを促す演説をしたのち、同調されなかったため割腹自決をしている。

朝日平吾や三島由紀夫らのように、家族との折り合いが悪かったり、過保護で育った人が特異なことをするとは限らない。アドラーが言うように本人が選択しているのだが、多くの人たちがしてきた外遊びをしなかった場合には、人生も変わった道を歩む人がいることもわかっている。子供たちには、外遊びができる環境を整えたいものだ。人格は遺伝と環境によって形成されると言われているのだから。

塩野七生の人となりと文章 

2020-01-09 08:32:08 | 人生経営
作家の中で好きなのは、塩野七生と曽野綾子だ。両人は男よりも男らしいというか、力強く明快な文章を書く。

今、塩野の「イタリアからの手紙」新潮社、1972.6.5を、久しぶりに読み返しているのだが、テンポよく、切れ味のよい文章に再び酔いしれている。本のカバーの裏の塩野が30代のころの足首まで届くマントを着た写真にもしびれる。正面ではなく45度右を向き、左足を石の階段の下段にスラリと伸ばした姿は10頭身に見え、塩野の演出なのか写真家の指示なのかはわからないが、とても格好よい。美女とは言えないかも知れないが、気品と人間としてのある種の強さが漂っている。

塩野が十数年前高知にサイン会に来たことがある。私はなんと書いたか忘れてしまったが手紙をお渡しした。封筒に入れず折っただけの裸の紙だったので、その場で読もうと思えばできた。が、塩野は開けないでそっと横に置いた。大切なものというようなしぐさであったので救われた気がした。今年の元日に塩野が出演していた。学習院のある高校生の手紙の返事に書ききれなかったこともあるので、講演ではなく意見交換をするというものだった。塩野は「免疫をつくりなさい。男は女の、女は男の免疫をつけるのですよ。両方の視点を持つこと、二つの視点を持てば、どんな仕事も面白くなる」などと、塩野節を披露していた。

中には、文章と語りが異なる人もいるが、塩野の語りは彼女の書いた文章とまったく違わない。人間としての芯が確立しているからだろう。それこそ数十年前の新聞に塩野が「ベッドを共にするのは頭のいい男がいい」と書いていた。そのとおりだと思う。賢い人とのベッドでは、なすべきことと、結果として得られるレベルが異なると思うからだ。お頭の弱い相手だと、品の悪い単なる生理的な処理のみに終わってしまうのだから、生きている意味も享受も格段に薄くなるというものである。

ところで、ケン・ウィルバーは、本を書く前に、好きな作家の本を何冊も書き写したというのを思いだした。では、遅きに失する感もするが、これから私も塩野の文章を写してみようかなという気になってきている。この文も、塩野の「イタリアからの手紙」の中の幾つかを、筆写してから書いたほうがよかったと思うのだが取り敢えず。